狼と忠犬
2
荷物が届いていると、寮監から連絡があり…その連絡に、嫌な予感しかしないのは何故だろう。
冬用の衣服が届いたのは先週だ。
でも俺に荷物を送るなんて、近衛さん以外にはいないし、追加?と思いつつも、正直あれ以上必要なかったりする。というか2、3枚で十分だろう?
「…………。」
受け取った小包はやはり近衛さんからで、部屋に戻って開けた俺の頭が、数秒止まった。
送られて来たのは、やはり衣服の追加のようだった。ただ、用途がわからない。
2着?入っていたのだが――茶色と、白。
きちんと上下に分かれていて着衣し易くは、なっている。が、どうしてこうもあの人が個別で送って来る衣装は色物なのか。
寒い→暖かい衣服→冬→クリスマス?この流れですか?この流れで…トナカイと雪だるま的なモチーフのジャージなんですか?!
全部箱から出して広げてみれば、まだ段ボールの底にメモが残っていた。
『部屋着』
その一言だけ。
紙切れを両手に座り込んでいると、見ていたかのように携帯が振動する。
「――はい。」
『届いたか?』
「…今、受け取りました。」
『最近、急に寒くなってきたから暖かそうな部屋着を送ってみた。面白いだろう?』
――おもしろい…
『ああ、さすがに着ぐるみはどうかと思って、機能性を重視したデザインにしたから…後で写真を送るように。』
「でも、部屋着の写真とかまでは――あ!……切れた。」
うんともすんとも言わなくなった携帯をただ見つめながら「部屋着の写メ…」と思わず呟いた。
「こ、近衛、どうしたんだよ、ソレ。」
「……部屋着です。」
俺が今着ているのは、トナカイさんジャージの方です。
柔らかそうな生地は、着心地も抜群に良かった。ごわごわしないのに保温性は素晴しく、暖かい。確かに暖かい。
後ろにはフードが垂れ下がっていて、そこに可愛らしい角がついている。
目の前で堤が何とも言えない涙目になっていたので、取り敢えず二度とこの話題に触れないようにシメる事にした。
「いだだだっっっ!!いや、でもっ、それで日影さんの所行く、ん、だろっ!痛いっ!」
「あ。」
堤に関節技を決めながら、俺は忘れていた事実に思わず、堤の関節を更に締めてしまった。
まだ、あと1着残ってるんですが…。
おわり
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