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日乱
1年の最初から最後まで
見渡せば。白。白。白。


―1年の最初から最後まで―


「はぁ…………飲み会……。」
「まだ言うか。」
見渡せば、白。白。白。
そう。それは、乱菊が今まで溜めてきた書類の山の事である。


乱菊にとってはヒマラヤよりも高いその山はさっきから一行に減らない。
いや、減っては居るのだが――…何しろ山が山なので減る気配が見えないのだ。
ちなみに乱菊を手伝う日番谷の机にも乱菊と同じくらいの書類が積み上げてあったのだが流石にこちらは処理が早く、乱菊が渡した分はもはや半分を切っていた。

「あぁ………。毎年恒例副隊長全員の大晦日定例集会(宴会)がぁ………。」
「…………今かっこに変なのが入ってなかったか………?」
「いいえ?」
「………………そうか。」
そして少しばかり、静かな時間が流れる。
「…………隊長。あたしの事騙そうったってそうは行きませんよ。」
「え゛。」

ギクリ、と日番谷は肩を震わせる。
「あたしの書類を手伝うためにここにいる、って顔してますけど本当は隊長も毎年恒例隊長全員の大晦日定例集会(宴会)あるんでしょ?それを参加したくないからって、あたしの書類手伝ってくれるのを理由に上手くかわしたのをあたし知ってるんですからね!」

ちょっとツン、とした言い方で言ってみると日番谷はあからさまにホッとした顔をした。


「何だ。そっちか。」


「えぇぇぇ!!!??まだあるんですか!!?」
「うるさい。さっさと書類を片付けろ。あとかっこの中は余計だ。」
「……………はぁい。」

うぅ……お酒ぇ……そうぼやきながら乱菊は筆を進める。
「大体お前酒飲みてぇんだったさっさと終わらして呑みに行けば良いじゃねぇか。」
「この量でそれを言いますかっ!!!」
「言えねぇなぁ。」
「うぅ………終わらない…。あたしこんなに貯めてたっけ?」
「ためてたからこんな目にあってんだろ?」
「…………そぅなんですけどぉ!!」

お酒ぇ………お酒ぇと呪いのように呟きながら乱菊は書類を片付けていく。
日番谷はそれを横目で見て、ふと。言った。



「まぁ、俺はお前と過ごしたかったから良いけど。」



「………………………へ。」

乱菊の顔は真っ赤である。日番谷が先程言ったセリフがゆっくり頭に染み入っていく。
「お前は?」
その言葉の気安さに乱菊はそんなに深い意味が無いと理解し、乱菊は頭にのぼった血を慌ててさげた。

「はいっ!えぇっ!あたしも隊長と大晦日過ごせて嬉しいですよっ!!」
こんな子供にはドキドキさせられるなんてっ!と乱菊は頬に手を当てる。

するとどこからか花火が上がる音がした。それは、年が明けた合図だ。

「…………お正月、になっちゃいましたね。」
「………そうだな。」

「今日は、終わりにして。もう帰ろうか。」
「えっ!いいんですかっ!?」
「どうせ今日1日で終わらせられるとは思ってねぇしな。だってお前だし。」
「酷い!でも嬉しい!」
「なんなら今日は、俺の家で一緒に呑むか?京楽から美味い酒を貰った。」
「本当ですか!?やった!ご相伴に預かりますっ!」

ぴょんぴょんと跳ねながら乱菊は日番谷は後から着いてくる。


日番谷はその様子を見て苦笑した。
『こいつは……俺が書類を隠してたの気がついてないんだな……。』
そう。乱菊が不思議に思うのも無理はない。乱菊は実際には、ためている分にはためていたが、ちゃんと終わらせられる量だったのだ。
日番谷は乱菊の分の書類を少しずつ少しずつ隠していたのだ。
それがいつの間にやらあの山に………である。
騙した、のではない。黙っていただけだ。日番谷は先程の乱菊の顔を思い出す。
顔を真っ赤にした乱菊に脈ありかと思ったが、それはまだ早すぎたようだ。

……まぁ、今年も。


その時。当の本人は鼻唄を歌いながら日番谷の後ろを着いていく。

『隊長と一緒に呑めるなんて♪今年も良いことあるかも♪』

こんなに良いことがあるのなら。今年も仕事は……




『『ゆっくりやるかぁ。』』




十番隊のツートップは仲良く同じ台詞を胸に抱いて同じ家へと向かった。


A HAPPY NEW YEAR!
明けましておめでとう!
今年もよろしく!!




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あきゅろす。
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