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Cross Road
遠くで見るモノ(秀)




「いってらっしゃいませ」

出かけようとする秀に、依緒が声をかける。


『依緒…お前はいいのか?』

秀は、依緒に話しかけた。
依緒はその一言で、秀が隆史のことを言ってるとわかったようだったが、仕事の事務的口調のままだった。

「…私が何かを望んでも仕方ありません。ただの使用人ですから…主(アルジ)の命令は絶対です」

『…それでいいのか?』

「…はい。隆史様は…もう誰も愛さないんだと思います」

『そうか…』

「はい」

最後、依緒は苦笑いだった。でも、秀は何も言えなかった。



依緒…

いつも俺の都合で勝手なことばっかりした…。



お前が俺に抱かれてるとき…

時々…
俺の中にタカ兄を見て…

淋しそうな目をしてた。


お前は…誰にも愛されなくて…平気なのか?


俺は…気が狂いそうだった。

実際、狂ってた。


俺を好きだという女は…俺の外見と体が好きだった。

俺が好きなわけじゃなかった。



だからこそ…

依緒…お前に幸せになってほしいって…

心から思えるんだ。



車でアズの家に向かっている途中、歩道を歩く人を窓から眺めてずっとボーッとしていた。


酔っぱらいのサラリーマン3人組に、デート中の男女、明らかに高校生以下の女…いろいろ見えた。


アズの家に近づき、大通りから路地に入ろうとした時、

『…ちょっと待て!車停めろ!』

「は…はい」

秀は、結構無理やり車を停めさせた。運転手も焦っていた。
ちょっと急ブレーキ。

秀の視界に…驚くべきものが飛び込んできた。

『アズ…』

アズの家の近くの喫茶店の中で、アズは楽しそうに笑っている。
その向かいに座ってるのは…見たこともない男。

まさか…あれが恭平!?


秀は笑い合う2人を見たくなかった。

俺には…笑顔なんて見せないくせに…。


『車…出してくれ』

「はい…」

『行き先は…』








「秀君…来てくれたんだ」

大きめの玄関の扉から飛び出してきたのは…

「こんなにすぐ会えると思わなかった」

純花だった。秀はニコッと笑うと、純花の腰に手を回して家の中へと歩いた。

「また…Hしてくれる?」

純花は可愛く頼んだ。2人はほとんどセフレ状態。

『…いいよ』

「やったぁ!パパとママ…今日いないんだ〜」


アズが…他の男に笑顔を見せていたことに腹が立って仕方ない秀は、純花に会いにきた。



何であいつの前では笑うんだ…

俺のコト好きなら…何で笑わない…!



「あっ…あぁ…ん、秀く…激しいよっ…」

家のリビングの電気も点けずに、ケモノのように本能のまま抱き合っていた。
散乱する2人の服。


アズ…お前は俺の何が好きなんだ…?


結局…見た目なのか?

それとも…


「あ…ダメ!もうイッ…イッちゃうよぉ…」

『もう?まだまだこれからだよ』

クスクス意地悪に笑う秀。

…さっきの喫茶店でアズの笑顔を見て、心が痛んで…何か心にすき間を感じた。
それを純花で埋めようとしたが…


何で…

何で…こんなに足りないんだ!

すき間は全然埋まらず、痛みはどんどん増した。

昼間アズを抱いたコトを思い出すと、今している行為に吐き気さえした。



…てか、俺様が振り回されてどうする…。


なんかムカつく。




アズ…

お前の気持ちがどれだけのモノか…

試してやろうか…?




「あ…スゴ…純花…気持ちイイの」

『…へぇ』

騎乗位で挿入中。

「秀君とのH好きなの…大好きなの〜」

『……っ…』

「だから…激しくしてぇ」

純花の声はエロい。
だが、秀はもう明日のコトしか考えてなかった。






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あきゅろす。
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