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狼と忠犬
「真壁がでるコメディーっぽい話」(5600000キリリク)
 その時、僕は自室にいた。
 正確にはカーテンを閉め切って、パソコンの光だけを明りにして画面を追っていた。映し出されていたのは、昨日隠し撮りした数十枚の写真。もう一人の部員に見つかれば即抹消させるそれらを、消去する前に記憶に焼きつける作業だ。

 この写真、光の加減とちょっと上がってる眉のバランスがいい!

「……み、見つからなかったら一枚ぐらい保存してても良いかな。USBを隠せば、なん、なんとか。」

 机の引き出しの裏に貼り付けていた写真入りの封筒さえみつけられた記憶が、保存ボタンを押すことを躊躇わせる。
 ぶるぶると震える指がコピーと削除で揺れていた時、玄関のインターホンが鳴った。


「悪いけど、今から一緒に来て貰えるかな。」

 遠目で見た事はある、風紀委員が2人。僕の目の前に立っていた。


*****


 強面の風紀委員ふたりを相手に僕が逃げられる訳も無く、あっさり部屋から連れ出された。
 しかも普通生徒が呼び出されるのは、第一校舎にある風紀室だ。当然そこへ行くのだとばかり思っていたら、2人は普通校舎を通り過ぎて特別校舎へ向かう。え?

 特別校舎にある風紀室は、現委員長のお気に入りで、最近は申し送りの為なのか副委員長になった瓜生君もいる場合が多い。
 ついでに言えば、悪名高い開かずの部屋が存在するのもココだ。タチの悪い生徒しか入れられる事はないという噂だけれど、万が一という事だって考えられる。

 というか、そもそも僕はどんな罪名で連行されているんだ?


 とっさに浮かんだのは、腹立たしいほどに表情の変わらない男の顔だ。
 近衛……絶対、アイツのせいだろう。



 人間に挟まれ連行される宇宙人のような状態で、一般校舎よりも綺麗な気がする廊下を、俯きながら歩く。思わず口に出る近衛への呪詛が聞こえたのか、時折隣を歩く風紀委員が気味悪げに僕を見下ろすがどうでもいい。

「失礼します。1年の真壁を連れてきました。」

 開いた扉の奥には、胡散臭い風紀委員長と僕の尊敬する瓜生君――――その斜め後方に、近衛友近が立っていた。


 やややややややっぱり、お前か!!




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