[携帯モード] [URL送信]

結婚した男U
husband and wifeC



「茜とは何もなかった」

「!」

そう言って渉は、南美をベットまでお姫様抱っこ。
ふわふわした感覚に南美はドキドキした。









「渉くん」

茜は1人残って片付けをしていた。

「悪いな…茜。南美は何してるんだか」

渉の口から南美の名前が出ると、茜はリビングから空き缶を持ってきた渉に正面から抱きついた。

「………。」

「…何のつもりだ…?」

「うち、渉くんが好きやもん」

渉の服のボタンに手をかける茜だったが、

「…やめろ」

渉は空き缶を床に捨てて、茜の手を止めた。

「ええやん。渉くんやってうちのこと嫌いやないやん」

「南美が帰ってくる…」

「それなら心配いらんよ」

「!?」

茜はクスクス笑った。

「あのコが言いだしたんよ」

「!」

「せやから何も気にせんと…うちを抱いて」

茜がキスをしようと唇を近づけてきた。

「あのコとはキスもしてへんって…」

「!」

渉はそれを交わして茜を突き放す。

「…早く帰れ。南美を探してくる」

「何で?何でなん?優花さんと付き合っててもうちを抱いてくれたやん。同じやんか」

渉は外へ出る支度をしてから茜に言った。

「…違うな。俺はもう結婚した」

「そんなん紙キレ一枚の話やん」

「それに…」









優しくベットに降ろされて、渉が上に覆いかぶさる。

「昼間ごめんな…嫌な思いさせて…」

「!」

渉が茜にキスされたことを謝ってくれた。

「もう二度とないようにするよ」

「でも…そしたら渉さんが…」

南美がうつむく。
渉には結婚することで、何かを我慢してほしくなかった。

「南美がいるだろ…?」

「!」

南美は顔が真っ赤になる。

「で…でも…私…渉さんのためなら頑張るけど…きっと足りないよ」

渉が髪の匂いを嗅ぐ。
渉との距離が急に近づいたので戸惑う南美。
それだけでたまらなくドキドキする。

「だって…渉さん、私を抱いてくれたけど…気持ちよくなかったんでしょ?」

「!」

「だから…2回目がなかったんでしょ…」

南美が潤んだ目で渉を見つめた。

「渉さんがいくら浮気しても耐える自信はあるよ」

「!」

南美が言うと、渉は南美にキスをしてきた。

「…ん…」

唇が離れて、渉が見つめてくると、たまらなくドキドキした。

「南美は…少しも自分の気持ちを俺に見せてくれないよね?」

「え…?」

「好きでいてくれるのは…痛いほどわかるけど…」

渉が南美の頭をなでる。

「全部、何もかもが俺のためで…俺の気持ちを考えててそれを優先してくれてる」

「………。」

「それは嬉しいよ。嬉しいけど…俺たちはもう夫婦なんだから…自分の気持ちをそんなに我慢するな」

「!」

「俺は特に鈍感だから…言ってくれないとわからない」

クスッと笑う渉の手がほほに触れるとドキッとした。

「南美の本音を…言ってごらん?」

「!」

渉の指が唇をなでると、南美は真っ赤になる。

「い…言えないよ」

「いいから…本音は?」

渉の声が優しくてつい甘えたくなってしまった。

「ほ…本当は…」

「うん」

「……っ…」

南美は恥ずかしくて目をつぶりながら言った。

「渉さんに愛されたい」

「!」

「渉さんに誰かを触ってほしくない。誰も触らせたくない…」

南美はゆっくり目を開けて、真っ赤な顔で渉を見つめた。

「…でも、渉さんを独占しようとして…嫌われたくない。それだけは嫌」

「南美…」

「でも…そんなの…」

南美がうつむこうとすると、渉が南美の唇を唇でふさぐ。

「!」

今まで全然したことがなかったキスを、今日だけで何回したんだろう。

「………。」

南美がおとなしく渉を見ると、渉が優しく笑った。

「南美は…少しも俺を頼らないだろ?」

「え…?」

「迎えに来てとか…寂しいとか…言えよ」

「そんなの…迷惑かけたくないもん」

すると、渉がまた頭をなでる。今までになく優しい渉に、南美はたまらなくドキドキした。

「迷惑じゃないから」

「!」

「頼りすぎは嫌だけど、頼ってほしいし、本音も言ってほしい」

「渉さん…」

「そうやって意見をぶつけて、それでも解決策を探して一緒にいるのが夫婦じゃないのか?」

「!」

南美は渉の言葉に涙が流れた。
渉は夫婦としての2人のことを、南美が思う以上に考えてくれていた。

「…泣き虫」

「だって…渉さんが泣かせるようなこと言うから…」

南美の涙をぬぐってくれる渉に南美は抱きついた。

「…渉さん…渉さん…」

すりよるように抱きつくと、

「南美…」

渉も同じように抱きしめてくれた。
こんなに幸せな気分になれる日がくるなんて、南美は思ってなかった。

それだけに今は嬉しくて仕方がない。

「私は…渉さんが好き」

「!」

抱きしめる手をゆるめると、南美と渉は見つめ合う。

「初めて聞いたな…」

「え…?」

渉がテレて南美の上からどいて、ベットに寝た。
南美は渉の顔が少し赤くなっているのに驚いた。

「言葉にして言われたの」

「!」

渉は恥ずかしいようで、顔を腕で隠しながら言った。

「すげー幸せな感じ」

「!」

渉にそんな風に言ってもらえて、南美も嬉しい。

「こ…こんなので喜んでくれるなら…毎日でも…」

南美がテレながら言うと、渉が少し子どもみたいにムッとしながら言った。

「また俺の気持ち考えただろ?」

「だ…だって…」

南美はうつぶせになり、頭だけをあげて渉と話した。

「渉さんが幸せなのが…私の幸せだもん」

「!」

「だから…今は私も幸せ」

南美が笑うと、渉が南美の首に手を伸ばして抱き寄せた。
あおむけの渉の胸に耳をあてて、抱きしめられて、南美は幸せだ。

「…ダメだ」

「?」

渉の心臓の音を聞いて、南美は安心して少しぽーっとしている。
渉が南美を抱きしめたまま言った。

「社長と…お義父さんと約束したんだけどな…」

「お父さん…?」

「あぁ…」

渉の胸から耳を離して南美は少し起き上がって渉を見た。
渉が少し笑った。

「大学卒業までは…南美には手を出さないって」

「!…お父さんってば、そんな勝手なことを!?」

「…いや、当然のことだ。南美が心配だったんだろう」

「?」

「すぐ別れたり、結婚生活が嫌になったときに、きれいなままの方がいい」

南美は、父のせいで渉が触ってくれなくて悩んでたんだ!と少しムッとした。

「だから…もう約束破らないつもりだったんだけどな…」

「?」

軽く頭を抱える渉。

「南美が…あんまりかわいいことばっかり言うから…つい…」

「え…」

渉にかわいいって言ってもらえたことが、他の誰に言われるより嬉しい南美は、顔が真っ赤になっていく。

「我慢できそうにないかも…」

「!」

「はぁ…」

渉がタメ息をついた。

「なんかガキみたいだ。いい大人なのにな…」

南美は、クスクス笑う渉の唇にそっとキスをした。

「!」

唇をそっと離して、驚く渉を見て南美は言った。

「私は…渉さんに会えなくてこの1ヶ月…どれだけ寂しかったか…」

「!」

「渉さんが…半年近く全然触ってくれなくて…どれだけ恐かったか…」

「南美…」

「だから…渉さんが嫌じゃなかったらで…いいから……その…っ」

南美がポロポロ泣くと、渉は起き上がり、南美を組み敷いた。
見つめていると、南美がどれだけ自分を好きかが渉にはよくわかった。

「南美…」

南美は今まで渉が出会ったどの女とも違った。
何がほしいとか、どうしてほしいとか言わない。尽くしてくれる。
でも、渉はちゃんと自分をたまらなく欲しがってほしかった。

「…だから?」

「…っ…恥ずかしいよ。こんなの言っちゃいけない…」

「言わなきゃ…何もしない」

「!」

耳元でささやかれて、南美は体がビクッとして、ゾクゾクした。

「あ…っ、渉さんが嫌じゃなかったら…」

「何?」

「少しでも…したいなら…抱いて…ください」

南美の顔は真っ赤だ。
純粋な南美を見ると、渉はどうしてもからかいたくなってしまう。
童心をくすぐられる。

「嫌…って言ったら?」

「!」

南美は驚き、ポロポロ泣いた。

「そっか…ごめんなさ…私ったら図々しい…」

それでも笑おうとする南美はいとおしい。

「ごめん…嘘。俺だって欲しくてたまらないよ…」

「!」

南美がまたさらに泣きそうになる。

「…本当?」

「本当。毎日…そう思ってたよ」

「ふ…ぇっ…」

大泣きする南美の涙にキスをして、抱き合った。





「でも渉さん…茜さんをどうやって納得させたの?」

「!」

南美がふと聞くと、渉はテレていた。

「まだ秘密…」

「?」







「紙キレ一枚の話やんか」

そのあと、渉は茜をまっすぐ見て言った。

「それに…南美を失いたくない。誰かに対してそう思ったのは初めてなんだ」

「!」

「俺は…南美を愛してる」

南美がこの言葉を聞けるのは、もう少し先の話。

【END】


[*前へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!