日乱
松本さんのお怒り
「っだー――――――――ッッ!!」←女のおたけび
口を利いてもらえるまで約2日。(と、7時間25分45秒)
夏 蒸し暑い今日この頃。
涼しげな木陰の中にいた日番谷は、自分の名を呼ぶ声に振り返った。
「ひ・つ・が・や・た・い・ちょ・う・さ・ん?」
「・・・・・・・何の用だ。市丸。」
「嫌やな〜そんな邪険にせんと。忠告しに来てあげただけやのにぃ。」
「お前の忠告なんか、聞く気しない。」
「あ、ひど。ま、ええや。あんな〜」
「いいのかよ。」
「女は怒ると怖いで?」
「ああ?なに言ってるんだよ?」
「や、ほんまに怖いねんて。特に乱菊。」
「松本が?」
『乱菊』という呼び名に青筋が立ちながらも、聞き返した。
「うん。乱菊。」
「・・・・・どう怖いんだよ。」
「色々。」
「もっと詳しく」
「思い出しただけで身震いするほど。」
あの、あの市丸が怖いというのだ。
あの、あの市丸が「身震い」するほど怖いというのだ。
・・・・・・・どれだけ怖いんだろう。
さかのぼる事5時間前
日番谷は、サボった。
いつもはそんなことは・・・・・あまりしないのだが(結構していたりする。)
いつもは1、2時間で戻る。それで乱菊に軽く怒られる。まぁ大抵は「隊長も、少しは息抜きが必要ですから」と少し微笑んで終わらせてくれる。
だが今回は5時間だ。1時間を分に直すと60分だが、5時間を分に直すと300分にもなる。ちなみに秒に直すと18000秒にもなる。
本当は1,2時間で帰ろうと思っていたのだが・・・・・寝過ごしてしまい・・・・・・・。
とにかく1,2時間とは桁が違う。乱菊の大きな雷が落ちるということは目に見えて分かっていた。
そう、分かっていたのだが・・・・・・・。
「普段、あんまり怒らないだけに後が怖いんよ。」
市丸が、怖いと言う。
市丸が、『色々』と言う。
市丸が、身震いするほどと言う。
・・・・・・・・・・ど、どうすれば・・・・・・・・・・・?
「取りあえず、瞬歩で帰ったほうがええよ。あとヘタな言い訳はやめておくことやね。すぐ見破られるから。」
「・・・・・・・・・・・怒らせないには?」
「一分一秒、早く帰らんと一分一秒怒りが増えるよ?」
コレは本当やで?そう言いたげに口にさらに笑みを作ると、一言言った。
「うちの副隊長がイヅルでほんまに良かったわぁ。」
これを最後に日番谷は瞬歩を使って風のように走り去った。
元々身軽な日番谷だ。3分もしないうちに十番隊隊舎に着いた。
さて、ここからだ。
十番隊隊主室・・・・・ここが日番谷にとって最大の砦。
最大の敵・松本乱菊が居る所。
しかも今日は『散歩に行く』とメモも言伝も本人に告げてもいない。
「た・・・・・・ただいま帰りましたぁ・・・・・・・・・」
「お帰りなさい」
乱菊は自分の指定席のソファに座って微笑んでいた。
あれ?いつもの松本ではないか。
市丸の野郎騙しやながったな。
そう思いながら席につこうとした。
あれ?
そう思った。
なぜなら、1時間抜けた後でも、一応怒られるのだ。
しかもさっきから微笑んでしかいない。
ニコニコ。
はっきり言って、いつもの笑みとは違う。
・・・・・・・・怖い。
「松本・・・・・・さん?」
「隊長・・・・・・・」
「今までどこ行ってたんですか!!」
―――――――雷が落ちた。
「隊長のことだから大丈夫だろう、1,2時間で帰ってくるだろう、書類片付けに帰ってくるだろう・・・・そう思っていましたが、見てくださいよ!この書類の量!!!!」
「す、すみません・・・・・・。」
「すみませんじゃありません!!今日の分の書類全部隊長持ちですからね!!!」
「ええ!!!?」
「ええ!!!?じゃありません!!」
「は、はい・・・・」
「あたしはもう帰ります!!隊長全部片付けてくださいね!!」
「わ・・・わかりました・・・・・」
「あ、そうだ」
カタッ
そう言って日番谷の席に置いてあった午後三時のおやつ、おはぎ(乱菊の手作り)を取ると
「コレは没収です!!!」
という冷たい一言を言い放った。
日番谷はがっくり肩を落とすと書類に筆を滑らした。
「今日中に終わるのかよ・・・・・」
書類の山は日番谷の背より10cm低いくらい。
乱菊の机の上にはそれと同じくらいの書類が積んである。どうやら今日はとても忙しかったらしい・・・・・。
そして、サボった。五時間も・・・・・・・・・。
これでは、当分、口が利いてもらえないことが決定した。
いつごろになったら愛しい彼女に口を利いてもらえることやら。そう頭の中で一生懸命計算しながら印を押す。
今は、午後4時。彼が帰れるのはいつになることやら。
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