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日乱
禁句 〜±0の毎日〜

きっとそれは『禁止ワード』


禁句 〜±0の毎日〜


「おい、松本。入るぞ。」
「どーぞ、日番谷隊長。」

非番のあたしの部屋に、なぜか隊長が入ってきた。
でも、隊長が入ってくることくらいあたしにとって日常茶飯事で。
だから、普通に出迎えた。
お茶を飲みながら。

そしてそのとき、隊長が言った一言を、あたしは聞き逃さなかった。

「ばばくせぇ…………。」
一応上司だし。(隊長だし)あたしは座ったままだったから、とりあえず。


弁慶の泣き所をグーで殴るところだけで止めておいた。
だって仮にも自分の副官に向かって「ばばくせぇ……」は無いと思わない?

………好きな人に、『ばばくせぇ』なんて、言われたくないし…………。

自分だって熱いお茶をもろともせず眉間に皺寄せて飲んでるくせに!!!
歳相応の顔しなさいよ、たまには!!!


…………嫌われたくないから、言わないですけどもっっっ!!!

「で………何の用ですか?」

にっこりと、まだ怒っていますよ〜余計な事言うと殴りますよ〜感を漂わせながら、あたしは告げる。
隊長の分の、お茶を注ぎながら。
そのお茶を受け取り、隊長が漏らした言葉は、

「俺も充分じじくせぇな。」

よくわかってるじゃない。

そう言いたかったけど、やめた。危ない危ない。


「それにしても、今日はお客さんがよく来るわ………。」

ボソッと、もらした一言を、隊長はしっかり聞き取っていた。
「他にも誰か来たのか?」
「ええ、やちるに七緒に桃に檜佐木に恋次に…あと〜〜〜」


「ギン」


こいつは、俺がいるって言うのにあの野郎の名をもらしやがった。
しかも『ギン』だとぉ!?笑わせんな!!
いくら幼馴染だからってやって良いことと悪いことがあるだろう!
俺は「隊長」のくせにあいつは呼び捨てかよ!!
きっとこいつの事だから幼いときのくせとかなんかだろうが……………みてろ。


「ふぅん、雛森も来たのか」


わざと、名前を出してみる。
どうだ!!

「そうなんですよ。あの子、葛きり持って来てくれて。あ、隊長も食べます?」
「……………………………………………………ああ。」

なんでだ!!どうしてそんな何も無かったような顔してやがる!!
ニコニコしやがって!!俺と雛森のことが気になれねぇのかよ!?



今この人………思いっきりわざと『桃』の名を出したわね…………。そんなわかりやすい手に乗ってたまるものですか!!
わかってますよ?確かにあの時『ギン』って言っちゃったのはあたしが悪かったけど、何もわざわざ桃の名前を出さなくてもいいじゃない!!
ギンの名前はくせよ!くせ!!いつもはちゃんと『市丸隊長』って呼んでるじゃない!!
はぁ………幼い時の癖ってなかなか取れないものよねぇ………。

…………あたし、ちゃんと笑顔?

「はい、どうぞ。おいしいですよ〜この葛きり。やっぱり桃が持ってきただけあるわねぇ………。」
「おい」
「なんですか?」
「…………やっぱりいい」
「なんなんですか気になるじゃないですかぁ。」

本当にもう・・・。ぷぅと、奴は膨れたが、そんなことは関係ない。



『お前は、妬かねぇのか?』



聞きたかったけど、聞けなかった。のどの奥に何か張り付いてるみたいに。
それで、やっと出てきた言葉。
『……………やっぱりいい』
いつも、この言葉で締め切られる。
あいつはあまり深くは聞いてこない。

…………ちょっと、寂しかったり……………。


だぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


なんとなく、睨みつけてみる。
「な……なんですか?」
「いや?別に。」
「なんか、睨みつけてるじゃないですか。」
「お前の気のせいだろ?」

気のせいじゃないけどな。
だけど、お前のせいで俺はこんなに悩んだり苦しんだり、切なくなったりするんだ。
お前のせいだよ。ぜーんぶ全て、鈍感なお前のせい。
まったく、わかれよ。

俺は、お前が、こんなにも好きなのに。


――――これを、2人をよく知る人たちに言わせると――――


結局、ちょうど良いんじゃないんですか?


と、よく言われる。

今日も2人は、いつも通りの±0の一日を過ごしているのだ。

ちょうどいい、今日一日を。



〜FIN〜



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