[携帯モード] [URL送信]

Cross Road
20歳冬A(秀)




『…で、マサ兄とは何の話したんだよ?』

まださっきの会話が気になる秀。

「…覚えてないの?5歳の夏の海での話だって」

『5歳の夏?海…』

ごごご…5歳の夏!

秀が青ざめる。


5歳の夏…夏休み。幼稚園も休み。

昔からモテていた秀は、別荘でも同じ歳の女の子にはモテた。

ある日、秀は海で知り合った女の子と遊んでいた。

その時、急な高波で秀は波にさらわれた。

あわ立つ波と真っ暗な世界。

秀は、太陽のまぶしさで目を覚ました。

すると、目を覚ますと同時に…見知らぬ男に人工呼吸されていることに気づいた。

その上からのぞいていた優幸と目が合う秀。



…秀のファーストキスは、デート中の人命救助で奪われた…。






「…まさか高柴くんの初めてのキスがそんなのだと思わなくて…」

クスクス笑うアズ。秀は、変に恥ずかしくて困った。

『マサ兄のアホ…』

秀が困っていると、アズは楽しそうに笑っていた。

『笑いすぎ…』

「!」

いきなりキスして唇をふさいでやった。

「…ん」

昔から…キスすると、唇が震えるアズのクセは治らない。

『…っ…これでも…まだ笑ってられる?』

激しいキスにあがる秀とアズの息。

「…意地悪」

アズがテレると、今度は秀がクスクス笑った。








「このベット…高柴くんの匂いがする…」

『?…当たり前だろ。俺のベットなんだから』

「そうだけど…嬉しい」

『?』

秀はアズの言っていることがイマイチ理解できなかった。

『…話そらしても…ヤメないからな…』

「…っ…ダメ…あっ…」









「…高柴くんのバカ」

ドレスを着直しているアズが怒っている。

『何怒ってんの?』

「………。」

『気持ちよかったくせに』

秀が耳元でささやくと、アズは真っ赤に。
そして、やっぱり怒っていた。

「…あんなに…したら、まともに立てないよ」

『!』

「…バカ」

アズが真っ赤になりながらうつむいた。
なんだか嬉しかった。

『だったら…』

秀はクスクス笑った。

『ずっと俺にしがみついてればいい…』

「!」

また…アズは恥ずかしがる。





「1回だけ…聞いてもいい?」

パーティに戻ろうと廊下を歩いていると、腕にしがみつくアズが小さい声で言った。

『何?』

「…あの…さ」

『だから何だ?』

「…高柴くんの…初めてって…いつ?」

『!』

そんな質問初めてされた秀は戸惑った。
すると、アズが恥ずかしがりながら謝った。

「ご…ごめん。変なこと…言っちゃった…ね」

『………。』

秀は何も言わなかった。
…というより、何も言いたくなかった。

だって…俺が初めて女を知ったのは…

無理やりだった。



「…ごめん!忘れて…」

秀の思い詰めた表情にアズが謝る。
秀は、力なく笑った。

『いや…気にするな…』

「…パーティ…どうなったかな?」

アズが話題を換えた。








「秀!お前に紹介しときたい人がいる」

パーティに戻ると、秀はすぐに優幸に呼ばれた。
アズが心配な秀はちょっと迷ったが、

「私、その辺で休んでるから…」

アズは秀の腕から離れて、壁ぎわのイスの方へ歩いた。
心配だったが、秀は優幸についていった。



優幸に紹介されたのは、取引先の重役。
秀は将来的に優幸の下で働くことを決めていたので、優幸も紹介をした。








「…お久しぶりです。優幸さん」

「『!』」

秀と優幸が2人でいるところに現われた…真っ赤なドレスの女…。

「…あなたを呼んだ覚えはありませんが…」

「あら、ヒドい言い方ね」

「…隆史はもうこの家にはいませんよ」

優幸が明らかに不愉快そうだ。
秀も少し…怯えていた。

「私は純粋に優幸さんのお祝いに来たのよ。秀くんも立派になったわね…」

秀のほほに手を伸ばそうとする女。
秀は動けなかった。足がまったく動かない。

「…帰って下さい」

優幸が妨害してくれたことで、秀はようやく金縛りから解けたように動けた。

『マサ兄、待って。俺は…大丈夫だから』

「秀…」

秀は自ら女の方に歩いた。

『お久しぶりです。流香(ルカ)さん…』





[前へ][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!