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A
「最近の若い人って新山さんと俺そんなに変わらないじゃないですか。
 いいんですよ。どうせ帰っても寝るだけだし。」
「ふふ、嘘ばっかり。蝶野くんは格好良いんだから女の人がほうっておかないよ。」
「もう、本当にモテないんですよ、俺。」
ここはキッパリ否定しなければ、と意気込むと彼は降参とばかりに笑った。
「もう分かったよ。
 それじゃあ、おにぎり2つお願いしようかな。具はなんでもいいから。
 はい、蝶野くんの分もここから出してね。」
「え、いいんですか?」
「もちろん。あ、デザートも買っていいからね。」
「ラッキー。じゃあちょっと行ってきますね。」
そう言って研究室を一旦後にした。


早く買って帰ってきたい。
少しでも和音さんといたいから。
あ、和音さんって内緒で頭の中で呼んでいる。
口に出すことはないから内緒も何もないんだけどね。
もう気付いた人もいるかもしれないけど、俺は上司である和音さんが好きだ。
上司としてとか人間的に、ではない。いや、人間として尊敬もしてる。
でも……それだけじゃない。

恋愛的に、だ。

もちろん、俺もあの人も男で最初に自分の気持ちを気付いた時は否定したし狼狽えた。
まさか自分が男もいけるなんて認めたくないだろう。
だが気持ちは理性では到底抑え込むことは出来なくて、一度惹かれるもう雪だるま式に好きになっていた。
今ではもう少しでも一緒にいたいと思う。

ま、好きならみんなそう思うよね。

鼻歌混じりに近くのコンビニで頼まれたおにぎり2つ、サラダと自分の分は適当に選んで研究室に戻った。

研究室に戻ると和音さんは専用のマグカップにお茶を煎れてくれていた。
「おかえり、早かったね。」
「だって腹ぺこですもん、俺。
 早く食べましょう。」
「楽しそうだね。」
「そりゃあ………
 新山さん、どれがいいですか?」

買ってきた物をデスクに並べた。
すると彼は焼鮭とおかかを選んだ。
これ、予想通りね。
だっていつも見てるから好みとかもバッチリ。
そして腰を落ち着け、楽しい夕飯タイム。
コンビニおにぎりだとか周りは書類や専門書に埋もれたデスクばっかりだとか関係ない。

和音さんが包みを開ける前に丁寧に手を合わせた。
そして目を閉じて、その綺麗な唇がゆっくり開くのを俺はいつも見ている。

魅入られるように。


「いただきます。」



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