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shooting star
Gentle




ジェシカはラバーの後ろをテクテク歩いた。
かなりドキドキした。

「どうぞ」

玄関のドアを開けて中に招き入れられた。
見覚えのある玄関。ジェシカは前に来たときのことを思い出して、少し嫌な気分になった。

「ジェシカに見せたいものがある」

「?」

そう言って、まっすぐ寝室に歩き、ドアを開けた。
ジェシカがのぞき込む。

「ベット…新しくした」

「!」

「ジェシカ…ごめん」

ラバーはそう言ってリビングに歩く。
ジェシカはラバーについていく。

「少し…飲む?」

「あ、うん…」

ラバーがビールを出したので受け取るジェシカ。
リビングのソファーに座って飲んだ。

「じゃあオレ、シャワー浴びてくる」

「!…は、はい」

ジェシカは少し動揺して声が震えた。
ラバーがクスクス笑ってテレビをつけた。かなりの大型テレビ。

「…なんか見てて」








ラバーと交代でシャワーを浴びるジェシカ。
少し体が震えた。
本当は怖いし、逃げ出したい。
それでも、自分をすごく好きでいてくれる人の気持ちには応えたい。

「…大丈夫かな…私で…」

でも、不安でたまらなかった。




「シド…?」

借りたバスローブを着てリビングに行ったが、誰もいなかった。

「?」

すると、寝室のドアが少し開いていて、光がもれていた。

「…シド?」

「ジェシカ!ちょうどよかった…」

シドが何かを手渡してきた。

「何?」

受け取ったジェシカが手のひらより小さい黒いものをながめる。
四角く、ボタンがある。

「門のキーだよ。それとこれは家の合鍵。探してたんだ」

キーを2つ受け取るジェシカ。

「…いいの?」

「もちろん。シーズン始まればいないこともあるけど…ジェシカは出入り自由」

「!」

「なにかあったら…逃げ込めばいい。セキュリティは万全。なにかあったらすぐ警備が来る」

「でも…」

返そうとするジェシカだったが、ラバーがキーを握らせた。

「ジェシカは彼女になってくれるんじゃないの?」

「!」

ラバーに真顔でのぞき込まれるように聞かれて、ジェシカはテレた。

「そういうこと…真顔で言わないで」

「…ジェシカはかわいいなぁ」

「…ゃ!?」

ラバーはクスクス笑ってジェシカを抱き上げた。
ベットに優しく降ろして、ジェシカキスをしようとした。

「!」

ジェシカがギュッと目をつぶると、

「………。」

ラバーはおでこにキスした。

「!」

ジェシカが目を開けると、目の前でラバーが笑った。

「今日はここまで」

「え…?」

ラバーは震えるジェシカを抱きしめた。

「ジェシカが歩みよろうとしてくれて嬉しかった。それだけで今日は満足」

「で…でも…」

「ゆっくり進めていこう」

腕枕されて、寄り添うようにジェシカはラバーの隣に寝た。
間近でするラバーの匂いにジェシカは安心した。

「…ごめんなさい」

「謝る必要ないって。すぐにジェシカを夢中にさせてみせるよ」

「!」

ジェシカが少しうつむきながら言った。

「あなたが言うと冗談に聞こえないわ」

「本気だから当然だって」

ジェシカはラバーと見つめ合って、クスクス笑いながら夜更けまで話し合った。









「……!」

朝、目が覚めるとジェシカは自分の状況を一瞬忘れていて驚いた。
勢いよく起き上がったので、ラバーが起きた。

「あ…おはよう」

「ん…?何時?」

「えっと…」

キョロキョロと時計を探していると、ラバーが起き上がり、ジェシカを後ろから抱きしめた。

「…何?」

「ジェシカの匂いがする」

「…しないよ。私、香水とかつけないし」

「するよ…」

首筋の匂いを嗅がれて、ジェシカはゾクッとした。でも、嫌じゃない。

「ジェシカのフェロモンかな?オレ、やみつきになりそう…」

「…なってくれたら…嬉しい…」

そう言って、テレたジェシカをラバーは優しく抱きしめた。










「クルーザーのレンタル担当は?」

ラバーはジェシカを家に送り、そのままルーナに聞いたハーバーへ向かった。
一番近くにいた男に聞くと、

「まだ時間外だが…あ、あそこだ」

ハーバーの先端に停まる船からハーフパンツの水着にパーカーを着た男が歩いてきた。




「…ウィル」

「!」

帽子を深くかぶったラバーがウィルの名前を呼ぶと、タバコを吸いながら作業をしていたウィルが手を止めた。

「…誰だ?」

「………。」

ラバーが黙って帽子を取った。

「!」

ウィルは驚いたが、ラバーに気づくとニヤッと不気味に笑った。

「いらっしゃい…」









「ジェシカ…昨日楽しかった?」

「!」

今日は日曜日。お昼、ライルを迎えに行くと帰りの車の中でライルが言った。

「シドがね、ジェシカをデートに誘いたいって言ってたから。ねぇ、楽しかった?」

「………。」

楽しそうに聞くライルに、ジェシカは少し赤くなりながら答えた。

「うん…楽しかった」

「そっか!よかった…」




マンションまで戻ると、ジェシカの携帯が鳴った。

「はい」

電話は母親からだった。

「ジェシカ…?」

泣いている母親。いつものことだ。

「あの男…ヒドいのよ。飽きたって言って出ていって…」

「………。」

「寂しいわ…ねぇ、お願い。帰ってきて…」

ジェシカは黙って話を聞いていた。

「お願いよ…ジェシカ…ライルにも会いたいわ」

ジェシカは返事を迷ったが、泣きすがる母親を無視したりはできなかった。

「…わかったわ。帰れたら今日中に帰る」

「本当!?ありがとう…ジェシカ。おいしいご飯用意するから」

「…次はないからね」

「!」

「今度追い出したら…戻らない」

「わかった…約束するわ。だから帰ってきて」







ジェシカは帰る用意をして、ラバーに連絡した。

「…?」

携帯は鳴るが出ない。
ジェシカは、とりあえずラバーに借りていたマンションをきれいにして、家に戻った。







「これ、ママが作ったの?」

ライルが嬉しそうに笑った。3人での久しぶりの食卓。
ライルの好きなハンバーグ。

「そうよ。頑張ったの」

「おいしいよ。ねぇ、ジェシカ?」

「そうね」

嬉しそうに笑うライル。
ジェシカは、ライルが笑うので笑った。

「………。」

しかし、ラバーに何回か電話したが折り返しの電話もなく、ジェシカはなんだか不安だった。


「バイトに行ってくる」

ライルが寝た後に、ジェシカが母親に言った。

「いってらっしゃい…」

「………。」

「ジェシカ、ありがとう」

「!」

家を出ようとしたジェシカに母親が言った。

「帰ってきてくれて嬉しかったわ」

「………。」

どうせ男ができたらまた同じように、平気で追い出すとわかっていても、ジェシカは母親を完全に嫌いになれなかった。









「ジェシカ…?」

「!」

バイト先に飲みに来たお客さんの相手をしていたジェシカ。一瞬、ボーッとしてしまった。

「ごめんなさい。何の話だった?」

「もうすぐNBA開幕だね…って」

「あぁ…そうね。あなたもブースターファンなの?」

「もちろんさ。地元だしね」

「そう…」

またラバーのコトを思い出した。






「お疲れ、ジェシカ」

帰りぎわに店長がポンッと肩をたたく。

「お疲れさまです」

ジェシカは笑顔で言い、車へ。



携帯を見たが、ラバーからの返信はない。メールもない。

「………。」

夜中の2時。
昨日の今日で行くのを少しためらうジェシカ。









しかし、車を走らせたのはラバーの家。

「えーっと…」

ジェシカはもらったキーで門を開けた。
中に入ると、車庫に車はあるようだ。

「いるのかな…?」

ジェシカが車を停めて、家の中へ。カギは開いていた。

「…シド?」

玄関のドアを開けると、少しだけ音がした。
暗いのにテレビがついているような光。

「?」

何かを見ているようだ。
しかし、中にいるのがラバーかわからないジェシカは恐る恐る中へ。

「!」

すると、リビングのソファーでくつろぐラバーが見えた。

「いたんだ…」

「ジェシカ!?」

「連絡とれないから…」

ホッとして近づこうとしたジェシカだったが、テレビの映像を見て固まる。
そこから一歩も動かない足。

『いゃあっ、やめて!ウィル!お願…っ嫌!』

…それは3年前にジェシカがウィルに強姦されたときのものだった。

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あきゅろす。
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