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Cross Road
醜い嫉妬(秀)




「…秀君」

『!』

昼休み、屋上を独り占めして寝ていた秀に覆いかぶさる影…。

『来たんだ…』

クスッと笑いながら起き上がる秀の横に立っている女。

笑い方にムッとしたのか、秀に背を向ける。

「あ…あなたが呼び出したんでしょ!?あんなことして…よく呼び出せたもんよ」

秀は立ち上がり、後ろから女を抱きしめた。

『でも…来た』

「…っ…ん」

女の耳元でささやく秀。手はブラウスの中へ。

『そろそろ限界だったでしょ…?先輩』

山本先輩は、恥ずかしながらも嬉しそう。

「あ…っ…もう、ズルいんだから…」


あぁ…アズにこんなこと言われてぇな。











昼休みも終わりかけた頃、教室に戻る秀。

廊下ですれ違う女子のほとんどが秀を見る。憧れの眼差しで。
だが、当の本人は無視して誰とも目を合わせなかった。



『!』

教室に入ると、裕貴が結構真剣な顔で誰かと話している。
後ろ姿から、それがアズだとわかった秀。


な…何だ?
その組み合わせは。

意外な2ショットに秀はビックリした。

『裕貴…ちょっと…』

思わず裕貴をアズから離そうとした。アズは振り返らなかった。
裕貴が立ち上がる。

「…何だよ!?」

めんどくさそうに立ち上がる裕貴。
秀は2人の会話が気になって仕方ない。

裕貴は秀の方へ来る前に、アズの肩をポンッとたたいた。

「また…後で聞くから」


そして、そのまま行こうとする裕貴のブレザーのすそを慌ててつかむアズ。何か言いたそう。

「…あの…」

軽くイチャついてるように見える2人。


「…わかってますよ」

裕貴がアズの手を優しくすそから放させた。
秀が2人を見ると、裕貴の笑いにつられてアズも笑っていた。
それなのに、秀と目が合うと表情が固まる。


…何でだよ…。








「…何か用?」

廊下を歩き、人気(ヒトケ)のない階段まで来たところで裕貴が冷めた目で言った。

秀は階段に座り、裕貴は壁に寄りかかっている。

『…お前…アズと…何話してたんだよ』

「…別に。普通の世間話」

『嘘つくなよ!そんな表情じゃなかっただろ!?』

「………。」

裕貴は無表情のまま目を合わせなかった。

「…お前に何でも言わなきゃないわけ?」

『何!?』

「言ったろ?俺はアズちゃん…可愛いと思ってる。だから、今のお前に正直…すっげぇ腹立ってる」

壁に寄りかかるのをやめて、まっすぐ立って秀を見た裕貴。

「何で苦しめてんだよ。好きなくせに」

『………。』

苦しめてる?俺が?

秀は下を向いた。言いたい放題の裕貴にイラついていた。

好きで…俺だって苦しいんだ。

だから同じくらい…アズを苦しめたかった…

嫉妬させてやりたかった…。


俺より…好きでいてほしくて。




『………………る…』

秀の怒りが爆発。
立ち上がり、裕貴の胸ぐらをつかむ。

『お前に何がわかる!』

「………。」

裕貴はタメ息をつきながら、秀の胸ぐらをつかみ返す。

「…わかんねぇよ!好きな女泣かせるヤツの考えなんかな」

『…てめっ…!?』

「…体中から女の匂いさせてんじゃねぇよ…!」

『!』

2人の怒りは収集がつかなそうだ。

にらみ合いをしていると、階段を昇ってくる足音が。


「ちょっ…何してんの?」

下の階から現れたのは、理沙だった。
互いに怒ってにらみ合い、つかみ合う2人にビックリしていた。

「…何でもねぇよ!」

裕貴が舌打ちしながら、秀から離れた。
とりあえず、裕貴を追いかける理沙。

「…え…待ってよ!」

2人がいなくなると、壁を思いっきり蹴る秀。


アズは俺が好きなんだ…

大丈夫なんだよ!





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あきゅろす。
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