[携帯モード] [URL送信]

結婚した男U
husband and wifeB



「中西健(けん)いいます。今さらやけど、よろしゅう」

南美に一通り自己紹介してくれた。
すると、最後に茜。

「茜です〜。渉くんとは同期です」

「!」

そう言いながら、茜は渉と腕を組んだ。
最近、そんなに近くで渉に触れていない南美は、心が痛んだが、それでも笑った。

「よろしくお願いします」








夕方から2時間くらいでみんな結構飲んだ。

「水野〜おまえなぁ〜」

中西の説教が始まる。
山田が笑いながら聞いている。
なんだかみんな楽しそう。
そんな中、渉と茜がいないことに気づいた南美。

少し嫌な予感がしつつも、南美は渉を探した。

「……やもん…」

茜の声が洗面所から聞こえた。
すると、渉が洗面所から出てきたので南美は壁の陰に隠れた。

「そんなん言わんといて」

「………。」

「うちはずっと2番目でええって思ってた。でもそれは相手が優花さんやったから…」

南美は壁の陰で、聞かない方がいいのでは…と思いつつも足が動かなかった。

「あの女やったら違う!納得できんよ…」

「!」

妙な沈黙。
南美は泣きそうだった。絶対壁の向こうで渉と茜はキスをしている。

「南美ちゃん?」

「!」

晴美が声をかけてきてビックリした南美だったが、流れそうな涙をぬぐった。

「どないしたん?」

「…ちょっと気分が…」

「南美!?」

話し声に気づいた渉が南美のそばに。

「いつから…いた?」

「………。」

南美は渉の目を見れなかった。それでも笑った。

「今だよ…」

本当は逃げ出したい。言いたいこと全部言ってしまいたい。
でも、そんなこと言って渉の重荷にはなりたくない。

「みんな渉さんのこと待ってるよ」

「あ…あぁ」

渉がリビングに行くと、南美から笑顔が消えた。晴美も戻った。
茜が見下すように南美を見ていた。

「…あんたなんかに渉くんは渡さへんよ」

「!」

「渉くん、うちのキス拒まんかった…あんたじゃもの足りんちゃう?」

南美はズキッと心が痛む。

「お互い満足せぇへんのに一緒にいる意味あるん?」

茜は子どもに話すように話してきた。
南美は茜の話し方にムッとしたが、茜の言ってることは間違いじゃない。
そうずっと思ってた。


「私…結婚しただけで幸せだから…」

「!」

「そばにいてくれれば…いいから…」

嘘だった。本当は渉に愛されたい。

「私は…女として魅力ないから…私には渉さんを縛るようなことはできないから…外で何しても平気です」

南美が泣きそうになると、茜はフンと鼻を鳴らす。

「張り合いないやん。せやったら今夜、うちと渉くんを2人きりにして」

「え…!?」

「うちが渉くんを満足させてみせる」

「………。」

南美は動揺していた。
渉が誰かに触るなんて嫌だ…でも、渉は自分を求めてはくれない。

「できんの?せやったら軽々しく平気なんて…」

「…わかりました」

南美が涙をのみながら言った。

「10時まで戻りません」

「…ええの?」

ちょっと驚く茜。

「だって…」

南美はポロポロ泣いた。

「渉さんは私とキスもしてくれないもん…」

「!」

「知らないうちに女の人と会うよりずっといい…」

南美はそのまま部屋からバックだけを持って、茜に頭を下げた。

「渉さんを満足させてあげてください」

すると、ちょうどお開きになりそうだったので、中西たちが帰ろうと玄関に来たが南美は飛び出していった。

「あれ?南美ちゃんは?」

「うちに後始末頼んで買い物やって〜」

「そっか…手伝う?」

晴美が言うと、茜は笑顔でみんなを帰らせた。

「ええよ。うちが頼まれたんやもん」








「………。」

フラフラあてもなく歩いた。あんまり遠くに行くと帰り道がわからなくなるので、近くのコンビニへ。

しかし、立ち読みをしていると、茜と渉が何をしているか考えてしまうので、やっぱり外を歩いた。

「お?キレイなお姉ちゃんやな〜」

色々勧誘をされてウザいが、南美は止まることなく歩いた。

「…触らないでくださ…」

腕をつかまれて、振りほどこうとすると、ホスト風の男が言った。

「なんや寂しい顔してんで?パーッと遊んで行こ〜や」

「!」

振り向かせたい渉は、いつも他の人を見てて、どうでもいい男にからまれた南美は泣きそうだった。
渉がいい。渉じゃなきゃダメなのに…。

「放し…!」

振り払えなかった腕が急に放された。
すると、背中には渉のぬくもり。少し息切れをしている。

「…連れだ。悪いな」

渉が言うと、ホスト風の男が去っていく。

「そっか。お迎えきてよかったなぁ」

最後まで陽気な感じはなんだか憎めない感じがした。


「…渉さん?」

無言のまま渉は腕をつかんでアパートへと歩いた。
腕をつかむ力が強くて痛い。

アパートに着くと、渉は手を離した。
そのままリビングへ。テレビをつけてテレビを無言で見ていた。

「………。」

南美は渉が怒っている感じがして、どうしたらいいかわからない。

「あ…片付けしなくて…ごめんなさい」

「茜がほとんどしていった…」

「!」

その後のことは考えないようにした。

「そう…」

「………。」

変に沈黙があり、気まずい。南美は明るく振る舞った。

「お風呂は?出る前にくんでいったんだけど…」

「入った」

「そっか…じゃあ、私も入ろうかな」

南美はパジャマを取りに部屋へ。
一応、渉の寝室に荷物を置いていたが、リビングで寝ようと南美は思った。






「ふぅ…」

お風呂をあがった南美はタメ息。
タオルで体をふいて、体に巻いたまま、紙袋に入ったままの下着を見た。

「ムダになっちゃった…」

ボソッと言うと…

「何が?」

「!」

後ろから渉の声がして、慌てて背中に隠して振り返る。

「何で…!?」

「何回も呼んだけど?」

「え?本当?」

「時計…洗面台に忘れたから。防水じゃないし」

渉が時計を取る。
ついでに南美が背中に隠した紙袋も取る。

「あ…ダメ!」

「隠すと見たくなるよ」

「なんでもないから…」

南美が必要に取り返そうとしたが、渉が中を見た。

「!」

固まった渉から紙袋を奪い返す。
南美は見られて恥ずかしい。きっと笑われる。

「…笑っていいよ」

「!」

「どうにかできるのなんて…下着くらいしかなかったんだもん」

南美が涙ぐむ。

「でも…もういいの…」

下着を取り返そうとすると、渉がキスをしてきた。






「…ん…わ、渉さん!」

ビックリした南美は、渉を突き放した。顔が真っ赤になる。
すると、渉が耳元でささやく。

「ちゃんとつけてきて…」

「!」

紙袋を返されたが、恥ずかしくて渉の顔を見れない。

「どこに?」

「俺の寝室」

「!」

さらに真っ赤になったが、よく考えたら…渉は茜と何かあったはずだ。

「…いい…床で寝るから」

「!」

「渉さんだって…今日は疲れたでしょ?無理しないで」

「…茜のこと?」

「!」

思わず渉の目を見た。
すると、渉は無表情で言った。

「そのことでも話がある…寝室で待ってる」

「!」

渉はそのまま寝室に行った。南美は混乱していた。

渉と茜がいた寝室には行きたくない。話だって絶対いい話ではない。

「………。」

茜と抱き合って、南美は渉が自分が嫌になってしまったのでは…?と不安になる。

それでも下着は真っ赤な下着しか持って来なかったし、パジャマを着て渉の寝室へ。

コンコン…とノックをしてから入ると、渉がテレビを見ながらベットで寝ていた。

「こっち…」

渉がベットをポンポンたたく。

「ここじゃ…ダメ?」

南美はドアの前に立ったまま。渉のベットには近づきたくなかった。

「ダメだ」

「!」

渉がベットから降りて、南美の手をつかむと、南美は抵抗した。

「嫌!」

「!」

床にうずくまる南美。渉は驚いていた。

「…渉さんが誰と何しても平気だよ…」

南美の声が震えた。

「でも…」

「………。」

「同じ空間にいたくないの」

「!」

「茜さんを抱いた空間に…いたくない。思い知りたくないの」

南美がポロポロ涙を流すと、渉はかがんで南美のほほを軽くたたいた。

「!」

南美が驚くと、渉は今までになく穏やかな声で言った。

「…余計なこと考えるな」

「!」

「余計なこと…するな」

渉が言うと、南美はまたボロボロ泣いた。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!