High&Low
その後・23歳@
『ん…お疲れさま…』
リビングで眠っていた私は目をこすりながら起きた。
「…待ってなくていいっていつも言ってるだろ?」
『…寝ようと思ってテレビ見てたらそのまま寝ちゃっただけだよ』
帰ってきて上着を脱ぐ光くん。
「…ったく、カゼひくぞ?」
『平気だよ。そんなにヤワじゃありません』
光くんがあきれ顔でタメ息。
『あ、ご飯は?』
「食べてきた。風呂は?」
『わいてるよ』
「…明日早いんだろ?先に寝てろ」
そう言って光くんはお風呂へ。
光くんと同棲してもう2年になる。
最初の半同棲の期間も入れたら3年近い。
2人とも23歳になった。
両親は反対してブツブツ言っていたが、光くんが何度も説得してくれて、渋々了承してくれた。
光くんの両親は、前に一度会っていたので、自己責任でやれるのなら構わない…とすんなり了承。
「………。」
お風呂を上がった光くんがベットに潜る。一緒のベットで寝ている。
『………。』
私は湯冷めしていたので、光くんの体がぽかぽかで少しだけくっつく。
「おま…冷たっ」
足がからむと、光くんが言った。
すると、光くんが包み込むように抱きしめてくれた。
『い…いいよ』
少しテレて押し退けようとすると、光くんはクスクス笑った。
「今さらテレんなよ」
『だ…だって…』
「いつまでたっても慣れないな…よりは」
『………。』
真っ暗な中でも、目の前の光くんの顔をまともに見れなくてうつむく。
でも、光くんの身体はぽかぽかで…
『あったかい…』
「!」
思わずすりよる。すると、光くんがタメ息。
「あーぁ…」
『?』
「俺も明日朝早いのに…ヤリたくなっちゃったじゃん」
『!』
「よりが挑発するからだからな」
そう言って光くんが覆いかぶさる。
『えぇ…!?ちょっ…ダメ。もう寝ないと…』
「…ムリ」
光くんは笑ってからキスをしてきた。
『…ん…っ…ダ…メェ…っ』
言葉は拒否していたが、キスには応えていた。
「…言ってることと、してることが逆だけど?」
唇が離れると、光くんにクスクス笑われた。顔が赤くなる。
『もう怒った。絶対ダメ!しないから』
そう言ってうつぶせになると、光くんはうなじにキスをする。
『…あ…っ』
ぴくっと反応してしまう。すると、首筋とパジャマのエリをずらして肩に何度もキスをする光くん。
「ごめん、より…」
『…っ…あん…っ!』
耳元でささやかれてくすぐったいのに、舐められるとゾクゾクした。
「怒らないで…」
『あ…ぁっ…』
感じてきているのがわかると、少し強引に攻めてくる。
『…あっ、ダメだって…ばっ…』
パジャマをまくって、背中に舌をはわせる光くん。
『今からして…またお風呂に入ったら…寝不足になっちゃう…』
ぴくぴく反応すると、だんだん身体が熱くなる。
「…じゃあ、時間をかけるのは今度」
『…え?あ…っ』
そう言うと、光くんは私のパジャマの下をパンツと一緒にヒザまで脱がせた。
「より…脱いで…」
『嫌…』
首を横に振ると、光くんの声のトーンが下がる。
「いいから脱げ」
『!』
光くんも入れる準備をしていた。
私は少し恥ずかしがりながらふとんの中で全部脱いだ。
「…入れるよ」
そう言って光くんは私を横向きにして、片足をつかんで…無防備になったところに突っ込んできた。
『あぁっ…』
枕をつかんで必死に快感に耐えた。
光くんが突くリズムは、私に気絶しそうなほどの快楽をもたらす。
『…あ…あっ、あっ…』
「急いだわりに濡れてる」
『…っあ、そんなことな…っあんっ…!』
急に奥に勢いよく入ってきて、思わず声が大きくなってしまった。
「熱いし…。欲求不満だった?」
『…っあっ、あっ…』
首を横に振るが、もうまともにはしゃべれない。
奥までズンッと突き上げられると、身体が反るほど頭がシビれた。
「ウソつき…」
そう言って、突き上げながら胸を揉まれて、乳首を優しく転がされると…
『あぁぁっ…』
すぐにイッて、光くんのモノをキュンキュンと締め付けた。
「…っ…あ」
光くんもイッたようだ。
イク瞬間の、少しだけもれる光くんの声がたまらなく好きな私は、まだキュンキュンしていた。
「…足りない?」
『!』
結局、その後は後ろから突かれたり、光くんの上に乗ったりして3回以上イカされた。
「…ん…はよ…」
光くんが眠そうにあくびをしながら起きてきた。
『………。』
私は口をきかないで朝ごはんの準備。
「…何怒ってんの?」
ムッとしたままでいると、光くんが聞いてきた。
『別に…』
「怒ってんじゃん。何?昨日のじゃ足りなかった?」
『!』
私はカッとなって、よそったご飯を光くんの前にわざと音をたてて置いた。
『よりは…っ』
「何?」
私が言いたいことを言おうとすると、私の態度に光くんがムッとしてきていた。
『…なんでもない…いい』
「何それ?言いたいことあるならちゃんと言えって」
『いい…仕事行くから。茶碗、さげといてね』
そう言って、私はマンションを飛び出した。
飛び出して後悔した。ケンカみたいになってしまった。
また…ちゃんと言えなかった。
最近、光くんとのエッチが形式的なモノになってきて嫌だと言うこと。
光くんは欲求解消のためにしているだけに思える。
前のように愛情を感じなくなっていた。
「好き」も「愛してる」も何年も聞いてない。
「見て見て〜。光の映画の予告だ」
駅の近くの交差点で女子高生がはしゃいで、大型ビジョンを指差す。
私もつられて見てしまう。
「かっこい〜」
…本当にそう思う。
光くんは最近、知名度がかなり上がった。
不安はいつまでたっても消えない。
もう…愛情なんてないんじゃないかと思ってしまう。
一度光くんに愛される喜びを知ってしまった私は、いつも寂しかった。
でも、言えなかった。
言ったら…めんどくさがられそうで恐かった。
『おはようございます』
私は勤めている介護施設、ひまわりに出勤。
「やったー…やっと交代」
夜勤をしていた先輩の舞(まい)さんは、勤務日誌の上に寝そべる。
舞さんは新米の頃からずっと教えてくれている先輩。
『お疲れさまでした。何かありました?』
「んー…?まぁね。でも、香代(かよ)さんが夜中に突然お湯わかして、ボヤ起こしかけたくらいかな」
『…お疲れさまでした』
私が言うと、舞さんは眠そうに立ち上がり、日誌を渡す。
「来週は新しい人も来るから、夜勤大変だからね〜」
『…覚悟しときます』
「よし。いい返事。じゃ、お疲れさまでした〜」
みんなにあいさつをして帰る舞さん。
私は朝のことは忘れて、気合いを入れて仕事に取り組む。
「お疲れ」
みんなが歌の発表会をしている間、書類の整理をしていると所長の息子=剛(つよし)さんが話しかけてきた。
『お疲れさまです』
剛さんも同じ介護士。28歳。
所長が経営するこのひまわりの後継者だ。
「今日の日勤メンバーで飲み会するんだけど…美依ちゃん来ない?」
『今日…ですか…』
今日は光くんと険悪ムードになっちゃったから、帰るの気まずいけど、このままズルズル険悪でいたくない。
…色々考えていると、
「予定ある?」
剛さんが聞いてきて、私は正直に答えてしまった。
『いえ…』
「じゃ、決まり!7時からね」
『え?』
すごいスピードで話が進んでしまった。
「会費4000円ね〜」
『あ…ちょ…っ!』
剛さんは私の予定が決まると、次々とみんなを誘う。
剛さんは明るいキャラでみんなの調整役をうまくこなしている。
私は、とりあえずお昼休みに光くんにメールをした。
《今日の夜は職場の人と飲むことになったので遅くなります。それと…朝は不機嫌で嫌な気分にさせてごめんね》
「カンパーイ!」
剛さんのかけ声でみんなで乾杯。
女3人、男2人の5人。
女は同期の友里(ゆり)と、勤務歴20年のお局先輩の美智子(みちこ)さん。
女は剛さんの他、1つ先輩の博之(ひろゆき)さん。
「美智子さん、お疲れさまです」
剛さんが真っ先にお酌をすると、嬉しそうな美智子さん。
「あら〜剛くんみたいな若いコにお酌されるなんて気分いいわ」
みんなでわいわいと飲み会が始まる。
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