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Cross Road
竜二の変化(梓)





「…あ、そろそろ戻んねぇと、大輔がうるせーな」

『あ、うん…』

竜二が軽々と防波堤に飛び乗った。
アズも慌てて後を追いかけようと、防波堤に手をつき、砂浜を蹴って跳んだが…

『あれ…?』

…砂に足をとられ、背の低いアズは、全然登れない。
アズが本気で悪戦苦闘しているのに、竜二はちょっとおもしろがっている。

「…何の冗談?」

『冗談なんかじゃないよ!んー……無理』

何度か挑戦したが、アズは結局あきらめた。
左右を見渡して、階段のあるところまで歩こうと思った。


「…ほら」

『!』

すると、ちょっとめんどくさそうに、アズに向かって竜二が手を伸ばしてくれた。

『い…いいよ』

「バカ。あんな遠くまで歩くよりマシだろ」

アズがちょっとためらうと、竜二がちょっと強めに言った。
確かに、階段は遠くに小さく見える。

…迷ったが、アズは竜二の手をとった。
ガッチリ握りながら上に軽々と引き上げる竜二。


『…ひゃ…っ!?』

足を防波堤の上に乗せると、上半身がグラついた。

「危ね…っ!」

『!』

上半身を支えられ、抱きしめられるような格好になった。

『あ…ありがとう』

恥ずかしいので、アズが離れようと竜二の体を手で押したが…

『!』

離れない。竜二は更に腕に力を入れた。

『ちょ…児島くん!?』

「………。」

ドキドキしながら戸惑うアズだったが、どーしたらいいかわからなかった。









そして…3分くらいして、やっと放してもらえた。
竜二はずっと無言だ。

『………。』

「………。」


明奈の家に着くと、明奈がいち早く竜二を見つけた。

「あ、竜二。ありがと〜」

「…あぁ。悪かったな。遅くなって」

笑顔の明奈に普通に飲み物を渡す竜二。
いつもの口調だ。


さっきのは…何だったんだろ…。

抱きしめられたコトを思い出した。

タバコの匂いがして…

高柴くんとは…何か違った。




「アズ…?」

『!』

飲み物を持ちながらボーッと座っていたアズ。理沙に突然声をかけられ、ビックリした。

「ど〜した?」

『…あ、ううん。何でもない』

「そう?ね、この後花火するって!やってこ〜よ」

『え…でも、もう9時…』

「い〜じゃん!夏と言えば花火だよ。夏の海辺と言えば花火だよ!」

『…………わかった。じゃあ、お父さんに電話してくる』

「やりぃ〜!アズ最高」

理沙の高いテンションに言い包められたアズは、渋々父に電話した。






「キャハハ…ッ!」

理沙は相変わらず、テンション高くて楽しそう。
花火をくるくる回しては、笑っていた。そんな理沙を恋する目で見る男子もちらほら。


「…理沙ちゃんって…」

『彼氏いるよ』

…このセリフ…今日だけで5回は言った。


アズは静かに花火をしていた。

「あ、バケツ忘れた」

深雪が言った。

『じゃあ、私持ってくる』

深雪は大輔とちょっとケンカしながらも、楽しそうに花火をしていたのでアズが言った。

「いいの?ごめんね」

深雪が謝っていたので、アズは意味深に笑いながらバケツを取りに向かった。





そーいえば、明奈ちゃんいないな…

どこに置いたか聞きたかったのに。

アズは、バケツが見つからず、バーベキューをしていた辺りをウロウロ。

『ないなぁ…』


ウロウロしていると、裏庭の方から声がした。

「……ね…」

『?』

アズがそっちの方に歩くと、その声が明奈のものとわかると足早に歩いたが、

「…何?」

『!』

竜二の声もしたので足を止めた。

「今日、ありがとう。来てくれて。楽しかった」

「…あぁ」

ちょっと間が空く。
アズは聞くべきではないような気がして戻ろうとしたが、足音がしそうでためらった。


「あの…ね。それで…」

「………。」

明奈はすごくテレていた。竜二は無表情。

「私…竜二が好き。もう…気づいてたかも知れないけど…」

思い切って言った明奈。




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