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創造の魔術師
ようこそ/2
 回答先生が見上げた視線の先にはまだ真新しい教室のプレートが光っていた。

「13組か……なんか覚えやすそうな番号ですね」
「言われてみればそうねぇ〜……あ、それと同じ階には12組もあるわよ。時々授業でも一緒になるだろうから、そこんところ覚えておいてね♪」


 12組ってことは……アイツのクラスか。学級委員長だかなんだか知らないが、これで見返してやるチャンスができたぜ。


「――アイツ……もしかして凍鷺さんのことかしら? ……はは〜ん、あの娘は優秀よ? 勉強も出来る方だし、何より魔術のキレに関しては天性とも思えてしまうほど冴えてるわね。彼女に何を吹き掛けられたかは知らないけど、今の創魔君じゃ返り討ち。秒殺されちゃうわよ♪」


 俺の思い浮かべる人物の名をずばり言い当てると、回答先生はまたクスクスと笑いながら断定する。指摘も先ほど焔から言われた事に近い。


「でも……いずれは越えて見せますよ」


 俺はもとよりそのつもりだし、いつまでもあんな奴に馬鹿にされてて黙っている性分じゃない事も自分でわかっているつもりだ。だから絶対に越えて見せようじゃないか。それに、それくらいの力がなくては焔の手助けなんて勤まる訳がない。
 俺は心の中でそう決心してみるが、回答先生の反応は実に薄く、


「そう、じゃあ期待しちゃおうかなぁ〜♪」


 と、愛想笑いをしながら聞き流し、クルリと背を向ける程度のものであった。
 先生はその調子で、長い黒光りする髪を振り乱し、賑やかな教室の扉を開けた。



◇◆◇◆◇◆◇




 回答先生が教室に入ると、先程までざわついていた教室が静まり返り皆先生の方へ注目する。


「さぁ、ホームルームを始めるわよ♪ 日直、号令」


 見ていて気持ちの良い笑みで言う回答先生。
 しかし生徒の大半は回答先生に対して呆れ顔で、中にはガンを飛ばしている生徒もいた。号令を言われた日直もその一人で、半ばだるそうに全体へ声をかけて、適当に朝の挨拶を済ませる。
 その様子を目の当たりにしても、回答先生の笑い顔は静止画の様に表情を崩さない。


「みんなおはよ〜♪ ふ〜む、それにしても相変わらずこのクラスは私のことを不服に思っている生徒が目立つわね〜♪ 私のココロにざっくざくひびいてくるわ……」


 仔犬が困ったような悩み声をあげていた回答先生が、急におどけて思いついたような表情をとった。


「――あぁ……でも無理はないか、だってみんな四ツ星にしか興味ないんだもの、私のような適当な担任じゃあ、不満たっぷりにもなるか。三ツ星も四ツ星も受けてる授業の内容はあまり変わらないのに、卒業時に四ツ星は大学へ試験無しのフリーパスで行けるんだもの。……ね、そうなんでしょう? 不満げな桜井君」
「先生……わかってるならさっさと授業始めてくださいよ」


 ガンを飛ばしていた男子生徒は頬杖をついたまま、回答先生に食ってかかる。


「だったらちゃんと出された宿題は終わらせておくことね。宿題をやってないってのが顔に出てるわよ♪」
「それは………ったく……わけわかんねぇ……」


 男子生徒はしどろもどろになり、一先ず会話に句切が着いたところで、回答先生が再び声をあげた。


「ふふふ♪ そうそう、今日は転入生がいるわ。……創魔君、入って〜☆」
「は、はい!!」


 回答先生に呼ばれた解は返事をすると、緊張した赴きで、顔を引き攣らせながら回答先生の脇に並んだ。クラスの皆が解に注目する。

「今日からこのクラスに入る事になった創魔解です。少しずつクラスに馴染めるように頑張るので、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
「創魔君、よろしくね」
「よろしくな、新入り」


 解が挨拶を終えると、クラスの皆も温かく迎えてくれた。


「……サイテー」


 ただ一人を除いてだが……。

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あきゅろす。
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