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青く輝く@

そこはまるで小さな動物園。
モルモットやラット、うさぎやマウスなどに餌と水を与えその隙にケージの中を綺麗にする。
薬品開発の会社に入社したはずがここ5ヶ月ずっと動物園の飼育係のような事ばかりさせられていた。
初めは文句ばかりが口から出てきたが最近はそうでもない。
動物の飼育も大切な仕事だと思える。

何か役に立てる仕事につきたくてこの会社を選んだ。
もっともそれは面接時の体の良い方便みたいなものだった。
大学院を出てそのまま研究員になっても良かったのだが、准教授とそりがあわなかった。
だから親の目もあるし、何よりコネのある会社ならのんびりやれるんじゃないか、と思ったのだ。
だが入社し、希望部署に配属されたまでは良かったが来る日も来る日も動物の世話なんて、はっきり言って退屈だった。
しかも俺の教育係りが、根暗な奴で。しかも馬鹿とか超をつけたくらいでは間に合わないほど真面目な上司。
もう終わった……と思った。
華々しい新薬研究、後にノーベル賞までは行かなくても新薬開発くらいは出来たら格好いいかなとか思っていた人生のスタートラインで躓くなんて、ホントについてない。

初給料で辞めるのはさすがに縁故入社させてもらった人の顔に泥を塗るようで申し訳ないから3ヶ月くらいしたら話してみようかと思ってたんだ。

あの時まで。

「新山さん、掃除とか終わりましたよ。
 この後、今日は何もないんだし飲みにでも行きません?」

そうそう、俺は蝶野利恩(チョウノリオン)。
そこそこ名のある大学に入ってまだ就職する気がなかったから院まで進み修士課程を修了し、今年新卒でまぁ縁故入社したのは、そこそこ名のある製薬会社を親会社にもつ研究所。
24才。
性格はダチからは緩いとかチャラいとか言われるけど、イマドキの俺らくらいならまぁこんなモノだと思う。
テレビで見る芸人のようなあんな喋り方はしない。
まぁ、ニートじゃないだけマシでしょう?
で、今パソコンをカタカタいじっているのが俺の直属の上司、新山和音(ニイヤマカズネ)さん。
確か27才。
染めたことがないような艶やかな黒髪にノーフレームの眼鏡が似合う色白美人さん。
話し掛けた俺を、エンターキーを押した後振り返り小さくはにかむ。
「ありがとう。
 でもこの論文の和訳、もう少しで一区切りだからやってしまおうと思うんだ。 蝶野くんはあがっていいよ。
 俺なんかより、彼女誘って行った方が楽しいでしょう。」

………………………。

相変わらず超ウルトラ級馬鹿真面目の上司。
その和訳は部長が主任に丸投げした論文だ。
主任も忙しくてそれを新山さんに頼んだのだ。

「彼女いないって言ったじゃないですか。
 じゃあ俺、なんか食い物買ってきますよ。少し休憩して2人でやっちゃいましょう?」

「………………、蝶野くんって変わってるよね。
 最近の若い人は早く帰りたがるのにこんな面倒な仕事に付き合おうなんて。」

………………………………。

この人はなんにも分かっていない。

まぁ当然なんだけどねぇ。

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