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創造の魔術師
魔法と手品
 焔がコトン…っと伝票をテーブルに置いて、息をホッと吐きながら、自分が元いた席に座り直す。


「おかえり、ほむら! 月見そばあった?」
「あったよ。……というより、彩音さんが水連の注文を予測してストックしてたみたい。すぐ出来上がるって」
「そっかぁ……楽しみだなぁ〜♪」


 水連が満面の笑みを浮かべる。


「ところで水連。解にはどこまで話したの?」
「魔力と魔属性、それと六属性元素を少しかな?」
「じゃあ、大体は済んだんだ。後は"魔具"に着いて説明すればいっか」


 "魔具"? また新しい言葉だな……。


「創魔君、話しついていけてる?」
「あぁ大丈夫、水連が要点だけを捉えて教えてくれてるから、全然問題ないよ」
「そっか、じゃあ次はほむらの番だね♪」
「そ、じゃあ魔具については私が説明するよ。口下手かもしれないけど、そこは頑張って理解して……いい?」
「あ、あぁ……」


 ぶっきら棒に喋った焔は、先ほどから卓上に上がっていたパフェをスプーンで一口すくって、薄く頬を染めて美味しそうに加えた。


「ふふっ……じゃあ説明するよ。まず"魔具"ってのは略称で、正式には"魔術器具"って言うの。魔具の形状や材料に法則性はなくて、ただ"魔術を使う上で必需品となる"ってだけが共通してる……。まぁ余り大きすぎても、いざという時に邪魔になるだけだから、一般的には小物の魔具が主流かな……なにか質問は?」
「えっと、その魔具ってのは一般的に売ってるのか?」
「いや、魔具自体は売ってるんじゃなくて、魔術協会の認可が下りている公的機関で作って、その後個人登録するんだよ。それなりの資金さえあれば、いつでも、何個でも作って登録することができるけど……大体少なくても数万から費用がかかっちゃうかな?」
「高いんだな……」
「創魔君、そんな苦い顔をしなくても、この東魔では無償で魔具を提供してくれるから心配いらないよ♪」


 金が無い俺を察してくれたのか、水連が笑いながら語りかけてきた。……そっか、なら金が無くても大丈夫かな?


「他には? 無いなら続き話すけど」
「続けて構わないよ」
「そ、なら次に魔具はどうして必要なのかなんだけど……解って、"魔法"と"手品"の違いってなんだと思う?」


 違いか……そもそも魔法と手品って違いがあるものなのか? ……いや、言葉が違うんだからきっと意味も違うんだろうけど……うーむ……。


「……わかんねぇ、みんな一緒だろ」
「返事はやっ………答えは"タネ"だよ。魔法にはタネがなくて、手品にはタネがある。魔具はそのタネの役割なの。いわば、身体から出た魔力を外部へと持って来る半導体のこと」
「えっ…と……す、水連?」


 なんか難しそうな例えだったので、助けを求めて水連に声をかける。すると水連は左手の人差し指を額に当てながら、う〜んと考える姿勢になる。


「そうだね……魔力を電気で例えてみると良いんじゃないかな? 魔力を起こす術者――つまり、発電所が沢山電気を起こせたとしても、それを外に引っ張る電線が無いと意味が無いでしょ? 魔具はその電線の役目ってことだよ♪」
「なるほど……電線か。確かに電線が無いと電気を送れないしな!!」
「だよね♪」
「あの……魔具についてわかった?」
「ん、あぁ……焔のおかげでだいたいは……なんか用事があったみたいなのに、わざわざ説明してくれてありがとな」
「べ、別に……それに教えるのめんどくさい……」


 言葉で否定しつつ、顔を赤くして素っ気なく返事を返すところが焔という人柄が現れてると、俺は感じた。だから俺は……


「そうか……」


 と、軽く返事を返すことにした。
 その後水連にもお礼を済ませて、俺はさりげなく携帯で今の時間を見た。時間が経つのは早く、気づけばもう夜の8時半を過ぎている。

 目線を水連の奥のガラスに向けると、それを越して見える外の夜景には、広大な海とその上を走る船が明かりを燈して渡っている。


「……皆さん、お料理をお持ちしましたよ?」


 ……ふと、俺の右側から女性の声が聞こえた。

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あきゅろす。
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