一ノ章 嘆きの鴉と謳う魔女
転点-テンテン
AM8:56
ホームルームの予鈴のチャイムがなり終わる。調度沙刀の席からは校門がよく見える席で、校門では、予鈴に間に合わず生徒指導室につれていかれていた。
「うわ、めっちゃ連れてかれてんだけど」
「ほんとだー、俺らのクラスの奴いんの?」
盧杞の言葉に、沙刀はクラスを見渡す。しかし、殆どのクラスの奴が、予鈴が鳴ったにも関わらず自分達みたいに席に座っていなかったので、正確にはわからなかった。
ただ、逆にいつも予鈴が鳴ると席に必ず座っているクラス委員の二人がいない。
沙刀は顔にハテナマークを浮かべながら
「佐久間(サクマ)と椎葉(シイバ)がいねーぞ?」
と、盧杞に問いかける。
すると、盧杞もあれ?という顔をした。
「本当だ。あの二人が席に着いてないなんて・・・欠席?いや、もしかして意外にサボりとか?」
「アホか・・・、椎葉の方はともかく佐久間が、学校サボるとかあり得ねぇだろ。あの佐久間だぞ?」
佐久間煤記(サクマススキ)と椎葉魔虎(シイバマトラ)はクラス委員という間柄からか、よく行動を共にしていることが多い。
しかし彼らは、親友というほど仲が良いわけではなく、協調性の無い椎葉魔虎を、やけに紳士的な正確な佐久間煤記が、周りと馴染ませようと共にいる、といった方がシックリくるのかもしれない。
要するに、佐久間煤記の考えはわからないが、結局、椎葉魔虎には、佐久間煤記と仲良くしておきたいという、友情はまったく無いということだ。
その二人が居ないということは・・・。沙刀が思考を張り巡らせる。
・・・と、その時
「何が、あの佐久間ですか?沙刀君?」
噂をすればなんとやら、とは正にこのことで、ニッコリと紳士的だがドス黒い笑顔を向けて、後ろのドアから入ってきたのは、噂の張本人佐久間だった。
「「ゲッ」」
沙刀と盧杞は互いの顔を見合わせる。
そんな二人に追い討ちをかけるように佐久間は言葉を続けた。
「二人ともおはようございます。朝から僕が居ないのを言いことに、言いたい放題ですね」
ニッコリ
「「・・・・。」」
生まれつきだという、明るめの色をした茶髪と、茶色い瞳だけでは軟派なイメージを匂わせるが、十代というには、余りにも丁寧すぎる彼の言葉使いと上手く溶け込み、日頃から彼は独特の色気を醸し出している。
しかし、何故か時々彼の紳士的な笑顔には、ドス黒いオーラがにじみ出ていた。
これは、決して気のせいではない。
そう、沙刀と盧杞、・・・いや、クラスの全員は確信していた。
何故なら、そんな時の彼は、佐久間煤記は、
【瞳】がいつも本気で笑ってないからだ。
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