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Cross Road
スキと好き(秀)




『……ん…』

風に乗ってただよってくる、大好きな匂い…。

アズの…匂い。

目を開けた秀は、ボーッとしながらも目の前数センチにあるアズのドアップにビックリして目がさえた。

『………。』

スー…スー…と静かな寝息に、ドキドキしたが、今日の目的はソレじゃない…と、起き上がり顔を離した。


『…なんで俺の前では笑わないんだ…』

いつも…遠くからしか見れない笑顔…。


あの男には見せてた…笑顔。




…ムカツク。



「…ん……」

アズがうっすら目を開ける。ほお杖をつきながら、それを見下す秀。

アズが慌てて起き上がり、こっちを見るのを笑って見ていた。


「…あ…いつ起きたの?」

『かなり前に』

「…本当!?ごめんなさ…」

『別にいーよ』

「?」

『…どーやって襲おうか考えてたから』

「!」

秀は楽しそうに言ったが、アズはビックリして、イスごと秀の机から離れた。

『…ってのは嘘で…』

ココからが本題。

『昨日…電話の後、何してたか聞きたくて残れって言ったんだ』

「…え?」

嘘ついたら…許さない。

アズの迷ってる様子をジッと見ている秀。

『…正直に言え』

「!」

アズがゆっくり秀の目を見てきた。秀はまっすぐアズを見た。

…会ったこと隠したりしたら…

…許さない。



「い…言ったら…怒らない?」

煮え切らないアズの態度に、秀のイライラもつのる。

『…怒らない』

…わけないけど。

すでに顔が怒り気味。

すると、アズがゆっくり話しだした。

「…外にいたら…恭平さんから電話あって、ちょっと…一緒にいた」

…認めたな。

『………。』

秀は、無言だった。



「怒っ…た?」

アズは、不安そうに聞いてきた。
秀は、イスの背もたれにだらしなく寄りかかり、つぶやいた。

当然…

『怒った…』

「!」

アズは、どうしよう…と困り顔。

でも…あっさり言うってことは何もなかったのか?



「何も…されなかったし。恭平さん、いい人みたいだし…」

『!』

いい人!?お前…っ勝手にキスされただろ!

あんなに嫌がってただろ!?

しかも、また名前…!

アズの言葉に、ついに恭平が怒りを表に出した。
机をグーでたたいた。

『…甘いんだよ!お前は。だから簡単にキスなんかされんだよ!』

アズがビックリして硬直していると、

『スキ見せてんじゃねぇよ』

「!」

少しは危機感持て!

すると、アズは言い返してきた。

「恭平さんは、ちゃんと謝ってくれたもん!私、スキなんて見せないもん」

『…へぇ』

こんな…スキだらけのくせに。

秀は、更にイライラした。また、恭平を名前で呼んだ。

胸の中でもやもやするようなイラ立ちを、外を見ながら言った。


『恭平、恭平ってうるせーんだよ!』

「!?」

急に秀が身をのりだした。驚くアズの視線が、すごく近い。顔も近い。

『…キスしろ』

「!」

イラ立ちから…冷たい言い方しかできなかった。

『しなきゃ…お前とは終わりだ』

アズは返事に迷っているようだ。

さぁ…どうする?


好きなら…わかるよな?

朝に他の女とキスした唇…

嫌だよな?嫉妬するよな?

アズは涙目でギュッと目をつぶってキスをした。
秀は、唇から伝わるアズのぬくもりに酔いそうだった。
嫉妬の涙とぬくもり。

震える唇を離すと、唇をぬぐったアズ。涙が止まらない。

『…何?その態度』

秀は見下すようにアズに、冷たく言った。
そんなことをされたら、当然ちょっとムカツク。

アズも小さな声で言った。

「ヒドい…」

そこで、みんなが戻ってくる声がしたので席に戻ったアズ。

それを黙って見ていた秀。

ヒドい?何が?

お前は俺が好き。

だから、キスさせてやった。


嫉妬…させてやったんだ。

この程度で…俺の怒りが治まると思うなよ。




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