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Cross Road
まっすぐに…(秀)



「オイ、高柴〜」

『!』

体育が終わり、早々と制服に着替えた秀。
そこへクラスメイトの1人がからんでくる。

「誰とキスするつもりだったんだよ!?な〜教えろよ」

『…秘密』

「えぇ〜!?ケチ!」

秀はクスッと笑い、更衣室を出た。
アズを…待ち伏せするために。



階段の影に潜(ヒソ)んで、ひたすら待っていた。

「………。」

今はまだ授業が終わったばかりで、人は少ない。

すると、人が昇ってくる足音がした。
階段をチラ見した秀は、それがアズだと確認。

ちょ…早くね!?

まだ心の準備が…!

しかし、どんどん近づく足音に高まる鼓動。

『…っ…!』

思い切って飛び出した秀は、すぐさまアズの腕をつかんで抱きしめた。

「…え…!?」

小さい…でも、あったかい…アズだ。

驚いているアズを、秀が痛いくらいの力で抱きしめた。
廊下と階段には、今は2人の他に誰もいない。



「た…高柴くん?」

アズが名前を呼ぶと、秀の体が小さくビクッとした。

また…
こんなに近くで聞けた声…

聞けなくなるなんて…

絶対に嫌だ。

『…アズ』

「!」

今度はアズの体がビクッとした。

ごめん…

いっぱいツラい思いさせて…。

秀は、アズの香りに酔いしれるように、すりよった。

もし…

まだ…


秀は…アズにキスしようと顔を近づけた。

反射的に、秀を突き飛ばして顔を背けた。
だが、秀は突き飛ばそうとしたアズの手をガッチリ握った。

「…は…放してっ」

真っ赤になりながらも、困った表情のアズ。
秀は、ちょっと悲しそうに言った。

『シュート決めたら…キスって言っただろ』

俺が…勝手に言っただけだけど。

「そんなの高柴くんが1人で勝手に言ってただけで…!私…するなんて言ってない」

『………。』

その通りの言い分に、何も言い返せない秀は、落ち込んだ。

「やめてよ…」

アズは下を向いた。

「…からかわないで…もう嫌なの。どーせ…他のヒトにも同じコト…すぐするんでしょ?」

『………。』

「前にも嫌って…言ったじゃん。最初は我慢しようと思ったけど…でもダメなの。もう我慢できない」

そうか…

俺…本当にアズの気持ちなんか考えてなかったんだ。

アズは腕を振り払おうとしたが、秀の手の力はゆるまない。

でも…

「もう私に近寄らないでくだ…」

言い終わる前に、アズは秀に再び抱きしめられた。
アズは、抵抗した。

「放してくださ…っ!人に見られたら…」

『別に、誰に見られてもいいだろ…関係ない』

「!」

俺は…

もう…



迷わないから。


『アズ…こっち見て』

秀は、アズに上を向くように言った。
下を向いたまま…表情のわからないまま、今の気持ちを言いたくなかった。

しかし、アズは下を向いたまま。

『アズ…お願い』

見て…俺を見て…。

秀の切なくなるような声。
すると、アズは…ゆっくり上を向いた。

そして、ゆっくり秀の目を見た。

アズ…

アズと目が合った瞬間、秀は自然と笑っていた。
秀は顔を近づけて…唇を唇に近づけた。

「!」

アズがギュッと目をつぶると、秀はあと5pくらいの位置で唇を止めた。

息づかいが聞こえそうなくらい…近い。

『…アズ』

キスの前に言わなきゃないことがある…。

「!」

キスの前に声をかけられてビクッとした様子のアズが、ゆっくり目を開けると…秀は顔を少し離して目と目を見ながら言った。

『アズ…好きだ』

「!!!!」

アズが声にならないほど驚いてるスキに、すかさずキスをした秀。

「…ん…待っ…っ」

そう言いつつも、アズの手には抵抗の力が全くこもっていない。

アズ…

お前がいれば…



他なんかいらない。





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