たった一言
2
いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。
目が覚めると柔らかいベッドの上に寝ていて…窓から差し込む光が、少し眩しかった。
目を細めながら、周囲を見渡してみる。
どうやら自分の部屋のようだ。
白と黒を貴重にしたモノクロな部屋は、狭いながらに割りと片付いている方だと思う。
「…、そうだ……仕事、行かなきゃ」
ふと時計を見ると、いつもより少し遅い時間。
ベッドから降りて服を着替えなければならないと思い、起き上がろうとすると…
「───ッ!?」
腰に激痛。
思わず、体から力が抜けて倒れ込んでしまった。
「…コナツさん?目が、覚めて…っ!」
痛みに呆然としていた私にかけられた、優しい声。
視線だけをそちらに向けると、そこには…小さな器を持って目を見開いている、私の愛しい人。
「…ヒュウガ、少佐……」
掠れる声で名を呼んでみると、彼は困ったような顔をする。
何に困っているのか…私には分からない。
「コナツさん、まだ起き上がっては駄目ですよ。あんなことがあったんですから…ゆっくりと休んでください」
「でも…、早く仕事に行かないと。もうこんな時間なんですよ?それに…『あんなこと』って、何ですか?」
痛む腰を擦りながら、覚悟を決めてのっそりと起き上がる。
これ以上ゆっくりしていたら、完全に遅刻だ。
そうは思うものの、意味有り気な少佐の一言が気になった。
「…コナツさん。今は朝ではなくて、夕方の6時ですよ。それから……」
「──コナツ!!」
小首を傾げて見せる私に、ヒュウガ少佐は真剣な顔で話し出した。
それなのに…、外部からの侵入者によって、ヒュウガ少佐の言葉は遮られた。
驚いて扉の方を見たのは、私もヒュウガ少佐もほぼ同時。
視線の先には…、軍服を着てサングラスをかけた、一風変わった見知らぬ男。
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