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Cross Road
キスゲーム(梓)




「それで?それで?」

初めてのアズのまともな恋バナに、理沙は興味津々。

『返事はいつでもいいって言ってくれたけど…』

「…あんまり待たせちゃ悪いよね」

『…うん』

恭平さんは本当にいい人…

でも…気持ちは…まだ…。







『…理沙ちゃん、自分が好きな人と自分を好きでいてくれる人…どっちが幸せになれると思う?』

体育のため着替えてる途中にアズが理沙に聞いた。
着替え終わった理沙は、プラスチックのベンチに座ってアズの着替えが終わるのを待っていた。

「そんなの決まってるじゃん。好きでいてくれる方が幸せになれるじゃん」

『……だよね…』

アズも着替え終わり、体育館へ向かう2人。

「でも…幸せって人それぞれだし。答えなんかないから、迷って傷つけちゃったりするんだよ」

『………。』

「先を見るか、今を大切にするかは…アズが決めることだよ」

アズと理沙は体育館に到着。今日はA組と合同でバスケット。
すると中は、かなり騒がしい。

『?』

アズと理沙が中に入ると、明らかに一部だけ女子集中。

「…めずらしい…ね」

ボソッと理沙が言った。2人の視線は、女子の固まりの中心人物を見ていた。

秀が…いた。めずらしく体育に参加。

アズは、正反対に歩いた。


見たくない…

どうせ…私の視線になんか気づかない。

みんなが…高柴くんを見てるから。

もう…一方的なのは…嫌。




体育中、女子グループのアズの試合が終わると、理沙がアズの手を引く。

「ステージで見よ」

『え…』

「いっぱい人いるから、全然目立たないって」

『………。』

理沙はアズが秀の試合を見たがっているのに気づいていた。

「キャー!シュウ様ぁ」

「カッコイ〜ッ!」

秀がコートに立つと、みんなの視線がその試合に集中。
秀と裕貴は別チームで、対戦することに。

理沙とアズはみんなの熱狂の中で、ステージの上に座った。


私…また…

遠くから見るだけになっちゃったんだ。

ちょっと淋しく思っていると、試合はスタートしていた。

「バカ!何やってんの!?」

理沙は、パスカットされた裕貴に怒鳴る。
カットしたのは、秀だった。秀の運動神経は抜群。

女子はみんな熱狂。悔しがる男子は意地でも秀を止めようとした。

止めるには…ファールするしかなかった。

「ちょっと!シュウ様に何してんのよ!」

女子のファールした男子への罵声が飛びかう。

秀は、ヒジがわき腹に入った。頭には包帯を巻いているだけに、ちょっと心配。

あ…

思わず、駆け出しそうになったアズだが、秀はすぐに立ち上がったのでやめた。
ハッとしたアズ。

私…もう関係ないのに。


そして、フリースローが1本。
みんなが秀の動きに注目。女子の試合の声以外、なにもしなくなった。

ポーンとボールを2回ついて、ボールをガッチリ握り、秀は突然こっちを見た。

『!』

自分の方を見られたような気がしてドキッとしたアズ。反射的に目をそらした。
でも、周りには他の女子もいっぱい。

アズが恐る恐る秀を見ると、目が合った気がした。
秀は笑った。

「これ入ったら…キスして」

『!』

これには、アズを始め、周りにいた女子みんなが興奮。
私に言ったの!と、みんなが主張。

そんな中、アズだけが静かにドキドキしていた。

まさか…私じゃないよね?

自分を嫌ってる女になんて興味ないだろーし…。

でも、ちょっと期待もしてしまう自分がいる…。
アズは、そんなの嫌で目を背けた。



「……ッ…キャー!さすがシュウ様ぁ〜!」

女子の歓声。
すごく響いてみんなが盛り上がったので、秀が決めたのがわかった。

それから先は、キスの争奪戦。
しかし、秀は再びこっちの方を見て笑うと、そのまま試合に戻った。

「えー…!冗談だったのかな。残念」

1人の女子が言った。
アズは、自分が同じ気持ちになっていることに驚いた。





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あきゅろす。
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