F
「クス、…リ………?」
「覚醒剤………打たれてたらしい。
見ただろう?
ハルはもう正気ではないんだ。
俺が誰かも、たぶん自分が誰かもよく分かっていないと思う。
口にするのは卑猥な言葉だけだよ。」
「そんな………」
「たぶんハルにはそれがあの日からの日常だったんだ。
さっきみたいに何かしてもらう時には、そういう事しないとダメだったようで……」
お腹を満たすために。
着るもののために。
寝る場所を確保するために。
生きるために。
ロクデモナイ大人がロクデモナイコトを教え込んだ。
ショックだった。
キスしか知らなかったような春生がそんな………。
純真な子どもを。
怒りに眩暈がした。
だがその原因を作ったのは他ならぬ自分自身。
本当に俺たちは、いや、俺はなんという罪を犯してしまったのだろう。
自分勝手な行動が一人の人間の人生をこんなに狂わせてしまったなんて。
グラリと足元が大きく揺らいだ、気がした。
許されない罪。
二十歳をやっと超えただけの人間にどんな償いが出来るのか、さっぱり分からなかった。
押しつぶされそうだった。
これが罰なんだろうか。
自分にではなく、一番大切な人をこんな目に遭わせてしまった。
それがこんなに苦しいなんて、思いもしなかった。
この罰を選んだのが神なら、さすがだ。
自分が罰せられるより、……堪える。
辛い……。
いやそんな言葉を口にするのもおこがましいのかもしれない。
本当は側にいることさえ、許されない存在になってしまったのか………
それでも…………。
これが罰なら、しなければならないことがある。
神をねじ伏せても。
誓わせてほしい。
二度と泣かせはしない。
今すぐ、抱きしめる。
もう二度と………。
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