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ブチ切れ美人


季紗人は思わずへなへなと床にへたり込んだ。
そして絶叫に続いて絶句した。


(誰だコイツ――?!)


見上げた先にいたのはモデルばりにイイ身体をした全裸の青年。

水の滴る青銀色の長めな髪を掻き上げ、寧ろモデルが裸足で逃げ出しそうな美貌の顔で自分を睨んでいる。


「俺を見て悲鳴を上げるとはいい度胸だな…そんなに死にたいか…!」

「死…っ?」


突如飛び出した物騒な言葉に青ざめる。

手近にあったタオルを腰に巻いた青年は浴槽から上がり、ふと思い出したように結(ケツ)と小さく呟く。

狭い浴室の中、後退る季紗人と難無く距離を詰めると身を屈め逃げるその顎を持ち上げた。


「人を侮辱するのも大概にしろ。お前…地獄に、堕としてやろうか――?」

「っ!?」


低く深い声と共に殺気が全身を貫く。細められた紫暗の眼は冷たく季紗人を見下ろした。


「…っは…はっぁ…ゃ、ぃや…っ」


押し潰されそうな程の霊気に息も絶え絶えになって反論する。
今まで感じた事の無いくらい強大で重いそれに気を抜けば一気に意識が飛びそうになる。


(こっ…こんな事で死にたくない…っ!)


けれど意に反し彼の長い指は顎から首筋を伝い、がっちりと首を捉えた。


(っ…殺される――!!)

「ぅ…っ…」


しかし先に呻いたのは青年の方。

次の瞬間彼は季紗人の胸に倒れ込んでいた。





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