日乱
不機嫌(イヅル+ギン語り)
あーあーあー
もう・・・・・・
不機嫌
「市丸隊長・・・・・市丸隊長ってば!市丸隊長!!!!」
「なんやのん。イヅル」
「『なんやのん』じゃありませんよ!仕事してください!!!」
「なぁ・・・・イヅルゥ・・・・・。」
「なんですか?」
「八つ当たりくらいたくなかったら、どこか行った方がええよ。」
「何を――――――――・・・・・・・・・」
遅くなりましたが、僕は吉良イヅル。三番隊副隊長です。以後、お見知りおきを。
それでさっき僕に『さっさとどっか行かんかったったら八つ当たりすんでぇ〜』宣言をしたのは三番隊隊長、つまり僕の上司、市丸ギン。
その僕の上司はさっきからずっと窓の外を見ている。何を見ているのかと思ったら・・・・・・・・・・・・・
十番隊副隊長 松本乱菊さんと、その上司 日番谷冬獅朗。つまり、隊長。
あ〜ヤキモチを妬いているのか・・・・・・・・・・・・・・・。
でも僕はいいんだけどね・・・・・・・・・。この2人がくっつくの。
だって雛森君が奪われなくてすむんだから!!(しょせん自分が1番)
「なぁ・・・・イヅル?」
「はい」
「聞こえんかったん??」
「え゛」
窓の外を見ると、松本さんが日番谷隊長をギューと抱きしめている。そう、ギューと。
あーあ・・・・嬉しそうな顔しちゃって・・・・松本さん。綺麗な人だからなぁ。好きだと言ってる男は山ほどいる。ま、僕は雛森君が一番なんだけどね!!
当の日番谷隊長は・・・・・あーあ耳まで赤くなってる。それでもギャーギャー言ってるし。君が松本さんを好きなのは誰が見ても一目瞭然だよ?本当にもう・・・・・。
「イ・ヅ・ル」
「あ・・・・・」
「殺されたいん?かわいいかわいいイヅルちゃん???」
「スイマセン。デナオシテキマス。」
「いいんや。それで。」
そう言った市丸隊長の声は今までに聞いたことのないくらい不機嫌で。僕は障子にかける手が震えてるのが解った。
「なぁ・・・・イヅル・・・・・」
「はい?なんでしょうか・・・?」
「初恋って・・・・・叶わないんよな・・・・・」
「まぁ・・・・世間的にはそう言われていますが」
「そうやな・・・・だったらボクのも、あの十番隊隊長の恋も叶わないわけやなぁ・・・・ははは。傑作やわぁ・・・・・」
そう言って笑う市丸隊長の顔は楽しそうで・・・・けど悲しそうでもあって・・・
だから僕は言ってしまったんだ。禁句を。
「市丸隊長の初恋の人は松本さんなんですか?」
「イヅル。」
「はい」
「イヅルはたしか五番隊副隊長さんが好きやったんやなぁ?」
「え・・・・あ・・・・はい」
「ならその恋も実らんわ。」
「え゛」
「だってあの子五番隊隊長さんが好きなんやけんなぁ。」
ぐさぁっ
「五番隊隊長さんと比べてイヅルは、かっこよくもないし霊圧も及ばんし〜なんや0勝2敗やん。うわ〜ぼろ負け!さすがイヅル!!!」
「・・・・・・・・失礼します・・・・・・・・・。」
「気ぃ付けてな〜途中で転ばんようにな〜」
「・・・・・・・・ハイ・・・・・・・・・・・」
これが・・・・市丸ギンの八つ当たりか・・・・・
カラカラ・・・・・シタン・・・・・・・・ドタッ!!
『あ〜こけたな。』
そう思いながら、もう一度窓の外に目をやる。
さっきのやり取りの間に2人は離れ、一緒に歩き出した。乱菊は後ろに。日番谷は前に。
乱菊はこの上ないという位の美しい笑顔を浮かべ、日番谷は顔を真っ赤にしながらも・・・・・
きっとこの二人は両思いなのだろう。
市丸はもうここには居ない副官に向かってつぶやいた。
「イヅル・・・・・・・君はボクよりず―――――っとマシや。」
一番、この世で一番好きな女を。一番、この世で一番嫌いな子供に奪われたボクに比べれば。
ず――――――――――――――――っとマシや・・・・・・・・・。
〜Fin〜
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