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帰宅


ここのアパートは2DKであり、そのくせ家賃は一桁間違っているのではないかと疑ってしまう程怪しいまでに格安で。
ある事を我慢しさえすれば部屋の広さも構造も学生の一人暮らしでは勿体ないくらいに十分なものだ。
そんな所を気に入った季紗人は二年程前からここに住んでいたのだった。


ガチャリと鍵を開け出迎える者のいない真っ暗な部屋へと帰宅する。

電気を点けてテーブルの上に鞄と買ってきたケーキの箱を置くと、子猫を抱いたまま浴室に向かった。


「あちゃー…明日土曜でよかった…」


元々全身雨で濡れていたが、泥だらけの子猫を抱いたお陰で制服のワイシャツまで泥だらけ。
この天気ではスカートも一日では乾かないだろうから明日が休日でよかったと季紗人は胸を撫で下ろした。


先に子猫を浴室に入れると同時に浴槽にお湯を張るべく蛇口を捻り、季紗人自身は脱衣所に戻り濡れた服を脱いでいく。

だがその時今まで大人しかった子猫が、鳴きはしないまでも曇り硝子の向こうで騒ぎ始めた。
なにやら浴室の扉に猫パンチを食らわせているらしい。

脱いだ服を洗濯機に放り込んだ季紗人は不審に思いながらも扉を開けた。


『――っ!?』


いきなり登場した季紗人に子猫は驚いたらしい。目に見えてわかる程ビクリと体を震わせ風呂場の隅っこの方に逃げていってしまった。





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