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宵闇





「…どうすれば治りますか?」

メイが聞くと、Kはメイの持っていた枕をよけながら言った。

「さぁ…治らないかもな」

「そんな…困ります。苦しくてつらいのヤダ…」

Kはクスクス笑いながら、メイの耳元でささやこうとして、甘噛みした。

「!」

「メイは俺に恋の病」

「こ…い?」

メイが聞き返すと、Kはメイの髪の匂いをかいだ。
メイもこんなに近くにあるKの体にドキドキした。

「そう、恋。悪いけど、俺がそばにいないと治らないな」

「!」

「今、苦しい?」

メイが首を横に振る。

「だからメイは俺のそばにずっといなきゃない」

「………。」

メイが黙り込むと、Kが上からメイを見下ろした。視線を感じたメイは、顔が赤くなる。

「でも…」

「だから、出ていくなんて許さない」

Kがキッパリ言うと、メイは余計に顔が赤くなった。

「でもシンといるとここが…」

「?」

メイが自分の心臓を押さえた。

「飛び出してきそうなくらい…全身でわかるくらいドクンってする」

「メイ…」

Kがメイの手をつかみ、自分の心臓の音が伝わるように胸に手をあてた。

「…わかる?」

「私と…同じくらい?」

Kの鼓動は少し早い。Kが少し笑った。

「俺が自分でそばにいたいと思うのはメイだけだ」

「!」

「それだけは本当だ。忘れるな…」



すると、Kはそのままベットに寝た。

「メイ…膝枕して」

「え…」

テレたがメイは思い切って正座した。

「どうぞ…」

Kが静かに頭を乗せた。
膝に乗っている髪がくすぐったい。

Kが黙ったままなので寝たのかと思い、髪を撫でるメイ。

「…こういうのが…幸せって言うのか…?」

「!」

起きていたことにビックリして手を離した。

「起きてたんですか…?ごめんなさい…」

「いや…そのまま続けて。心地いい…」

目をつぶるK。無防備なまま寝そうだった。
メイはゆっくり髪を撫でた。

「メイ…今度の休みは…どこか……」

「?」

Kがしゃべらなくなる。静かな寝息が聞こえた。

「シン…?」

「………。」

Kは本当に寝たようだ。メイはクスッと笑ってまた髪を撫でた。








「!」

ハッとして起きたK。何をしていたか…わからないほどぐっすり寝ていた。
こんなの初めてで焦った。
すぐに、銃をホルダーにしまう。

「…メイ!?」

膝枕をしていたはずのメイがいない。
そんなことに気づかないほどぐっすり寝ていた。


慌てて部屋を出ると、キッチンにメイがいた。

「あ…起きました?よく寝てたから先にご飯を作って…」

Kの足音を聞いたメイは足音の方に笑った。

「メイ…」

Kが近づいてきて…そのまま抱きしめられた。

「…シ…シン?」

Kが耳元でホッとした声で言った。

「よかった…全部夢だと思った…」

「シン…」

メイは少し背伸びをして、Kの肩に頭を乗せて、耳元でささやいた。

「私は…ちゃんとここにいます」

メイも感じた…幸せって…こんな感じなのかも知れない。
何より…他人にこんなに必要としてもらえて嬉しかった。







「作ったのか?」

メイがテラスに料理を運ぶ。Kも手伝う。

「はい、材料は昨日買って…麗蘭のおかげで色々配置覚えたし」

麻婆茄子に卵スープなど。どれもおいしそうだ。

「友達…また呼ぶといい。連絡先は聞いておいた。携帯を出すんだ」

「!」

メイが携帯を渡すと、麗蘭の番号を登録してくれた。

「これで…つながる。わかったか?」

「はい。ありがとうございます」

操作を教えたK。メイは嬉しくて笑った。

「来てくれそうな時は俺に言え。迎えをやる」

「でも…そこまで…」

料理を運んだメイが座ろうとすると、その前にKがメイのほほを撫でた。

「メイが帰らずにいてくれるなら…それくらい…」

「…シン…」

メイがKの手を握ると、Kはキスをした。
短めのキス。

「…食べよう」

「はい…」

真っ赤な顔のままメイはうなずいた。
Kと…シンと触れ合えるたびに、メイは喜びを感じた。



穏やかな時間が続いた。





「シン!モコモコしてすごくかわいい」

メイとKは買い物に来ていた。
ふと立ち寄った店の隣にペットショップがあって、メイは子犬とじゃれていた。トイプードルだ。

「…欲しいか?」

店員が、Kの姿を見つけるとメイなど眼中にないようでひそひそ話をしながら見とれていた。
Kはそれはどにかっこいい。

「でも…きちんとお世話できないかも…そしたらかわいそうだし…」

メイが沈むと、Kは優しく言った。

「2人ならできるだろう…」

「!」

メイは嬉しくて思わず笑顔になった。

「いいの?」

「メイがあの家にいなきゃない理由が増えるなら…全然かまわないさ」

「………。」

メイを失いたくないKは、留まる理由を1つでも多くしておきたかった。

「シン…」

「何だ?」

メイはKの腕のすそをつかんだ。

「シンがあそこに帰ってくる限り、私はあの家で待ってます」

「!」

「神に…誓います」

「メイ…」

Kはメイを抱きしめた。
そのまま、犬を飼うことにした。





「名前…決めないとな」

メイとじゃれる子犬を撫でながらKが言った。

「名前…」

「メイが決めていい」

「私が!?シンが決めて。考えられない」

メイが戸惑っていると、Kはメイの頭を撫でる。

「メイの方がいい名前を思いつくさ」

「………。」

メイは少しテレながらもうなずいた。




「…何だ?」

ソファーに座るKの足元に擦り寄る子犬。
抱き上げてじゃれて遊ぶ。

「かわいい顔してるな…お前」

「キャン!」

メイはKと子犬が楽しそうで嫉妬した。

「…ここにはもう一匹犬がいたな」

Kはクスクス笑った。

「おいで…メイ」

「!」

メイはKの隣に座って嬉しそうに少しKの肩に寄りかかる。
Kは優しく頭を撫でてキスをした。




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あきゅろす。
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