バツ九
「そんな…ご自分が結婚していないからってそれではあんまりですよ。壊閻様もお早く良い方を娶ればいいではありませんか」
「黙れバツ九!貴様に俺の気持ちなどわかるものか!!」
ピシピシッ…!!
部屋に取り付けられた窓硝子が一斉にひび割れる。
壊閻の怒りに満ちた殺気と霊気は大気を揺らし強固なはずの榧樂城の窓硝子にひびを走らせたのだ。
死神局長刑珞、齢約300にして結婚する事九回離婚する事九回、現在妻は無く愛人三人を囲い中。ちなみに子供は無し。
片や冥界王壊閻は齢約150にして現在まで嫁どころか恋人すらいたためしなし。
それも全て死神達が冥界に連れて来た女の霊を気に入った端から口説き、果ては結婚まで行き着かせる事が大半だからだ。
その間一般霊と冥界王とが面識を持つ機会など無く、壊閻はせいぜい書面にて彼女らを把握する程度。
しかもそれ以前に冥界の民達とですら触れ合う機会は滅多に無く、いつもこの城の中で仕事ばかりしていては恋人など作りようもない。
「落ち着いて下さい、壊閻様!ちゃんとこれもお持ち致しました!」
風の無い室内で壊閻の気で漆黒の髪を靡かせながら懐から一冊のファイルを取り出す刑珞。
どこか必死な表情で壊閻に翳して見せた。
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