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High&Low
恐怖の中で…




「…ゲホッ…ッ」

涼先輩は、ちょっとツラそうだ。

『藤波先生は…?』

「出張中…ケホ…ッ」

『じゃあ、帰った方がいいんじゃないですか?』

「………だって…美依、この次の次の時間…体育だろ?」

『!』

「ゲホゲホッ…!だから、姿見てから…帰ろうと思って」

涼先輩は本当にツラそうだ。
私は、額に手をあてて…熱がないか確かめる。

熱があるし、寒そうにしている。

『バカじゃないですか。結構熱ありますよ?』

そう言いながら、隣のふとんを涼先輩にかけて、寝かせた。
そして、水枕を作りに行く。

「………。」





『…あとは家の人呼んで帰って休んでください。誰か…いますよね?』

私は、涼先輩の頭を軽く持ち上げて頭の下に水枕を入れた。

「うん…ありがとう、美依」

『!』

顔がちょっと赤く、目が潤んだ涼先輩の「ありがとう」の笑顔は、ドキドキした。
私は、光くんとの約束を思い出して、

『じゃあ、私は…』

涼先輩から離れようとした。

「…待った!」

涼先輩は、私の制服のすそをつかんだ。

「…1人に…しないでくれ。美依には…移したくないんだけど…1人って俺、嫌いなんだよ」

『!』

今日の涼先輩はなんだか弱気だ。

まるで昔の光くんのようだ。

「1人は怖いよ〜」

昔、光くんがしてた想いを…また誰かにさせるのか…自分のせいで…。


『…ちょっとだけですよ。早くお迎え呼んでください』

私がイスを持ってきてベットの横に座ると、涼先輩はほほ笑んだ。
携帯で迎えを呼んだ涼先輩。

「…ゲホッ」

涼先輩は、本当に苦しそう。私は…額に手を乗せた。

『…私、手冷たいから最初は気持ちイイと思うんですけど…』

「……すっげぇ気持ちいー…」

涼先輩が目をつぶる。

「あーぁ、美依がカゼ引いてるんだったら…俺に移させて治してやるのに」

『…看病してくれるんですか?』

「してやるよ。身体で」

『…な!?涼先輩の変態!』

私が動揺していると、涼先輩はクスクス笑いながら寝てしまった。












「……美依…?」

涼が目を覚ますと、ベットにもたれて美依が寝ていた。咳は少し落ち着いた。
美依はぐっすりで、涼の呼びかけにも無反応。

「…携帯、鳴ってるぞ」

涼先輩は仕方なく、美依が持ってきた教科書の上にある携帯を取った。

ディスプレイに映る番号は、携帯からのようだ。

「………。」

無言のまま、涼先輩は携帯に出た。

「…俺だ。光」

「…小笠原か」

「誰だ…!?」

涼先輩の声は少し枯れ気味なので、わからないようだ。

「みんなは俺らを、白王子、黒王子って呼ぶな」

「真中…涼か」

「俺は年上だぞ?呼び捨てかよ」

「…この携帯の持ち主は?」

涼は、ベットにもたれながら眠る美依の頭をなでながら答えた。

「隣で…寝てる」

「…どういう意味だ?」

「…そのまんまの意味だよ」

クスクス笑う涼に、光は明らかにイライラしていた。

「…何をした?」

「答える必要ないな。ただ…美依は優しいな」

「!」

光はついに限界。電話を切った。

すると、今度は涼の携帯が鳴る。

「若(わか)!お迎えにあがりました」

外を見ると、黒スーツのオールバックの男が校門で手を振っている。

「…今行く」

涼は電話を切って、美依を起こさないようにベットを抜けた。
そして、帰る用意をしてから、眠る美依の頭をなでて…キスをした。

「美依…意地悪してごめんな。あとは…うまくやれよ…」

涼は、ちょっと哀しげに笑いながら…保健室を出ていった。







『ん…あれ?涼…先輩?』

私が目を覚ますと、涼先輩の姿はなかった。

帰るなら起こしてってよ…とちょっと思った。










『…あれ?』

マンションに裏口から戻ると、鍵が開いていた。

閉めなかった?と一瞬思ったが、それはない。

涼先輩のことでミカにはかなり文句を言った。
スッキリした気分で帰ってきたのに、ちょっと…怖かった。


『!』

リビングのソファーに人影を見つけて驚いたが、座っていたのは光くんだった。

『…あ…おかえりなさい』

「………。」

光くんは動かないし無言だ。

『ごめんなさ…帰ってくるって知らなくて…』

光くんが帰ってきてくれて…嬉しかった。
無意識のうちに、声がはずんで、ちょっと笑顔になる。


『家には寄らなかったんですね…チキンカレー、今からでもいですか?』

「………。」

光くんは無言のまま。

『小笠原…さん?』

私がちょっと変だと思い、ソファーの方へ行き、光くんの様子を見ようとすると、

「…楽しそうだな…」

『!』

光くんが急にこっちを見たのでビックリした。
しかし、すごく冷たい目をしていた。

「いい事でも…あったのか?」

『…いい事って…まぁ…少し…』

ハニカミながら答えた。
光くんには言えないが、光くんがここに帰ってきてくれたのが嬉しい。

「へぇ…」

光くんは…怖いくらいに無表情だった。

『…どうしたんですか?何か…あったん…ですか?』

私が普通に聞くと、光くんはついにキレた。

「何かあったのは…お前だろ」

『…え?』

「トボけてんじゃねぇよ!」

『!』

光くんが立ち上がって手首をつかんで、引っ張り…そのまま寝室に連れていかれた。

『…小笠原さん!?』

光くんの寝室は光くんの匂いがした。初めてマジマジと見た。
グレイのベットとふとん。
結構キレイに片づいている。
…と、色々見ていると…

『きゃ…!?』

ベットの方に投げつけられて、転んだ。
ヒザを床についてしまい、痛い。

「…下着脱いでベットに乗れ」

『え…?』

「早くしろよ!」

『!』

光くんが…本気で怖くなってきた。
何で…と思いつつも、そんなの恥ずかしくて…できなくて、首を横に振った。

『…で…できません』

「やれ」

『…そんな…無理です』

私が涙目になると、光くんは余計にイライラしているようだ。

「…買われた女のくせに、そんなのもできねぇのかよ」

『!』

なんか…ショックだった。
でも、何かしなきゃ…と思っても…身体が動かない。
逆に…震えてしまった。

『ごめんなさい…』

何で光くん…こんなに怒ってるの?



「…真中涼には、身を許すなって…言ったよな?」

『!』

「…なのにお前は約束を破った。昔のように…平気で…」

『…?』

私はイマイチ光くんが言ってることが理解できない。
約束はちゃんと守った。ヒザ枕のことはちゃんと言った。

「…ベットに乗れって言ったろ?」

『…きゃ!?』

腕をつかまれて、ベットに無理やり乗せられた。
四つんばいのような感じになる。

『小笠原さ…やっ!?』

ビックリしていると、後ろから光くんの手が伸びてきて、制服のブラウスをまくり上げながら、胸を揉んできた。

『…や…やめっ…!』

光くんの手は、今までになく乱暴で…怖かった。

「…何で…真中涼はよくて…俺は嫌なわけ?」

『や…何言って…っん』

私は、怖くてたまらなかった。ベットシーツをおもいっきりつかんで震えないように頑張った。

「ふざけんな!」

『…あ…!?』

光くんは、私のスカートの中に手を入れてきた。
そして、勢いよく…パンツをヒザまで下げた。

『…!!や…ダメ…』

光くんが…ベルトをカチャカチャ外す音がした。

…本気で怖い。
初めてが光くんなのは嬉しいけど、こんなのは嫌…。私…わがままなのかな?

『やめ…て。小笠原…さん…お願い』

「買われた女が抵抗するわけ?」

『…違っ…あの…』

光くんに…わずらわしい思いはさせたくない…。
…きっと、光くんにとって私はめんどくさい。だって…。

『ダメです…小笠原さんに…迷惑かけたくない…』

私が泣きながら言うと、光くんは手を止めた。

「…何それ?そんなこと言ったって真中涼みたいに…優しくなんて…してやんねぇし」

『!』

これでやっと光くんが何で怒っているのかわかった。

『…涼先輩とは…何もないです。約束…したから…』

「…トボける気?」

光くんが言う言葉には温度がない。感情もない。

『本当です…』

「どーだか…」

『だって…』

美依は震えながらも、キュッとシーツをつかんで、恥ずかしがりながらも言った。

『…だって…私…………まだ…誰とも…したことないんです』

「!」

光くんがどんな顔してるか見えなくてよかった。

きっと…光くんみたいな人は…初めての女なんて嫌いだ。

『…黙ってて…ごめんなさい。言ったら…私なんか買ってくれないと思って…』

「………。」

光くんが無反応なのが…さっきと同じくらい怖い。どうしたらいいかわからなかった。

『だまして…ごめんなさい…』

謝るしかなかった。私はシーツにこぼれる涙を見ながら言った。




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