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一ノ章 嘆きの鴉と謳う魔女
3


「残念だが、アンタはあの日の、魔能力者とは違う。なんせ、あの日の魔能力者は、【焔】を使う能力者だったからな。魔能力者は、一体につき、一つの能力を持つ。だから、この間、【雷】を使ったお前はあの日の奴とは別人だ。」

「へぇ、やったら、そんな物騒なモン向けんでいいんやない?俺は、あの日の奴とは違うんやから。」

「だけど、お前の言動はどう考えても、関係ない奴の言動じゃなかったからな。お前はあの日の関係者かもしれない」


「まぁ、そうやろな。俺かてワザとやっとったし。だけど残念。俺はあの日の関係者やないわ。ただ真相を、本当の真実と犯人をお前に伝えてやろうと思ってわざわざココ(学校)に来た。俺はあの日の真実を知るもんや」

「真実だと?」

「そう真実。だから、まずはその刃を下ろしてくれん?普通に話し合いをしようや」

熊沢ムギは、やれやれと肩を竦め、強盗に手を上げろと言われた様に、両手を挙げた。

まるで沙刀に危害は加えませんと、行動で訴えるかのようだ。

しかし、沙刀はその交渉にはおうじなかった。

「断わる」

「何故?」

「・・・。お前が、魔能力者だからだ。魔能力者は、人間の姿形をしていても中身は、一度人の血肉を見れば、獰猛的な殺戮を繰り返す化け物だろうが。そんな奴と武器なしに話し合いなんかできない」

【魔能力者は化け物だ。】
【魔能力者は、一体につき、一つの人外な能力を使う】
【彼らは一度、人間の血肉を見れば、まるで獣が獲物を見つけたかのようだ殺戮を繰り返す】


これは、東京国では、子どものころから教えられる、魔能力者に対する最低限教えられる知識だ。

東京国は魔能力者に対する管理が他国よりも厳しいため、普通の東京国民であれば、滅多に魔能力者に会うことはない。

だから、子どもの頃からこうして伝えておき、実際に会ってもその見た目に騙されない様に親が子どもに言い聞かせておくのだ。

と、いっても東京国の平和慣れした今の国民には、余り効果はない。寧ろ一回は魔能力者をこの目で見てみたいと考えている野次馬の様な者ばかりだ。

安全な場所で、安全なスリルを味わいたいと願うのは人間の本性だ。


しかし、沙刀は違う。一度本当の魔能力者の力の恐ろしさを体験したからこそ、そんな馬鹿みたいな考えはおかさなかった。

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