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宵闇






「…うまい!K、最近外食が減った理由はこれですか!」

ジェイとメイとKは円卓を囲みながらの食事。
夕飯はもちろんメイの手作り。今日は四川風の炒めものがメイン。

「シ…Kさんは外食が多かったの?」

「Kは基本、女の作ったものは食べない」

「!」

「嫉妬した女は何を入れてるかわからないからな…」

「ジェイ!」

メイはKの叫び声にちょっと驚いた。

「あ…失礼しました」

Kはムッとしていたが、メイは自分の料理を食べてくれているのが、すごく特別なことに感じて嬉しかった。

「…Kさん。おいしい?」

「…あぁ」

「よかった」

メイはニッコリ笑ってご飯を食べた。
そんな2人を見たジェイも静かにほほ笑む。






「Kは、あなたといると別人のようだ」

Kがお風呂に入っている間、ジェイが食器を洗ってくれたので、メイは片付けた。

「仕事は…淡々とこなしていて…笑顔なんて見たことなかった」

「そう…なんですか?」

「Kも…決められた人生でなければ、きっとあなたといる時のように…毎日穏やかに過ごせたはずなのに」

「…Kさんは…望まない人生を…生きているの?」

メイが不安そうな顔をして聞いた。

「そうです。あの人がKになると決まった日から、そのレールの上を歩いた。自分の名前も…なにもかもを捨てて」

「………。」

「でも…」

ジェイの口調が優しくなる。

「あなたはKをシンと呼んでいた。2人のとき、本当にKはただの青年だ」

皿を洗い終わったジェイは、メイを見つめた。

「だから、どうかKが普通の人間でいられる時間をなくさないよう…そばにいてあげてください。その時間を奪わないでください」

「………。」

メイも皿を片付けてから、ジェイに笑顔を向けた。

「ジェイさんは…Kさんが本当に大切なんですね」

「!…はい。もちろん」

ジェイは驚いたが即答。

「10代の頃、窃盗で何度も捕まっていた…あの生活から抜け出させてくれたのはKですから」

メイはジェイの視線を感じると、ニッコリ笑った。

「…私もです」

「え…?」

「Kさんが…ここに居場所をくれなかったら…今ごろどうなっていたか」

メイはジェイの手をギュッと握った。

「私はKさんを支えていきたい…苦しくても…」

「!」

ジェイはメイを見て、優しい気持ちになった。
Kがメイを自宅に置く気持ちがわかった気がした。

「Jの称号に…命に懸けて、約束します。Kを誰よりも支えると…」

ジェイはこの時、K…そしてKの大事なメイを守ると決めた。





「メイ、包帯を替えてくれないか?」

お風呂からKがあがってきた。

「あ、はい」

パタパタと包帯を取りに走る。
その間にジェイはKに話をした。

「リックの遺体は何とか回収して、先日…家族の元へ」

「そうか…ご苦労」

「それと…グィンを護衛として隣の部屋に配置しました」

「グィン!?」

Kの顔がゆがむ。メイと朝まで飲んでた日から顔を合わせていない。

「どうかご辛抱を。グィンほどの腕と経験を持つ男はなかなかいません」

ジェイはなんとなく事情を知っていたが、安全のためにも引かない。

「…わかった」

「…グィンに引き継ぎをして帰る。K、安全のためです」

メイが包帯を持って2人の元へ。

「…包帯、持ってきました」

すると、Kがソファーに座る。
ジェイは会釈して帰る。






「…まだ…痛いんですか?」

メイは包帯をゆっくり巻きながら聞いた。

「急に動かさなければ問題ない」

「よかった…」

メイが安心して笑うと、急なKのキス。

「……っ…シ…ン」

唇を離したKは、ささやくように言った。

「…もう少しだ」

「?」

「傷が治って、すべてに…カタをつけたら…お前を俺のものにする」

Kの力強い言葉に、メイは少しテレた。
しかし、Kの口調が変わる。自信がないような言い方になる。

「逃げるなら…今のうちだぞ。人殺しの女になんて…なるもんじゃない」

うつむくKのほほに、メイは優しいキスをする。

「私は…あなたの罪も悲しみも…半分でいいから背負いたい」

「しかし…」

「シンと同じ時を生きたい」

「メイ…」

Kが片腕で抱きしめてくれた。
メイは両腕で抱きしめた。








『…メイ、帰って来ない?』

電話で麗蘭と話をしているメイ。
麗蘭が心配そうに言った。

『今ならあたしの家に来ればいいよ』

「え…?」

『護衛の男…送るとき、あの龍成会のバッチをつけてた』

「………。」

『マフィアだよ?メイが心配』

夕方なので、メイはカーテンを閉めながら話す。

「ありがとう、麗蘭。でも私は帰れない…マフィアなのも…知ってる」

売られた身である以上、メイにとって、帰る…が意味するのはファイの元だ。

「…何を失ってもKさんだけは失いたくない。こんな気持ち…初めてなの」

『メイ…』

麗蘭は…大きくため息をついた。

『…なんで初恋が…』

マフィアなの…と言いたかった麗蘭だが、途中でやめた。

『…メイ』

「何?」

『あたしね、就職先…そっちなんだ』

「本当!?」

『本当。だから…メイは独りじゃないからね』

「!」

麗蘭は…なんでこんなに優しいんだろう。

「麗蘭…そんなに優しいのに、なんで彼氏いないの?」

『!』

麗蘭は聞かれたくないことを聞かれ、ムッとしていた。

『うるさい!メイ!自分が幸せだからって…』

「ごめん」

クスクス笑うと、麗蘭は興味津々で聞いてきた。

『…で?Kって男とはどこまで?』

「!」

メイはこんな話を誰かとしたことがなくて、顔が真っ赤になった。

「…し…知らない」

『え〜?キスは?』

「…そ…だから知らないよ」

メイが動揺すると、麗蘭はクスクス笑った。

『したんだ〜』

「!」






「…電話、楽しそうだな」

「!」

さっきまでベットで横になっていたKが起きた。

「友達か…」

「はい…」

「…ゆっくり話せ。俺はもう一眠りする」

Kが短いキスをする。

「…はい。起きるころに夕飯作ります」

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