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Cross Road
久しぶりの再会(梓)




『…ん、やっ…』

キスの嵐は止まらない。
アズは、足が震えてきた。
まだ、ちょっと抵抗していたが、立ってるのもそろそろ限界。

ダメ…流されちゃ…

好きだなんて…絶対あり得ないもん。

『…ん…っ』

しかし、気持ちよくなりつつあるアズは、秀の背中に手を回して…抱きつきそうになった。
すると、秀の方からキスをやめた。
ちょっとビックリしたアズに秀は言った。

「…人が…来た」

『!』

アズは、秀の背中に回しかけている手をどけた。秀の一言で、自分のやろうとしているコトにハッとした。

めずらしく秀の息が上がっている。吐息まじりの声に、ドキッとしたアズ。
階段を昇ってくる足音は、確かに聞こえた。

『…こんな冗談やめてください。ヒドいよ…好きなんて嘘…っ』

アズは、秀から離れようと走りだそうとした。
だが、走る前に腕をつかまれた。

「嘘じゃない…」

『!』

後ろ向きのまま、手だけが秀の方へ。
アズが無言でいると、秀はつかんだ腕を放した。

「好きだ…アズ…」

『!』

アズが戸惑っている間にも、足音は近づいてくる。
誰かに見られる前に教室へ行こうか迷うアズ。

「信じてくれるまで…何度でも言うよ」

真っ赤な顔を、階段を昇ってくる人に見られたくなかったアズは、秀を残して教室へ走った。

…聞き間違いじゃない…。

教室には、まだ誰もいなかった。


高柴くんが…

私…を?



なんで…あきらめようとしてる時に言うの!?


フラフラ歩きながら、アズは倒れこむように席に着いた。

『本当かな…』










『ただいまー…』

家にまっすぐ帰ったアズが、玄関に入ると見慣れない大きな革靴があった。

「お姉ちゃん…っ」

『結子?こんな時間にいるなんてめずらしいじゃん…誰か来てるの?』

結子がリビングから出てきた。
アズが靴を脱ぎ、家にあがると、

『結子?どーしたの!?』

結子が泣いていたのでビックリした。
結子は答える前に2階へ行ってしまった。

『ちょ…っ!?結子?』

アズは、疑問に思いながらもリビングへと急いだ。

そこでアズが目にしたのは…


『………お父…さん…?』

久しぶりに見た父。1年ぶりぐらいだ。
母と向かい合わせでソファーに座っている。

「梓、元気だったか?」

懐かしい声と笑顔。

『うん。お父さんも元気だった?』

「もちろんだ。最初は慣れなくて大変だったがな」

『全然帰って来ないから心配したんだよ?』

「…悪かったな」

リビングに入るアズ。

『電話もメールもたまーーーーにだし。ねぇ、今度はいつまでこっちにいられるの?』

「……すぐ…帰るんだ。今度も長くなりそうで…な」

『えー?じゃあ、みんなでドコか行こう?』

アズが笑顔で言うと、母はうつむいた。

『お母さん…?』

アズの呼びかけにも無反応。だが、かすかに肩が震えていた。
その理由はすぐにわかった。

母と父の間にあるテーブルにある…実際には初めて見たモノ。

真っ白の上に、緑色の枠線…離婚届けだ。
しかも、父も母もサイン済み。

アズは思わず持っていたバックを落とした。

『…え…何で…?』

その問いに2人は答えてくれなかった。
父は下を向き、母はうつむいたまま泣いていた。

『いつ…決めたの?』

「ごめんなさい…梓。ごめんなさい」

母は泣いて謝るばかり。父は冷静だった。

「ずっと前からな…父さんと母さん、溝が埋まらなかった」

『………。』

アズもちょっと泣きそうになった。

「離れて暮らしてばかりで…帰りも遅くて…母さんには淋しい思いばかりさせた。父さんのワガママなんだ。許してくれ」

『…別れてどーするの?この家は!?』

「この家は母さんのモノだ」

『…本当に?』

アズは2人に考え直してほしくて言ったが、無理なのはわかっていた。

「ごめんな。梓…」




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