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狼と忠犬

 そのうちわかるはすぐにキタ。


 2人でそんな話をしている最中に、蒲生委員長が風紀室へ帰ってきたのだ。しかも、後ろには、いかにも連行されてきましたという風情の生徒。

 窓際の専用デスクに腰掛けた委員長は、前にやってきた生徒の不貞腐れたような態度にも笑顔で…俺の背筋が自然伸びる。


「―――で、今回で何回目だ?」
「…うっせ。」
「あ、ゴメン。よく聞こえなかった。何回目?」
「………5回目。」
「だよな。しかも、前回の反省からまだ2週間だ。3日間の謹慎と、反省文100枚…どっちがいいか選ばしてやる。」
「はぁ!?3日!?ちょ、俺そこまでやってねーしっ!」
「――はい、5日か200枚、どっちにする?」
「げ。」


 終始委員長の顔が笑顔。いつもの事ながら怖い。…ああ、まだ免疫の無い1年の様子が気になるが、今は話しかける空気じゃないんだ。悪い。


 壁の花になっている俺達は完全スルーで、追い詰められた生徒(恰好からして不良くんかな?)が、握った拳をぶるぶると震わせている。



「………蒲生…テメ―…いい加減に…「山田君。」――あぁ?」

 出鼻を挫かれた山田君。
 委員長は貼りついた微笑みを崩さないまま―――奥の扉を指差した。


「―――あっち、行くか?」



 ―――瞬間、山田君の全身が石のように動かなくなった…ように見えた。



 優に5分は固まっていたと思う。

 突然スイッチが入った山田君は、「……反省文で…。」と素直に手を出した。
 細かく震えるその手に、200枚と思われる白い原稿用紙がのせられる。

「明日提出な。」
「はぁ!?「反省室。」―――わかった…。」


 可哀想なぐらい顔色の悪い山田君は、受け取った原稿用紙をかかえて部屋を出て行く。。
 そのまま、蒲生委員長も立ち上がり、「第2校舎いってくる。」と立ち去った。



 残されたのは、俺と、1年。


「……あの…『開かずの扉』で、何行われてるんでしょう……?」
「―――聞くな。ただ、蒲生委員長が使うようになってから…格段にあの部屋のリピーターは減った…。」
「………そ…ですか。」
「お、おお…。」



 一度入ったコトのある生徒は、あの部屋には絶対戻らないというイイツタエ。もう都市伝説?いや、学園七不思議ぐらいの怪しい噂として、まことしやかに噂されているが――――その真偽は、だれも知らない。
 ただハッキリしていて、目の前の1年坊主も理解しているであろう事は。



 風紀委員長には、決して逆らってはいけないという事だ。




おしまい。

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あきゅろす。
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