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何この人


途端、スッ…と紫暗の眼が細まる。


「…お前…言い直したな?『いる』なんて嘘だろう」

「っ……」


一瞬にしてばれた。
なんて目敏い…基、耳聡い男なんだろうか。


「…そんなの年齢の時も言い直したじゃない。今は…ちょっと、噛んじゃっただけよ?」

「一歳の差なんて変わらないも同然だから別にどうでもいい。だが、今はなんで嘘をつく?減るもんじゃあるまいし、素直に答えればいいだろうが」

「…だって…」


険しい眼差しが突き刺さる。

機嫌を損ねたらしい青年は口篭る季紗人に一歩、また一歩とじりじり寄って来る。


「いないんだろ?そうだろう?」


威圧的に、まるでいないと言えと言わんばかりの声色だ。


(何この人…)


それ程までして否定の答えを求める意味がわからない。

はっきり言って自分ならそれこそどうでもいい情報だと思う。
不審人物相手に先程は何かと安全かと思い、ついごまかそうとして言った訳だが、実際それを知ったところで何になる事も無いんじゃないのだろうか。


「…なんでそこにこだわるの?」

「え…なんでって」


思わず指摘すると本人もハッとしたように立ち止まった。


「ほらね。どうでもいいでしょ、そんな事」


呆れて肩を竦めれてみせれば、カッと青年の目が見開いた。


「違うっ、どうでもよくない!」

「…いっ!」


一気に距離を詰められ、勢いよく後退ってしまった拍子に背中と後頭部に鈍い痛みが走る。

背後の壁に打ち付けてしまった頭を摩ろうとすると、顔の脇を横切って彼の両腕が勢いよく壁を叩いた。


「何故隠すんだ。いるのかいないのか、どっちだっ、素直に答えろ!」

「っ?!」


音と衝撃に見開いた漆黒の瞳は目前の男の苛立った顔を映し出した。





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あきゅろす。
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