拘束
「…ヒソカ、俺は少し出てきます」
「……」
「ヒソカ」
「……」
とにかく無視を決め込んでいるとラキは本日何度目かの舌打ちをした。
何をするのか、踵を返し荷物を漁った彼の手には一本の赤い帯が握られていた。
「……君がそのつもりならこちらにも考えがあります」
「っ…きゃ!」
後ろ首を掴まれ抵抗する間も無く俯せに引き倒されるとその上にズシリと重しが乗っかる。
「やっ…何すんの…!」
「…動きたくないらしいので手助けして差し上げますよ」
「っ?!痛っ」
腕が捻り上げるように後ろ手に持っていかれ、馬乗りになったラキがそこへ帯を巻いていく。
ギリギリときつく縛り上げられた手首はどんなにあがいても緩まるそぶりも見せない。
「そんなっ…やだっ」
もう一本帯を取り出し反対に向き直る。
今度は足首に巻いていこうとするラキの手を振り切りろうとヒソカは足をばたつかせた。
「やめてよ変態!触ん…っ…痛ッ!」
「…あまり暴れると代わりに骨を砕きますよ」
捉えられ、尋常じゃない力が加えられた足首がミシリと嫌な音を立てる。
「さぁ大人しく縛られて下さい」
「っ…変態!最っ低!この人で無し!」
「……それ以上喋るなら猿ぐつわも噛まさなければなりませんね」
ラキの一段と低くなった本気の声色にグッと息を呑む。
抵抗をしなくなった足首も同じように縛り上げられて身動きが取れなくなった。
「俺が帰るまで逃げないで下さいね。…まあ、その状態で動けたらの話ですけど」
「ずっと帰って来なくていいのに」
意地の悪い笑みを浮かべる男にヒソカは嫌悪の篭る目で睨み返した。
「フン…減らない口ですね。次反抗したらもっと恥ずかしい格好に縛ってあげますよ。それをお忘れなく」
そう言い残し、ラキは動けない少女を置き去りにして部屋を出て行った。
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