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Cross Road
パフューム(梓)



『依緒サン…!』

アズが部屋に戻ると、依緒がいた。
今日はシフトの時間も違うし、登校のとき以外一緒になることがないので、約1日ぶり。
最近は、少しまともに会話をするようになっていた。

「…仕事終わったのね」

『はい。依緒サンもですか?』

「まぁね。でも…私、今から仕事」

『?』

依緒の言いたいことがわからないでいるアズの肩をポンッとたたき、

「隆史様とね…」

小さな声で言った。
なんだか…依緒の声は弾んでいて楽しそう。

「帰らないから…ゆっくり寝なさい」

依緒はそのまま部屋を出た。
…アズは、いつも依緒が遅番のとき、部屋の掃除などをしながら、眠らずに待っていた。

密かに依緒はアズを見直していた。
そして…ちょっとだけ…優しくなった。


『はい。また明日…!』

アズが言うと同時に、依緒は部屋のドアを開けて、歩きだした。

依緒サン…
隆史様が好きなのかな…

すごく…嬉しそうだった。





そして部屋に1人きりになったアズ。


なんだか…急に寂しくなった。


『…っ…』

急に涙がポロポロ。

お見合い相手と親しげな高柴くんがあんなに嫌だとは思わなかった。

ダメだなぁ…こんなことくらいで動揺してたら。



アズは電気を消してベットに倒れこむと、枕に顔を押し付け…できるだけ声を殺して泣いた。

『…っ…ひっ…』

泣いてるワケもわからないまま泣いていると、ガチャ…とドアの開く音。

『!』

依緒が帰ってきたと思ったアズは、慌てて起き上がり、涙を拭った。

『早かったで…』

アズがそこまで言うと、誰かがギュッと抱きついてきた。ガチャン…とドアが閉まる。

『…え?誰!?』

アズがパニックになりかけていると、秀の香水の匂いと…もう1つ…別の…女の匂いがした。

「…アズ」

それは…まぎれもなく秀だった。
突然のことでアズは動揺。他の女の匂いも嫌だった。

『秀様…放して下さいっ』

まったくビクともしない秀の体。
アズは、どんどんドキドキしてきた。

「アズ…」

『冗談はやめ…』

「会いたかった…」

『!』

アズは、秀の言葉に驚くと、抵抗するのを忘れた。

「なんか…今日はすごく…会いたかった…」

秀が言うと、涙で目が潤む。

ずるい…
そんなこと言われたら…

抱きしめてる腕をそっと緩めた秀。
よく見えないけど、アズは秀と目が合っている気がした。

そして…ゆっくり…時間をかけてキスをした。






『…ん…ふ…』

あまりに長すぎるキスに、キスに慣れないアズは震え始めた。

『…しゅ…秀様!』

アズがなんとか一旦、秀の唇から逃れた。
すると秀は…

「そんな呼び方するな…しないでくれ」

『…っ…ん』

様を付けて呼ばれたのが嫌だったようだ。
今度は、頭がしびれるような激しいキス。

『ダ…ダメ…っん…』

静かな部屋に、アズのキスの合間にもれる声だけが響く。

『た…高柴くんには…!』

再びなんとかキスから逃れたアズ。息は上がっている。

『…さっきの…着物のキレイな方がいるでしょ?』

私なんて…。

そう思っていると、

「何コレ?」

暗闇に目の慣れた秀が、ベット近くの棚にある香水に手を伸ばす。

『あっ…!』

アズは秀より先にそれを取ろうとしたが、遅かった。

「これ…俺の香水?」

秀の視線を感じたのでうつむくアズ。幸い、暗いので顔が赤いのはそんなに見えないハズ。

『…ごめん…なさい』

アズが謝ると、急に自信満々になる秀。

「そんなに…俺が恋しくなっちゃった?」

『!』

アズは否定もできずに、ただ…ただテレた。

しかし、ベットに押し倒され上着を脱いだ秀の体からは…秀の香水の匂いに混ざって…女の匂いがした。




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あきゅろす。
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