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一ノ章 嘆きの鴉と謳う魔女
愛別-アイベツ

※※※

盧杞は、沙刀をズンズンと無理矢理、誰にも使われていない、第二視聴覚室に引っ張って来た。

普段使われている新校舎とは離れた、旧校舎の4階のココならば
他の生徒や、先生に邪魔すること無く、沙刀と話せると思ったからだろう。


「ッいってぇなッ!!」


バッ!

遂に沙刀は、無理矢理なにも言わずココに連れて来た、椎葉に痺れを切らしたのか、苛立ついた様に掴まれていた腕を振りほどく。

「盧杞ッ?!てめぇどういうつもりだッ!人が折角・・・ッ」

沙刀にとって椎葉の情報は、折角の大事な手がかりだったのだ。それなのに、会話を無理矢理切り上げてここに連れて来た盧杞が許せなかった。魔能力者を憎んでいる気持ちは、同じ筈なのに。

だから、沙刀は、全ての苛立ちをぶつけるように、盧杞に向かってありったけの暴言を吐こうとした。
しかし、それは盧杞の、行動によって遮られることとなった。

ガンッ!!

「・・・えっ?」

何かを殴ったような鈍い音がしたと思ったら、なんと盧杞の拳が、沙刀からあえて少し目標をズラしたかの様に、すぐ後ろにあった掃除道具入れにめり込んでいた。沙刀の視線のすぐ左


沙刀は、そこで初めて盧杞が怒っている事を知る。

いつもの軽い喧嘩どころではない、盧杞は本気で沙刀に怒っていた。

「ねぇ・・・・・」

ビクッ

沙刀は自分自身の方が無意識に震え怯えていることが解った。盧杞と沙刀は喧嘩をすることも多いが、いつも本気になってキレるのは、沙刀の方で、盧杞は何処か抑制した様な怒りかただった。だけど、盧杞は、今、本気でキレていた。

「・・・ねぇ」

反応の無い沙刀に盧杞は再び問いかけた。それにハッとした沙刀はどうにか声を振り絞って、

「・・・な・・・んだよ」
とだけ返した。先ほどの威勢のいい態度は既に消えている。それ程までに盧杞の本気は恐ろしかった。目を合わす事ができない。

それでも、沙刀は盧杞が、ギロリと自分の目を見ていることがわかった。

「ねぇ、沙刀・・・なんでそんなに転校生にこだわるんだよ」

「何でッて・・・だから、あの転校生は魔能力者・・・」
「だったら、なんだっていうの」
「え・・・?」

沙刀は一瞬空耳ではないかと本気で疑った。だって、その言葉は、今までの考え方を全て否定するかの様な言葉だった。
だけど・・・、

「だったら、なんだっていうんだ?!」

だけど、その言葉は紛れも無く、盧杞が発した言葉で・・・。


それがわかった瞬間
沙刀は、何故だと思った。

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