High&Low 初対面の真人 光くんと腕を組み、ビルの中へ。 「いらっしゃいませ、小笠原様」 光くんは会場前の受付を顔パス。大ホールの中へ。 本当に恋人同士みたいで、ドキドキしたけど嬉しかった。 丸いテーブルを囲んだり、すれ違いざまに、何人もの人が話し込んでいる。 ますます場違いな気がして光くんの腕をつかんだ。 すると、誰かが光くんに気づいた。 「見て!本物の小笠原光よ」 みんなの視線が一気に集中。私は一瞬、光くんの陰に隠れたが、光くんが堂々と歩くので、せめて光くんが見劣りしないように、振る舞えるだけ上品になるように努力した。 「父さん」 光くんが呼び掛けた先には、昔何度か見た人がいた。こっちを見て、私と目が合うと光くんのお父さんは笑った。 「遅かったな。でも来ると思わなかったよ」 お母さんも一緒に2人でこっちにきた。 「来いって言ったのは父さんだろ?」 「そうだが…で?そちらのお嬢さんは?」 いきなり話をふられて私はちょっと動揺したが、すぐに答えた。 「あ…すみません。ご挨拶もしないで…大堂美依と申します」 「あ…あの美依ちゃん!?」 光くんのお母さんが親しげに話しかけてくる。 「あの…?」 「一度会いたかったわ。光ったら子どものころは毎日…」 「母さん!」 テンポよく話すお母さんが何かを言う前に、光くんが止めた。 「…はいはい。お母さんはおとなしくしてます」 「そうか…光にも大事な人ができたんだな。それじゃあ…あの話はなしにしよう」 光くんのお父さんが言った。思わず聞き返した。 「あの話…?」 私が光くんを見ると、光くんは目を合わせようとしなかった。 「あなた、幸せな2人を邪魔しちゃ悪いわ。行きましょう」 「そうだな。それじゃあ…後で。ゆっくりしてくといい、光。美依ちゃんも」 「あぁ」 「…はい」 私はちょっと複雑な気分だが笑うと、光くんのお母さんが私の手をぎゅっと握った。 「またね美依ちゃん。一度ゆっくり話したいわ。後でいっぱい話しましょう」 「はい…楽しみにしてます」 明るく笑顔が素敵な光くんのお母さん。 「光、元気か?」 光くんのお母さん達と離れると、メガネをかけた20歳くらいのインテリ系の男が来た。 「真人、久しぶりだな」 楽しそうな2人。きっと仲良しなんだな…と思った。 「…何?女連れてくるなんてめずらしいじゃん」 「そうか?」 すると、インテリ系の長身の男が私に向かって笑った。 「初めまして。新谷真人(あらやまさと)です。光とは中学からの付き合い」 慌てて答えた。 『あ…大堂美依です。初めまして』 「光の彼女?」 『!』 光くんの答えが気になった。でも、答えが怖い気もした。 「…さぁ?どーかな」 光くんが意味深に笑う。でも、違うとキッパリ言われなくてホッとした。 「より、俺とりあえず挨拶回りしてくる」 『…はい』 「だから…手放してくれる?」 『あ…ご、ごめんなさい』 組んでいた手をパッと放して恥ずかしがると、光くんがクスクス笑った。 「真人と待ってろ」 無言でうなづくと、光くんはどこかへ。 「美依ちゃんは…光とは長いの?」 真人さんは飲み物を持ってきてくれた。 『ありがとうございます…で、長いって…何がですか?』 「え?付き合ってないの?」 『!』 ビックリして飲み物を吹き出しそうになった。 『な…っ!?そんなんじゃ…全然!』 慌てて否定すると、真人さんがクスクス笑った。 「美依ちゃんは、まさに小動物系だね」 『…え?』 「何ヵ月か前に光に聞いたことがあって…どんな女がタイプなのかって」 『!』 光くんのタイプ…かなり気になるので、じっと真人さんを見つめた。 すると、真人さんは穏やかに笑う。 「そしたら小動物系の女だってよ」 『小動物?』 「そ、小動物。俺も意味わかんなかったけど、美依ちゃん見たらなんとなくわかったよ」 『!』 ちょっと顔が赤くなる。舞い上がりそうだったので、自分に言い聞かせた。 そんなこと…あるわけない…と。 「…かわいいね。光の女じゃなかったら欲しいくらいだ」 『か…かわいいなんて…そんな…お世辞にもほどが…』 「俺はお世辞と社交辞令が嫌いな男よ?」 真人さんが声を出して笑っている。 …なんだか、初めて会う人なのにそんな気がしない雰囲気を持った真人さんに、すっかり打ち解けた私。 『真人さん…おいくつですか?』 「いくつに見える?」 『…19歳くらい…ですか?』 「やっぱ上に見えるんだ」 『?』 真人さんがクスクス笑う。 「俺、17歳。高2」 『え?本当に?ごめんなさい』 「謝るな!ひっでーなぁ」 お互い笑い合う。なんだか楽しい。 「真人…」 そこに光くんが戻ってきた。 「おー!光、帰って来なくてよかったのに」 「何話してた?」 「秘密〜…ね?」 『え?あ…はい』 会話が弾んでいたが、光くんが来て何を話したらいいかわからなかった。 「………。」 光くんがなんとなくイラッとしているのがわかって、私は何とかしなきゃ…と思ったけど、何もできなかった。 「真人、手出すなよ」 「友達の女には出さねぇよ」 『!』 そう言いながらも、真人さんの手が私の肩を抱く。 「…っ!来い!」 『…え?』 反射的に光くんが私の手を引っ張って出口へと歩いた。 残された真人は、光の行動にクスッと笑った。 「あの光がムキになっちゃって…」 『小笠原さん…痛いっ』 手首をガッチリつかまれていて痛みが限界。 入口付近で光くんは、手を放した。 「…なんで…あんなに楽しそうなんだ?」 『え…?』 光くんは背を向けたまま。 「俺といて…あんなに笑わないくせに」 『!』 なんだろうこの感じ…昔を思い出すような感覚。 ちょっといじめたくなるような…まさか光くんが嫉妬? 「答えろよ」 光くんが振り返って肩をつかむ。 じっと見つめられて恥ずかしかった私は目をそらした。 「…そらすな!」 光くんがイライラしてるのがわかったが、目線は合わせられない。 こんなに近くで見つめられたら無理だ。 「もういい…」 光くんが肩から手を離した。 すると、 「光ぅ〜!」 光くんに突進してきて、そのまま抱きついた女の子。 「アリス…!?な、放せ」 「嫌〜だってアリスは光の婚約者だもの。他の女になんて渡さない」 『!』 光くんに抱きついたまま、私をにらむ女の子=花咲(はなさき)アリス。 「まだしてねーだろ!」 光くんが腕を振りほどく。 「もーすぐじゃない」 「…なくなるよ。その話」 「え…何で!?」 「父さんに…彼女、紹介したから」 「!」 光くんの視線をたどったアリスと目が合った。 「この女が?彼女?」 「………。」 光くんが何も言わない以上、何も言えない。 黙ってうつむくと、光くんが言った。 「別に…俺モテるのに、まだ縛られたくなかっただけ。こいつはダミー。アリスが嫌なんじゃない」 「本当!?よかった〜」 アリスが光くんと腕を組む。さっきまでは私がしていた。 しかし、アリスは私とは違って大胆だった。 「じゃあ…アリス、したくなっちゃった。証明して。彼女じゃないならそんな女ほっといて…上の部屋…行こうよ」 「部屋?」 「そう。パーティーの休憩に何部屋かとってあるって」 『!』 まただ。光くんは行かないハズない。 だってアリスの言う通り、私は彼女じゃない。 「いいよ…行こう。その女じゃ…俺、絶対物足りないし」 『!』 光くんが笑うと、2人はそのままエレベーターへ。 あまりの出来事に、めまいがした。 「真人〜またな」 「おぅ!」 真人がパーティー会場を抜けると、ロビーのイスに座ったまま下を向いている美依を見つけた。 「美依ちゃん?」 『!』 私が上を向くと、泣き顔を見られた。 『真人さ…っ』 驚きながらも真人さんは優しくなだめてくれた。 「どうした?」 『…大したことじゃ…』 「そんなに泣いてるのに?」 『………。』 私はためらったが、ポツリポツリと話した。 『小笠原さんが…他の人と…どこか行っちゃった…』 「!」 『今ごろきっと…』 想像なんてしたくないのに、できそうなのが嫌だった。 『…真人さん』 「何?」 『今日初対面の人に頼むなんておかしいんですけど…』 私は勇気を出して言った。 『私と…エ…エッチしてください』 「………は?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |