文章館
『ジャッジメント・デイ‐side/S』:リナ様の小説のシンク視点を白金が書かせていただきました。短。
初めて見た時から囚われた。
自分には縁遠い、その眩しさに。
ガラクタはガラクタでも、どうしてこう自分とは違うのか。
朝焼けか、夕焼け。
『アイツ』を表すのは始まりか、終わりの色。
そんな相反する意味の色を纏った存在に、空っぽのはずの僕の中の何かが反応した。
〜ジャッジメント・デイ‐side/S-〜
雨は嫌いじゃ無い。
傘もささずに打たれていると、空っぽの器が満たされるような、そんな錯覚がするから。
預言に縛られたこの歪んだ世界と、第七音素を滅ぼす。
……自分が今していることが正しいなんて思っちゃいない。
ならなんで行動を改めないのかと聞かれれば、それしかないから、としか答えられないだろう。
自分は空っぽだと。
だからそれしか道はないのだと。
そう思い込めば、選択する際の苦悩やIFの不確かな光に縋る見苦しい自分に顔をしかめることもない。
―結局。
自分は滑稽な程臆病なのだ。
既に失う物も、健全な心身すら無いと言うのに、もう、これ以上何も無くしたくないし傷つきたく無いと思う。
だから総ての可能性を潰して、全てを消す。
そうすれば、喜びも楽しみも無い代わりに痛みや苦しみも絶望も無い。
全てが0になる。
ただの肉塊として生み落とされた僕にはお似合いのシナリオだ。
不意に雨で冷えた体に熱が生まれた。
目を開ければ雨雲が切れて、差し込んだ光が濡れ鼠の僕を照らしていた。
そして。
「シンクッ……!」
嗚呼。
そういえばアンタがいた。
0と1の間。
希望と絶望の狭間。
そうだ。
そういうことか。
この世界を消すか、
この歪んだ世界で生きてゆくか、
それが0と1ならば。
「この世界を消してもアンタと共に在る」
……コレが0と1の間で。
0も1もナンセンスと感じるならば、間を取れば良い。
「そう、いうことだね」
雨上がり。
僕はもう空っぽではなくなった。
それは雨がもたらす錯覚ではない。
今この腕に抱く、朱色がもたらす確かな感覚。
「……一緒にいこう?」
空っぽの僕に一つだけ。
0と1の間の、アンタだけ。
アンタの気持ちが解るのはあの紅い被験者じゃない。
だからアンタは僕に縋れば良い。
抱いて、撫でて、傷を舐めてあげる。
僕にはアンタだけ。
アンタにも僕だけ。
雨晒しの冷たいガラクタ同士が抱き合って。
軋んだ音が世界に響く。
雨晒しのガラクタに裁きを下すのは、
依存と執着。
「ルーク、」
……抱き締めた光は、何よりも暖かくて。
もう、この歪んだ世界なんて
どうでも
イイ……。
End.
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