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味方




ハッとして携帯を取ると、ミカからの着信が5件。メールが1件。
メールも私を心配するものだった。
友達にこんなに心配かけて…最低だ。

「携帯番号、教えたのか?」

『!』

これは元々光くんの携帯。使用料すら払ってない。怒られるかもと思いつつ、正直に言った。

『はい。ごめんなさい…勝手に…』

謝ると、光くんが頭を撫で、バスローブを着てベットから出ていく。

「気にするな。友達だろ。電話してやれ」

光くんはそのままお風呂へ。
本当はこの携帯、涼先輩の番号も入っているが、それは…内緒。



『あ…ミカ?』

電話はすぐに出た。

「美依?黒王子は一緒なの?も〜連絡くらいしてよ。ビビってたんだからね」

『…ごめん。もうすぐ帰るから。帰ったらちゃんと全部説明する』

「わかった…とりあえずよかった…じゃあ、気をつけて帰ってきて」

『うん…』








バスローブを着て、光くんと入れ替わりでお風呂へ。
着てきた服を着て光くんの部屋で荷物をまとめる。
特に何もないが。

ベットを見ると、シーツが乱れていた。ちょっと恥ずかしくなる。

だけど、また今日は別の誰かが…。
そう思うと苦しくて足早に部屋を出た。

「どこだ?送ってく」

光くんが玄関で待っていた。

『でも…あんまり人に見られない方が…』

光くんは有名人。
一般人とはいえあまり噂になるよーなことはしない方がいいのでは?と思った。

「気にするな。一般人となんか噂にもなんないし。今までだってそうだろ?」

『そう…ですね』

光くんは気にもしていないようだ。

本命の人が見たら絶対おもしろくないと思うけど。
そもそも光くんに本命がいるか疑問だが。








『小笠…ひ…光くん』

帰りの車の中、隣に座る光くんに話しかけた。
名字を呼びかけて、慌てて名前を呼んだ。

「何だ?」

『光くんは…好きな人とかいないんですか?』

「!」

光くんの顔を見ながら聞いたら、光くんは目をそらした。

「…いる…な」

『!』

胸がズキッと痛む。光くんのちょっとテレた感じが今までにないほど本気に思えた。
聞いたくせに、聞かなきゃよかった。

でも、本命がいるのに他の女を抱ける神経はちょっと理解できない。

「知りたい?」

『私の知ってる人ですか?』

「そうだ。でも誰かは…教えなーい」

からかうように光くんが言った。
身近な人なんだ…なんだか余計つらくなった。
知ってる人と言えば、咲茅か秘書さんか室岡まゆみ…でも、有名人ならテレビを通して知っている。

本命なら…光くんは意地悪っぽくじゃなく、優しく笑ってくれるのかな。
時々見せてくれる笑顔を独占できる人がいるのがうらやましかった。






ミカの待つ別荘に到着。

『ありがとうございます…』

すぐ車を降りようとすると、腕をつかまれて振り返り様にキスをされた。

『!』

いきなりだけど、強引さは感じない。
すぐに唇は離れた。

「また連絡する」

『…はい。待ってます』

車を降りて、見えなくなるまで見送る。
連絡すると言った以上、こっちからはできない。
待つ…だけだ。




『ただいま…』

玄関を開けると、ドタドタ走ってきたミカ。

「おかえり〜」

そのまま飛び付かれた。ビックリした私は、ちょっとよろけた。

「よかった〜」

ミカが嬉しそうに言うと、心配をかけてまで自分は何をしていたんだろう…と涙が溢れた。

『ごめんね』

抑えようとしていた虚しさが込み上げてきた。








ミカと朝ご飯を食べながらすべてを話した。

「そっか。涼先輩、フラれたんだ」

『ごめんね…』

「美依が謝る必要ないよ。美依が好きな人なんだから仕方ない」

『うん』

「でも、それでいいの?幸せそうには見えないけど」

『…両想いじゃないから。でも、こんなに近づけたのに失うよりは…いいから』

「そっか。それなら涼先輩の方がオススメだけどなぁ」

『………。』

しばらく黙々と食べる。
すると、ミカが言った。

「よし!夜は、真人くん達呼ぼ〜!」

『!?』

ミカがニヤニヤ笑う。

「あたし、ちゃっかり番号聞いたし〜。真人くん来れば黒王子も来るかも」

『ミカ…』

「あたしは美依の味方だよ」

『!』

嬉しかった。初めて言われた言葉にテレながら笑った。








「美依、これ何!?」

近くのスーパーで買い物中、ミカが持ってきたのはリボンの形をしたマカロニ。

『マカロニだよ。サラダとかグラタンに入ってるやつ』

ミカは自分で食料品を買ったことがないらしく、はしゃいでいた。

「えー!?これで何か作って」

『いいよ』

なんかミカとの買い物は楽しい。



夕飯にみんなを招待したので、材料を買って帰り支度を始めた。

『ミカは…マカロニゆでて』

「は〜い」

こんなに料理が楽しいのも初めてだった。
光くんが来る…それだけでウキウキした。

真人さん達は5人で来るらしい。








ピンポーンのインターホンでやってきたのは真人さん達。

「こんばんは。お邪魔します」

真人さんと大和と光くん…そして、

「こんばんは〜いいのかな?私達まで」

大学生くらいの歳の女2人組。

「ごめん。俺の知り合いでさ。元々約束してたから。いい?」

真人さんがちょっと申し訳なさそうに言うので、私はもちろん笑顔で答えた。

『全然。待ってました』

「ど〜ぞ〜」

ミカがみんなを手招き。
ぞろぞろと中に入る中、2人組の1人が光くんにベッタリなのが気になった。

「光、今日のスノボ楽しかったね」

「あぁ」

『………。』

何も言えないで、下を向いた。
光くんの腕にぎゅっとしがみつく女。
今日の朝まで一緒にいたなんて夢に思えた。




「うわ、うまそ〜。誰作ったの?」

リビングに並べられた食事。大和が一番に叫んだ。

「美依が作ったの」

『違うでしょ。2人で作ったじゃん』

並べられたのはミカのリクエストのマカロニサラダ。
マリネにパエリア。唐揚げにエビフライ。
シャンパングラスにはジュース。一応、未成年。

それぞれがソファーに座る。

「こっち寄れば?そしたら真人座れるし」

光くんが腕にしがみついていた女=祐実(ゆみ)の腰に手を回して自分にピッタリくっつけた。

「あ…うん」

ちょっとテレる祐実がうらやましい。
光くんと目が合うとクスッと意地悪に笑う。

『!』

ムッとして目をそらした。からかわれた。

「美依」

『!』

大和がポンポンと笑顔でソファーをたたく。隣に座れと言っていた。

「料理うまそう。いただきます」

隣に座ると大和が言って食べた。
正直、家族以外に作ったことはあまりないので不安だ。
しかも、みんな舌も肥えてるはず。

『…どう?』

大和の目がキラキラ。

「うまい!美依がこんな料理できる女になったなんて…」

ガツガツ食べながら言う大和に思わず顔がゆるむ。

『ありがとう…』

「本当だ。うまいな」

真人さんも笑顔で言ってくれた。








みんなご飯も食べおわり、ゲームをしていた。

私は片付け。ゲーム機はよくわからないし、光くんと祐実を見ていたくなかった。
キッチンからはあまり見えない。

「美依、手伝おうか?」

大和が来てくれた。

『いいよ。みんなと遊んでて』

「料理作ってくれたのに片付けまで任せっきりはマズいだろ」

大和がふきんで洗った食器を拭いてくれた。

「あの美依が料理なんて…」

『まぁ…昔はね』

「どんなマズイもんが出てくるかと思ったけど」

『ひど…っ!』

ちょっと怒ると大和が笑った。

「すっげぇうまかった」

『!』

まっすぐなホメ言葉にテレた。







「やん、光のエッチ」

片付けが終わって、みんなのところに行くと、イチャつく2人がすぐ目に入る。
まるで恋人同士。

「どこがだよ。きれいな手だから見せてって言っただけじゃん」

「うそ〜。胸見ながらだし」

祐実はかなりの巨乳で、それを強調する服を着ているから当然だと思うが。

「ま…まぁさ、次大和と俺、勝負するか」

真人さんが私のに気遣うように言った。
でも、いたくなくてお風呂の掃除に逃げた。




『………。』

お風呂を洗い終わり、自分の手を見てがく然とした。
カサカサだ。祐実のように爪の先まで手入れをしているようなツルツルの手には程遠い。

「何やってんの?」

洗面台の鏡に映ったのは、後ろにいる光くんだった。





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