一ノ章 嘆きの鴉と謳う魔女
3
ドアが音をたてて開く。
背筋を伸ばし、まっすぐと教卓に向かう転校生。
そこに現れた転校生は、一言で言えば金髪のイケメン外国人だった。
確かにその転校生は【熊沢】と、東洋系の苗字で紹介されたはずなのだが、スラっとしたモデル体型や、綺麗な金髪に金の瞳はどうみても東洋人には見えない。
そしてその整った顔立ちに優しい微笑みを浮かべた。
普通男子は、女子ではないことにガッカリと叫び、女子はイケメンの登場に叫び声をあげるはずだ。
しかし
誰もが、言葉を発しない。
何故なら
転校生の、その綺麗な顔の右頬には・・・
真っ赤な殴られた様な手形があった。
沙刀と、盧杞は顔を見合わせる。
理由は・・・佐久間が先ほど
言っていた「後でわかると思う」という言葉に、嫌な予感がしたのだ。
あの手形をつけたのは
おそらく
・・・椎葉だ。
※※※
「熊沢ムギです。この学校にくる前は、西海の方に住んでました。あっちにはこういった学校ゆうもんがないけん、自宅学習やったけど」
ニコニコ
周りが呆然としているのにも関わらず、転校生熊沢ムギは爽やかな笑顔でスラスラと自己紹介を始めた。
「この国に来たんは、今んとこ世界一平和で、恵まれた環境やったからです。どーせ勉強するんならイイ環境の方かいいやろ?」
シーン・・・
「西洋人ってよく、いわれるんやけど、これでも、いちおー東洋人と西洋人のハーフです。ほら、喋りかたとかも、東洋の地方の訛りやろ?じゃけぇよかったら仲良うしてね」
ニコニコ
シーン・・・
「あれ?」
そうして周りの反応が無い理由がわからないらしいハーフ転校生はキョロキョロと視線を泳がす。
そんな気まずい雰囲気の教室に佐久間が小声で助け舟を出した。
「熊沢くん・・・多分みんな、その頬が・・・」
「え?・・・あぁ!」
熊沢もやっと、周りの反応の理由に理解したようで、
「このほっぺたは気にせんでください?さっき、佐久間君の相方のクラス委員・・・えーと確か椎葉君?その子に、えらいち可愛い顔しとんねっていったら殴られたんや」
ニッコリ
確かに、椎葉は男にしては、かなり可愛い顔をしている。
バレンタインデーなんかには女子だけではなく、一部の男子からも貰っているぐらいだ。
しかし、椎葉は自分の顔立ちのことをかなり気にしていた。
男に告白されていた時は、その男をボコボコにして病院送りにしたほどだ。
だから、この学校には椎葉の事は可愛いと言ってはいけないという暗黙の了解があるのだが・・・。
クラスメイトはこの時感じた。
彼はとてつもなくイイ奴だと。
そして、無意識に無神経な奴だと。
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