Cross Road 守りたい(秀) 秀は、携帯を肌身離さずに持ち歩いた。 鳴らない着信音に、落ち着かない夜を過ごした。 次の日も…アズからは連絡がなく、学校にも来なかった。 心配になる秀だったが、アズから頼られもしないのに勝手なことはできない…する資格なんてない…と、自分を必死に抑えていた。 「ねぇ、シュウ様…私、そろそろ…したいなぁ」 麗子が後ろから抱きつきながら、耳元で吐息まじりにささやいた。 『…近寄るな』 麗子の腕を振り払い、立ち上がった秀は、教室を出ようとした。 ここの空気はよどんでる… 特にあいつ…南野って男がいるからだ… 秀は、楽しそうに友達と話す南野をにらみつけ、教室を出た。 廊下で一息ついた。 すると、廊下でクラスの女子がヒソヒソ話しているのが、ちょうど秀の耳に入った。 「…えー?美喜も聞かれたんだ。アズの住所。私知らないから教えなかったけど」 「そうなんだよね。私も!あの2人…付き合ってんのかな」 「えー!?アズと南くんってあり得なくない?」 『!』 南野がアズの住所を探ってる…!? そう思ったら、体が勝手に動いていた。 『…その話…本当か?』 「「!」」 秀に話しかけられたクラスの女子は、失神寸前になりながらも、秀の問いに必死に答えていた。目がハート。 秀は、昼休みになると裕貴に理沙を連れてきてくれと頼んだ。 ここは屋上。天気は曇り。 「秀!連れてきたぞ」 「…ちょっ…何?」 腕を引っ張りながら、ちょっと強引に連れてきたようで、理沙は状況を理解していない。 連れてこられた先に秀がいて驚いていた。 「…何か用?」 裕貴は、理沙を連れてくると2人から離れた。 『アズの家…教えてくれ』 「!」 『…知られたくないやつがいる…』 「…南野?」 理沙は、強引に連れてこられたのでちょっと怒り気味。 『…あぁ』 「別に…私に聞かなくたって…あんたなら簡単に調べられんじゃないの?」 理沙は、イヤミを込めて言った。 秀は、苦笑いしながら理沙に背を向けた。 『確かに簡単だ…けど、それじゃ意味がない…』 「………。」 『今度は…俺の手で守りたいんだ…』 「!」 秀の口からそんな言葉が出るとは思わなかった理沙は、秀の目をまっすぐ見た。 秀の漆黒の瞳に見入ってしまった理沙は、ハッとして目をそらした。 「…南野よりはマシか…」 理沙はボソッと言うと、今度は秀をまじまじと見た。 「アズの住所…教える。なんとか学校に来れる状態にして。でも、これ以上傷つけたら許さないからね」 『…あぁ』 理沙は、秀に住所を教えた。たぶん車で行くと思った理沙は、目印となるものも教えた。 「高柴…あんたが本当に南野にアズを?」 最後に理沙が聞いた。今までの様子を見て、ちょっと疑問に思ったようだ。 秀は、すぐに答えた。 『違う!絶対に違う』 秀が、理沙をまっすぐ見ながら切なくて苦しそうに言うので、ちょっとドキッとした理沙。 とりあえず、この言葉を信じてアズを任せた。 ピンポーンとインターホンを押した秀は、誰が出るのかちょっとドキドキ。 「……はい。どちら様?」 落ち着いた話し方…たぶん母親だなと思った秀は、丁寧に挨拶。 『…あ、初めまして。梓サンのクラスメイトの高柴秀です』 「…高柴?」 『はい。梓サンいますか?学校からの連絡がありますので…』 「…ちょっと待ってね」 …理沙の話によると、アズは休む理由を風邪に変えていた。 実際に風邪をひいていた。 秀は、再びインターホンが鳴るか、玄関が開くのをひたすら待った。 [前へ][次へ] [戻る] |