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結婚した男
MarriageA



今日は日曜日なので、起こさずにいたら、お昼近くに渉が起きてきた。

「…おはよう」

「……水…くれる?」

「はい」

渉はなんだか調子が悪そう。
水を飲むと、グッタリする。

「カゼですか?熱…あるんじゃない?」

「あぁ…そうかもしれないから…今日は寝てる。何もいらないから…」

「でも…」

「おやすみ」

「…!」

渉はそのまま部屋に行ってしまった。
残された南美は渉が心配でたまらなく、そわそわしていた。







いらないと言われたが、やっぱり渉が心配でおかゆや果物を用意した。

「…起きてますか?」

ドアをノックして南美が言った。

「おかゆ…作ってみました。少し食べてみませんか?」

「…いい」

「でも…」

「明日食べるから…」

元気のない渉の声に、南美の心配は限界だった。

「いらないって言われても心配なんです!心配するなって言うんだったら…心配になるような声…出さないで」

「………。」

「…心配でたまらないの。お願いだから…1回でいいから…ココ…開けて…顔見せて…っ」

南美が泣きそうになりながら言うと、初めて渉が自分からドアを開けてくれた。
すると、渉がそのまま倒れそうになり、南美の肩につかまった。

「すごい汗…熱上がってるんじゃ…?」

「…寒気はなくなったから平気」

渉はベットに寝る。
南美は部屋の電気をつけて渉の部屋に初めて入った。
真っ白な壁に黒やグレーの家具や家電。

「おかゆ…食べれますか?梅がゆです」

「…食べる」

渉がゆっくりとおかゆを食べるうちに、

「替えのパジャマココですか?」

「うん…2段目の引き出し」

南美はクローゼットから着替えを出して、洗面所からタオルとお湯を持ってくる。
南美が戻ると、おかゆは半分、果物はちょっと食べて水を飲んでいた。
それを見た南美はちょっとホッとした。

「…着替えてから寝て。そのままじゃ、カゼひくから」

「…わかった」

「それで…あの…」

「?」

南美は少しテレながら言った。

「体、ふかせて…」

「!」

「そのままじゃ、着替える意味ないもん」

「………。」

南美は、まともに渉の体が見れるか不安だったが、今はそれどころじゃない。
渉は少し迷ってから、上着を脱ぎながら言った。

「わかった…頼む」

「!」

上半身裸の渉の体を初めて見た南美は動揺したが、さとられないように目線を下に。

「………。」

黙ってふきながらも、南美は渉の体に見とれた。
太い首に、ガッチリして自分とは全然違う肩幅と腕の筋肉の付き方。

人の肌がこんなにドキドキするものだと初めて知った南美。

時間がすごく長く感じた。
すると、ふいに渉が南美の腕をつかむ。

「あ…」

驚いた南美が渉を見たが、今まで体をふいて、真っ赤になった顔を見られた。

「ご…ごめんなさ…」

うつむこうとすると、渉にベットに押し倒された。

「…っきゃ…っ!」

驚く南美だったが、渉に手を握られてドキドキした。
でも、恥ずかしくて顔は赤い。

「俺の前で…無防備になるな」

「え…?」

「…守らなきゃいけないはずのものを…奪うことになる」

渉はそう言って、南美を起こして着替え始めた。

「どうして…?」

「!」

南美は渉に横から抱きつく。

「私たちは夫婦でしょ?普通でしょ?私は…そうなりたいよ」

「………。」

南美が言うと、渉は南美の肩をつかんで、向かい合ってから言った。

「また…今度な。今は本調子じゃない」

「は…はい」

南美は嬉しくて笑顔で返事をした。
渉が初めて少し近くに感じた。








次の日、渉は元気になっていつも通りに出勤。
お弁当も持っていく。
普通に出ていったが、今日は渉の誕生日。
南美は、ルカに買い物に付き合ってもらう。夕食の下ごしらえは朝に済んでいる。

「これはー?」

ルカがネクタイを持ってくる。

「いっぱい持ってるもん」

「んー…29歳の欲しいもんなんて知らないよ」

「そうなんだ…よね」

南美はもうお手上げ。紳士服売り場すらあまり来たことがない。

「あ…これは?」

ルカが黒のキーケースを取る。

「南美はピンク買っておそろいにしちゃえば?」

「!」

おそろいなんてしたことなくて、南美は不思議と気持ちが高まる。

「それいいかも…」

「旦那様、車も乗るんでしょ?だったらあって困らないよ」

「…決めた!ルカの意見採用〜」




買い物を済ませて、駅までの道をルカと歩く。
すると、反対車線の路肩に駐車した渉の車。

「あ…」

南美は一瞬、声をかけようとしたが、助手席から降りたのが女の人だったのでやめた。
結構、親しい間柄な雰囲気の2人はそのままレストランへ。

「あれ…?今のって南美の旦那じゃない?」

「!」

ルカに言われて、慌てて笑顔をつくった。

「ち…違うよ。私も似てると思ったけど、全然違った」

「…南美…」

本当は、息がつまって苦しいほどだった。
いつまでも、髪の長い…渉と同じくらいの歳のスーツ姿のキレイな女の人が頭から離れなかった。






夕食を作って、渉を待った。
時間がたてばたつほど南美は嫌な想像をしてしまう。
誕生日に会うなんて…特別な関係に決まってる。

「…遅いよ…っ」

南美は泣きそうになりながら、渉の帰りを待った。



9時になると、今日は帰って来ないのでは?と余計に不安になった。

料理はすっかり冷めて、初めて作った渉が好きなチーズケーキも…冷蔵庫から出せずにいた。


すると、ガチャッとドアが開く音。
いつもなら玄関まで走るが、今日はそんな気力がない。

「!…いたのか」

ダイニングのテーブルに座ったまま待つ南美を見た渉が少し驚く。

「…遅かった…ね。ご飯…温めるね」

南美が立ち上がると、渉が背広を脱ぎながら言った。

「悪い…仕事で遅くなったから食べてきた」

「!」

南美に衝撃が走る。
夕方、レストランに入るのを見た。

「…待ってたのか?」

南美がキッチンで固まって動けないでいると、渉がキッチンをのぞく。

「どうした?」

「!」

近くで渉の声がするまで、南美は自分が泣いていたのに気づかなかった。

「何があった?」

「…やだ…ごめんなさい。なんで…」

涙をぬぐいながら、南美は笑った。
だが、心の中では別のことを叫んでいた。
ウソつき…女の人といたくせに…仕事なんかじゃないくせに。

「気にしないで…っ」

南美が泣き崩れると、渉が心配そうに近寄るが、なぜか今の渉には優しくされたくない。

「…ごめん…明日は…また元気に戻るから」

南美は急いで部屋に行き、ドアを閉めた。
鍵はないので、南美はドアを体で押さえて、そのまま座り込み、大声で泣いた。

渉がウソをつくなんて思ってもいなかった南美に、渉が浮気しているという事実は重すぎた。



渉は、南美の部屋から泣き声がすると、そっちに行こうとしたが、足に紙袋がぶつかる。

「?」

紙袋の中はプレゼントで、リボンの間に「to.渉さん」と書いてある。
渉が開けると、中には黒とピンクのキーケース。

メッセージカードには、南美の字で、

《お誕生日おめでとう。おそろいなんて嫌かもしれないから…ピンクのはお兄ちゃんが嫌じゃなかったら私にください》

と書いてあった。
渉は自分の誕生日をすっかり忘れていた。
それに気づいてからテーブルを見ると、かなり豪華な夕食。

「………。」

渉がため息をつきながら、ビールを飲もうと冷蔵庫を開けると、中には少し焼きすぎな感じのチーズケーキ。
それを見た渉は、南美の部屋に走った。

ドアを開けようとするが開かない。
渉はドアをたたいた。

「南美…ごめん…連絡すればよかった…」

南美の部屋からはもう泣き声はしなかった。
南美は声を押し殺していた。

「…いいよ…お兄ちゃんは…悪くな…っ」

「!」

「私は…お兄ちゃんが隣にいてくれれば…幸せだから…」

渉は、ドアを無理やり開けようとするのをやめた。








次の日、南美の講義は11時から。
朝、起きれないでいると、渉は1人で用意して出ていったようだ。

「………。」

リビングに行くと、渉が作ってくれた朝食とピンクのキーケースが置いてあった。

《ありがとう。嬉しかった》

メモが置いてあり、南美は嬉しくて泣いた。
もう少しだけ…渉を信じてみようと思った。






大学に行く前、渉にお弁当を作って会社に持っていく。

「こんにちは」

受付嬢に声をかけると、南美に気づいた受付嬢は笑顔で迎えてくれた。
家にも時々来ていたので、南美は話しやすい。

「南美さん、こんにちは。今日は…旦那さんに会いに来たのかしら?」

「…はい。いますか?」

南美がちょっとテレると、受付嬢は笑った。

「…連絡してみるわね」

「お願いします」



少し待つと、受付嬢が南美を呼ぶ。

「…今、会議中らしくて…」

「そうですか…」

落ち込む南美。

「長谷部くんに会いたいって…誰?」

受付嬢に話しかけた女の人。
南美はその姿に驚いた。
まぎれもなく、昨日渉といた女の人だった。

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