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High&Low
彼氏と彼女




『…ん…ひかっ…っ』

1分くらいしてやっと唇が離れた。

『長いよ…』

「………。」

ボソッと言うと、光くんがそのまま抱きしめる。

『どうしたの…?』

同じように光くんを抱きしめる。

「退院後…3週間は…自宅療養なんだ」

『そうなんだ…』

「だから…いつでも連絡して」

『!』

「合宿も終わったら…何日かは一緒にいれる。帰ってきたらすぐ来て。待ってる」

光くんが抱きしめる手を緩める。
目と目が合う。

「リハビリ…付き合って」

『!』

光くんが意地悪く笑うと、顔が真っ赤になってしまう。

『い…行かない』

「…よりは絶対来るよ」

『!』

「俺が…恋しくなる」

光くんが短いキスをした。

『…すっごい自信…』

「そう…仕込んだから…」

クスクス笑う光くん。

『嘘!?そんな気はしたけど…いつの間に!?』

真顔で答えると、光くんは大爆笑。

「ぶははっ…嘘だよ」

『!』

「正直者…」










「…よかったね」

帰りの車の中で真人さんが言った。

『はい…ありがとうございました』

「いえいえ、これでやっとスッキリ」

『う…ごめんなさい』

真人さんがクスクス笑う。

「俺も彼女探そうかな〜」

『…真人さん…どうして彼女いないんですか?』

何気ない一言だが、真人さんはグサッときたようだ。

「お…俺は、いないんじゃなくて…つ…作んなかったんだって」

真人さんの動揺っぷりがおもしろかった。








「あ〜、デートからお帰りだ」

合宿所に戻ると、さっそくまりかに冷やかされる。

『違うって…』

「じゃ…俺、コーチに挨拶してくる」

『あ…私も…』

まりかを無視して、真人さんに付いていこうとすると、真人さんが頭を撫でる。

「美依ちゃんは明日でいいから。疲れたでしょ?」

『でも…』

「今日はゆっくり休んだ方がいい」

真人さんはそのまま手を振ってコーチの部屋へ。
絶対真人さんの方が疲れている。

「うわ〜、超イイ男」

『うん…』

うわの空で言っていると、まりかがツッ込む。

「…素でホメたね?」

『え…?』


「お?大堂お帰り〜。じぃちゃん大丈夫?」

成島くんが通りかかる。
コーチ等には、おじいさんが入院したと言っていた。

『…ありがとう。大丈夫』

「そっか…すげぇ動揺してたから…じぃちゃん大好きなんだなーって思ったけど」

『!』

ちょっとだけ顔が赤くなる。

『うん…』





部屋に着いてお風呂に入る前に…みんながお風呂に入っているスキに光くんにメールした。

《無事に着きました。今日は光くんもゆっくり休んで。また明日》


「美依〜、お風呂みんなあがったよ」

まりかを始め、マネージャー達がぞろぞろ戻ってくる。

『うん…』

「みんなと入ればい〜のに」

まりかが残念そうに言うと、あや先輩がまりかの頭を軽くたたく。

「人と入りたくない人だっているの」

「え〜?」

『すみません…』


あや先輩にお辞儀をして、お風呂に。



一応、温泉らしい。温泉の湯をわかしていた。

『ふぅー…1ヶ月近く温泉なんて幸せ』

肌がツルツルになるような湯に顔がゆるむ。

『…薄くなればいいな…』

腕の傷跡をながめて言った。





「お?風呂上がり?」

パジャマ代わりのスウェットを着ていると、ちょうど同じくらいに男湯から出てきた成島くんと会った。

『うん』

「…そのスウェット、大堂にはデカすぎない?」

『そ…そうかな』

ちょっと動揺した。
スウェットは光くんに昔もらったもの。

「似合ってるけどな」

『…バカにしてる?』

成島くんが笑顔でホメた。
スウェットが似合っても別に嬉しくない。

「してないと…思う」

『何それ…』

2人で笑っていると、トイレに向かうまりかが来た。

「あ!イチャつき発け〜ん!新谷先輩に言っちゃうよ?」

『だから…真人さんとは、そんなんじゃないってば』

「え?嘘!?」

成島くんが一番驚く。
そういえば、誤解させたままだ。
そのままでもよかったが、真人さんに悪いのでちゃんと言った。

『…付き合うとか、そんなんじゃないよ。真人さん優しいから色々心配してくれて…』

「え〜?そうなの?」

『うん』

「じゃあ、マジで彼氏いんの?」

成島くんが、聞いた瞬間、コーチが後ろから成島くんの頭を殴った。

「コラ!合宿に色恋禁止だ」

「…って!コーチ、何でグーなんすか…」

殴られた部分を撫でながら成島くんが言う。
まりかと2人でクスクス少し笑ってから、私はコーチのそばに。

『山瀬コーチ』

「おぅ、もう一発か?」

普段は鬼コーチだが、マネージャーには優しいコーチ。

『いえ、外出させて頂いて…ありがとうございました』

頭を下げると、コーチは優しく笑った。

「…よし!じゃあ、部屋来るか!?」

『!』

「…エロオヤジ」

女の子に甘いコーチに成島くんがボソッと言い、

「成島ぁー!!!」

追いかけ回されるハメに。
また、まりかと2人で笑った。

楽しいことが楽しいと笑えるのが、久しぶりだった。










「…はい」

『…っあ…あの!より…です…』

合宿も明日で終わり。
夜にロビーで光くんに電話をした。

「…なんで緊張すんだよ」

『だ…だって…まだ慣れなくて…』

「何?俺が彼氏ってこと?」

『!』

一瞬で顔が真っ赤になる。
光くんがクスクス笑っているのが聞こえた。

『もー…意地悪』

「ごめんごめん…」

『…足は?ちゃんと動くようになった?』

「うん。平気」

『そっか…よかった』

「だから…病院での約束果たさないとな」

光くんがクスクス笑った。

『約束?』

「忘れた?よりが言ったくせに」

『?』

「激しく抱いて…って」

『!』

電話を落としそうなくらい動揺した。

『は…激しくなんて言ってない!』

「言ったよ…俺に目で訴えてた。じゃあ、どんなのがいい?」

『!』

「よりは…言葉攻めが好きだからな…意地悪いっぱい言おうかなー…」

私がテレて困っているのなんて光くんはきっとお見通し。

『……しく……て』

「何?」

恥ずかしいけど、思い切って言った。

『優しくして!』

「!」

『…恋人っぽく…過ごしたい…』

「より…」

『また…会えなくなるんでしょ?』

「…うん。休んでた分、働かないと」

『…だから、一緒にいるときは…恋人っぽくしたい』

言ってて恥ずかしくなってきたけど、光くんは真剣に聞いてくれていた。

「…わかった。楽しみにしてて」

『…いいの?』

「いいも何も…恋人だろ?俺たち…」

『!』

「あ!今、顔真っ赤だな」

…自分で言ったものの、光くんに恋人と言われると、ドキドキした。

「…じゃあ、また明日」

『うん…』









「…じゃあ、1ヶ月お疲れ。練習は来週から通常通りやりますが、参加は基本自由です…」

キャプテンの挨拶を聞いて、解散。



「美依ちゃん、マンション行くでしょ?乗ってく?」

『…でも…』

「いいから。通り道〜」

真人さんが光くんのマンションに送ってくれることに。



「新谷先輩〜!」

真人さんの車に向かって歩いていると、後ろから成島くんが追いかけてくる。

「何だよ」

近くまで来ると、成島くんが笑いながら言った。

「俺も送ってください」

『!』

「何でだよ」

ちょっと真人さんが冷たく言うと、成島くんは私の肩をつかむ。

「聞きましたよ〜。先輩の彼女じゃないって」

「!」

真人さんが驚いてこっちを見た。
…申し訳なくて目をそらした。

「…なら、2人きりにはさせません」

「あのな…美依ちゃんは…」

『ま…真人さん!』

真人さんが光くんのことを言おうとしたので止めた。

『…真人さんさえ、迷惑じゃなかったら…成島くんも…』

真人さんは、反論しようとしたが、ため息をついてから言った。

「…わかった。乗れ」

「うぃ〜っす!」

なぜか助手席に乗る成島くん。
私は後部座席に。






「…お前、家どこだ?」

車を走らせながら真人さんが成島くんに聞く。

「俺?いや、大堂からでしょ」

『え…』

「2人きりにはさせません」

成島くんが言うと、真人さんがちょっとイラッとしていた。

『ま…真人さん。私も…最初に送ってもらっていいですか?』

真人さんと成島くんがケンカしないように言った。

「美依ちゃん…」

『ごめんなさい。でも、早く行きたいし…近くの通りまででいいので』

「…わかった」

少し真人さんの機嫌が落ち着いたようでホッとした。



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