[通常モード] [URL送信]

Cross Road
自己への嫌悪(秀)



秀はアズが起きる前、夜明けと同じくらいに、テラスに出た。
白いイスに座りながら朝日が昇るのを見ていた。


…答えが見つからない。

答えのない問題を解くのは…苦手だ。


俺は…まだ何もわかってないのか。



「高柴くん…?」

眠りそうになっていた秀は、アズの声でハッとした。
秀は笑顔で振り返った。

『…寝れた?』

「うん…」

アズは秀の隣までゆっくり歩いてきた。

『いつ…転校するんだ?』

「…来月…くらいかな」

来月…

…あと…3週間…。

『そうか…』

「うん」

アズは、秀のイスの背もたれに手を置いた。

『朝飯…食うか』

「はい…」










ご飯を食べて、学校に向かうリムジンの中。
秀とアズは向かい合わせに座った。

…学校に着いたら…


夢の時間は終わりだ。


きっと…目も合わせなくなる。


仕方ない…

あんなに泣いてるアズの…

そばに毎日はいれないのだから。



「…この辺で降ろしてください」

『!』

「あとは…歩くから」

学校まであと数百メートル。

アズの言葉に従い、秀はリムジンを停めた。




「じゃあ…行くから…ありがとうございました」

アズが、運転手が開けてくれたドアから降りる。

『………。』

車に乗ってから、2人は一言も話さなかった。
今だって、行ってしまう…そう思ったのに何も言えなかった。

運転手がドアを閉めると、スモークガラスなので、外から中はまったく見えない。

でも、中からは見える。秀はアズを見つめた。
アズは、見えない秀の姿が見えてるかのように車の中を見つめ、哀しげな顔をしていた。

もう…何もわからない。


車はアズを置いて走りだす。
秀は少しだけ振り返ってアズを見た。
すぐに見えなくなった。













そして、秀はつらくなるのでアズを見なかった。

でも、教室にいるとアズの後ろ姿は目に入るので、そのたびに息苦しくなった。

…忘れよう。

いつも会えなきゃ…ダメになる程度の関係だったんだから。



そう思ったが、秀は最近他の女に前ほど関心がなくなった。

何をしてもされても満たされない…

そんな気がする。



…かといって、性欲我慢できるほど大人じゃない。


「…あ…シュウ様ぁ、気持ちイイ…ッ…好き」

『!』

パイプイスに座る秀の上に乗る1年の女。

好きのセリフを聞くと、アズのことを思い出した。
そのまま…イッてしまうことも。

…最低だ。

アズをこんな女に重ねるなんて。

秀は自分に嫌気がさし、どうすることもできない自分にイラついた。

転校したって…

俺ならすぐ会いに行ける。


でも、会えない時間は必ずある。


その間…アズが俺を好きでいてくれる保障がどこにある?


不確かな気持ちを信じきるのが怖くて…

一瞬の快楽に逃げてる。




そうか…

あの日は…

手探りでも、不確かな気持ちを信じたから…

あんなに満たされて…


あんなに不安だったんだ。



「シュウ様ぁ〜」

教室に1年の女子が来た。
秀の女関係は昔ほどじゃないが派手になりつつあった。

「今日、お暇ですかぁ?」

『さぁ…どーしよっか』

「え〜!?遊んでくださいよぉ」

『…放課後…気が向いたらな』

「…は〜い。期待してまーす」

今はまったく気がのらない。

秀は無気力になりつつあった。


今まで…

俺が望めば手に入らないものなんてなかった。


こんなに欲しいのに…

強引に奪っても意味がない…

もう…離れていくだけだ。


なぜだ…

失いたくないのに…

待てる…の一言が…


言えないんだ…。





[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!