Short
替。(佐助×政宗?)
ちょっと一度こういうのをやってみたかった。
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「行きまするぞ伊達政宗ぇぇぇ!!」
「こっちも行くぜ真田幸村ぁぁぁぁ!!」
こんなの日常茶飯事だ。
武田と同盟を結んだ今、お互いの城に行ったときにはよくやり合っている。
お互いの力が互角だから、こんなにいい鍛錬相手はいない。
―ガキンッ
「やりまするな、政宗殿・・・・ッ」
「Ha・・・ッ、アンタもな、真田・・・!」
ぜぇ、ぜぇ、と肩で息をするお互いをニヤリと笑い、パッと一度後ろに引く。
「今日は、次であがらねぇか?」
「了解にござるッ!!」
タッ、と地を蹴る。
それと同時に真田も俺に向かって走り出した。
そして、アッという間に目の前で顔を合わせて、それで。
「旦那ッ!!」
「政宗様ッ!!」
そのお互いの従者の叫び声を聞いて・・・・・。
俺は、意識を飛ばした。
☆
「・・・・・っ、う・・・・・」
「あ、旦那!」
「・・・っ、さる、・・・・・?」
そっと身体を起こす。
頭が痛い。ズキズキと響く。
「旦那、よかった!!俺様が分かる!?」
「・・・・・」
小さく頷く。
すると、俺の顔をを心配そうに覗き込んでいた佐助が、安堵の表情を浮かべた。
「・・・俺は、一体・・・・・?真田と、鍛錬して、・・・・・」
「・・・・・旦那?」
今までの表情が変わる。
「・・・旦那、やっぱり変なところ打った・・・?」
「・・・・・Ah?」
何のことだろう。俺は変なことを云っていない筈なのに。
「別に、変なことは云ってねぇだろ・・・」
「いや、すっごく変なこと云ってると思うけど」
「・・・・・?」
そこでキョロキョロと周りを見回す。
・・・よく考えたら、この場で俺を心配するのは小十郎じゃないか?
心配はするとしても、こうやって身の回りのことをしてくれるのは佐助じゃない筈だ・・・・・
・・・個人的にはそれが嬉しいが、アイツがそんなのを許さない筈。
下手したら、佐助が俺の部屋に入ってくるだけで極殺modeになりそうだし・・・
「・・・何で?小十郎は・・・?」
「頭打ったときにやっぱり変なところ打ったんだね!?何で俺様じゃなくて右目の旦那を旦那が呼ぶの!?」
・・・早口言葉みたいだ、とボンヤリ思ったけどそれどころじゃなさそうだ。
ソレと同時に、とんでもない考えが脳裏を過ぎる。
・・・・・もしかして、否、もしかしなくても、真田と入れ替わった・・・・・!?
サッと青褪める俺を見て、取り敢えず寝てなさい、という佐助に促されて、再び横になるのだった。
☆
俺の意識が戻ったときにはもう夜だったらしく、辺りは真っ暗で、灯が燈されていた。
「本当俺様心配したんだからね?旦那も竜の旦那も倒れちゃって!!」
「・・・・・」
「あちらさんも意識が戻ったらしいしね。ま、安静にしてろって諫められてるらしいけど」
「・・・そりゃそうだろ・・・・・」
・・・真田のことだ、きっとその内小十郎の目を掻い潜って素振りとかするんだろうな・・・
・・・・・その場合って、刀と槍とどっちを使うんだろう。
俺もだけど・・・・・
「・・・旦那、やっぱりおかしいよ」
「・・・・・おかしくない」
「・・・まるで、竜の旦那みたい」
「・・・・・ッ!」
その何気ない一言にビクッと反応する。
けれどもそれに気づかなかった佐助は、
「まさかねー」
と、ヘラリと笑った。
・・・気づいて欲しかったのに。
でも、自分から云う勇気はなくて。
「・・・・・だろう?俺が“政宗殿”なわけがないだろう?」
「ですよねー。気にしすぎだよね」
「うむ」
只、characterを作ることに徹することにしたのだった。
☆
俺が床に伏せている間(俺自身は大丈夫だったのだが、佐助に寝てなさいと未だ云われている)、佐助は一度も“政宗殿”の元に行かなかった。
逢いたいだろうに。
でも、俺としては嬉しかった。
“政宗”以外の人に佐助のあんな優しい顔を見せたくない。
・・・例え、“政宗殿”でも。
そんなの、絶対嫌だ。
だから、夜は必ず佐助の手を握って寝た。
「子供に戻ったみたい」
そう佐助は笑ったけど、俺は笑えなかった。
事実、子供に戻ってるみたいで。
「・・・気弱になったのだ」
「あは・・・そうみたいね」
苦笑いをする佐助に心の中で謝罪する。
Sorry、俺の我侭の所為で・・・・・。
「別にどこにも行かないよ」
「・・・・・」
そう云って俺の頭を撫でる。
いつもこうやってるのだろうか。
俺じゃない、“真田”に。
「・・・・・ッ」
涙目になったのを隠したくて、俺は顔を枕に埋めた。
何でこんなに泣きたくなるんだろう。愛しい人がこんな近くにいるのに。
☆
「・・・何か云いたいことがあるんでしょ?」
そんな俺をしばらく撫でてくれてたあと、少し落ち着いた俺を見てそう云った。
「・・・・・?」
「云いたいけど云う機会を逃した・・・そんなことがあるんじゃない?」
「・・・ある・・・・・」
「云って?隠し事されると辛い」
「・・・・・信じてくれる?」
「今まで旦那を信じなかったことがあるみたいな物云いだね、それって。ちょっと傷つく」
「・・・・・すまぬ・・・」
両目で佐助を見る。
「・・・・・あの・・・」
「なぁに、・・・“政宗”?」
「・・・・・!」
久しぶりに云われた、その名前。
「・・・さす、け・・・・・?」
「違ったらごめん。・・・でも、違わないでしょ?」
「・・・・・いつから、・・・」
「結構前」
クス、と笑う佐助に、ぽかん、と口をあける俺。
「だって旦那と全く違うんだもん。流石に解るって」
「・・・・・Shit・・・」
「俺様を嘗めないでね?外側が何であっても、中身を当てるのは容易なんだから」
特に政宗なら尚更ね。
「・・・・・ッ・・・」
必死になってた俺がまるで馬鹿みたいだ。
・・・否、馬鹿そのものか。
「佐助ぇ・・・」
ギュッ、と佐助に抱きついた。
「政宗?」
「・・・・・」
「いつも以上に甘えん坊さんじゃない」
「いいんだよ、別に・・・・・」
いつまでもこうしてたい。
そう思って、更に腕に力を入れたその時。
「・・・政宗、ちょっと離れたほうがいいかも・・・」
「Ah?」
「・・・・・招かれざる客がいらっしゃったご様子なんだけど」
「・・・・・」
パッと布団に潜った。
その直後、ズダダダダ、と騒がしい足音がしたあと、
―スパーン!
いい音がして誰かが入ってきた。
「政宗殿っ!!」
「・・・・・竜の旦那ー・・・、大丈夫?・・・っていうか、旦那寝てるから黙って煩い」
折角のいい空気をぶち壊してくれた“政宗殿”にご立腹の佐助。
「・・・佐助?」
「何で竜の旦那が俺様を下の名前で呼ぶのよ・・・馴れ馴れしくしないでくれる?」
いつも以上に棘っぽい。
布団の中で笑いを噛み殺すのに必死だ。
「・・・そ、そーりぃ、猿飛・・・さ、真田の様子はどうだ・・・?」
「まぁぼちぼち。良くもなく悪くもなく。だから叩き起こすのは止めてね。まだ回復してないから」
「おーけぇ、・・・邪魔したな」
そう云うと、“政宗殿”は去っていった。
「・・・・・」
シン、と静まった部屋で先に声を出したのは佐助だった。
「・・・ククッ・・・俺様が、俺様じゃないみたい・・・」
「最高だよ、アンタ。・・・あの“政宗殿”が・・・・・」
その後、大笑いした俺らに不審感を覚えた女中の間に妙な噂が流れ、やがてそれが“政宗殿”と小十郎の耳に入り、“気違い主従”と揶揄されるのはまた別の話。
(こんなでも、悪くはないかも)
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・・・で、どうしたら元に戻るのかは定かではない。
・・・寧ろ戻らなくていいと思うがそんな感じで大丈夫か?
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