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楽な方法、知りませんか。(綱元×成実)★#
それは、ある昼下がり。

取り敢えずやらなければならないことを終わらせた私は、いつもの如く軒先で書物を読んでいた。

すると、音もなかったのに髪が少しだけ揺らぐ。

「・・・トキ、また逃げてきたのか?」

そう苦笑すると、殺していた足音が普通の大きさになった。

「・・・気づくの早いんだけど」

「流石に長年一緒にいれば分かるって」

そう云うと、トキはぐでーっ、と私に抱きついてきた。

「長年って・・・」

「トキは今何歳?」

「今年で18ー」

「なら18年」

「・・・・・」

相変わらずトキは離れない。

いい年した青年がこんなオッサンに抱きついて何が楽しいのだろう。

「・・・トキ?」

「んー・・・」

背中でボソッと返事が返ってくる。

「・・・重い」

「重くないよ、俺軽いっ」

「18の男が何を云うんだか・・・」

呆れてそう云うと、

「でも俺割と少食だし?」

「その分甘味をよく食べるから然程変わらない」

「うぅ・・・・・」

正論に返す言葉なし。

「・・・少食で甘味を食べるより普通に二食のほうが甘味を食さない分軽くなるって」

「え、嘘っ」

「多分本当」

「多分って何、多分って。・・・あ、でも甘味食べれないのはヤダなぁ・・・」

「確認したことが無いからな。・・・それより、用があったのだろう?」

書物を読み終えたので、手近にあった別の書物に手を伸ばした。

その手をトキが制する。

「・・・・・?」

「・・・・・あのさぁ、ツナ兄・・・ちょっと相談乗って」





18も年が離れている所為か、よくトキは私に相談を持ちかけてくる。

それに対して、私は出来る限り最善の答えを返してきた。

・・・けれど今回は、そう簡単にはいかなさそうだった。


「楽に残酷な死に様を演出するのって、どうすれば効率的かな」


「・・・は、はぁ・・・?」

あまりに突拍子すぎて、変な声を上げる。

「ま、まさか・・・」

「あ、ううん、例えばの話。あのさ、もし今敵に城囲まれてさ、給水路も絶たれてさ。向こうに捕まったらきっと公開処刑、なら自ら切腹したほうがマシ。・・・そーいう状況だと知て」

「・・・すごく有り得なさそうな状況だな」

「だーかーらぁ、例えばだって。・・・あ、介添え人はなし、という設定で」

「・・・・・」

“有り得ない状況だからこそ現実味がある”。

きっとそのことにトキは気づいていない。

何かやったのだろうか、と思いつつ訊く。

「向こうと云うのは誰?あと、誰が対象?」

「後者は俺。前者は・・・・・、敵」

あくまで云わない、か。

「・・・じゃ、駄目かな」

昔からトキはそれなりに頭がキれる子だったから、何となく私が気づいたことを察したようだった。

「・・・いや、」

そう私が云うと、トキは少し胸を撫で下ろした。

「・・・そうだな、まず」

私が指を1本立てる。

「なるべく多量の酒を、とにかく早く呑む」

「うんうん」

頷くのを感じてから、2本目の指を立てた。

「暫くしてから、厠へ行く」

「厠じゃなきゃ駄目なの?」

「厠で無いと駄目」

「そっかぁ・・・3つ目は?」

わくわく、と云わんばかりに私を見るトキ。

私は3本目を立てた。

「最後に立ち眩みで意識を飛ばすまで厠にいる」

「梵曰く急性“あるこーる”中毒って奴だね!そしたら厠で死んで・・・って、」

あ、気づかれた。

「これ軍神の死に様じゃん!」

「今更か」

・・・尤も、戦の最中では無かったと思うが。

「注文追加!」

「ん・・・?」

矢張り不服だったようだ。

「二番煎じなしで!」

「・・・・・」

茶釜に火薬を詰めて火を付けるのは駄目ですかそうですか。

「・・・・・あ、」

「何々?何か思いついた?」

「一応。・・・絶対やらないな?」

ちゃんと念を押す。

「・・・うん、やらないよ」

しっかりと頷くのを感じると、私は再び口を開いた。

「まず、左手と右足を斬り落とす」

「それで?」

「次に、お前の糸を天井から吊り下げる」

「・・・糸ってコレ?」

そう訊く彼の手には、透明の強度がありそうな糸。

「そうそれ」

「ふーん・・・」

「高さは足がギリギリ付かないところだな、・・・・・あ、順番間違えた」

「え?」

「手や足がなかったら立てないし糸も掛けられないな。・・・私としたことが」

ふぅ、と小さく嘆息を漏らす。

「じゃぁ先に糸を掛けておくんだね、首を掛けても足が付かない高さで」

「そう。・・・そのあと、首を掛ける」

「それでもう死ねるよね」

「残酷なのを所望なのだろう?」

「ん、そーだけど」

「この後、両足と左手を根元から斬る」

「うわぁ・・・血だらけだ」

勿論此処で終わらせない。

「そして右手で腹を斬る」

「・・・残酷だ」

「まだ余裕があったらその刀で頭を貫いてもいいかもしれないな。・・・と、私が考えた方法ならばこの程度だが」

・・・尤も、人間が何処まで痛みに耐えられるか、とか、大量出血で何処まで生きられるか、とかを全く考慮しない上での考えではあるのだが。

そんなことを思いながらトキを見ると、

「・・・・・そんなに怖いか?」

ドン引きだった。

「怖いよ十分・・・俺が想像してたのよりずっと残酷だ・・・」

「それはそれは。殺人鬼さんに称讃されるとは思わなかった」

「褒めてないし殺人鬼じゃないし」

「・・・快楽殺人者?」

「ツナ兄がツナ兄じゃない・・・」

私はいつもどおりの私なのだが。

「先ほどの件だが、腹と頭を刺した際に掻き混ぜると更に効果的」

・・・想像するだけで吐き気を催してくるが。

「なにそれすごく異常」

「あと出来るものなら右手m」

「もういいありがとう!!」

そう云うとトキはバッと部屋を出て行った。


「・・・・・ははっ、」

また一人になって、静かになってから。

「トキなら、絶対やるな」

やるなやるなはやれ。

そんな考えを持つ人間だから。

今更後悔が押し寄せてくる。

教えなければよかった、なんて。

もう遅い。

今止めても、必ずいつかやるのはわかっていたから、・・・。





翌朝、とても騒がしい足音で目が覚めた。

何事かと近くの女中を問いただすと、

「・・・成実様がいらっしゃらないご様子で・・・」

「・・・・トキが・・・?」

まさか、・・・否、でも・・・・・。

こんなに早く行動を起こすとは。

ロクに着替えもせず、トキの自室に這入ると。

「・・・・・殿」

そこには、呆然と立ち尽くした殿と、血に染まった部屋、突き刺さった刀、床にはバラバラの四肢。

「・・・そ、だろ、・・・・」

そして、部屋の中央に吊られるは。

「・・・・・成・・・実、様・・・・・っ、」

昨日話してたことを少しも違わず実行した、あの青年。

「・・・・・綱元」

「・・・は、」

「・・・・・何を吹き込んだ・・・?」

「・・・・・」

何も云えない。

「・・・こんなの・・・、全然俺は望んじゃいねぇんだよ・・・・・ッ!!」

そう吐き捨てて、彼は怒りと哀しみを露にしながら去って行った。


後から聞いた話なのだが、トキは藤の大切な人を切ったそうだ。

誰か、までは分からなかったが、分かろうと思わなかった。

その結果、トキは何らかの処遇を受けることに決まったようで、それが嫌だったトキは、その前に自ら命を絶った、・・・・・。


静かに合掌し、私もその場を去ることにした。







青狼様より相互記念リク
綱元×成実

毎度のことですが仕事遅くてすみません・・・
ツナの性格がイマイチ掴めなくt(ry

リクありがとうございました!
これからも宜しくお願いします^^

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