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日乱
涙の後を追いかける。(日→乱)
見ようによっては市日と日雛が混じってるかもしれません。でも日乱ですから!日乱なので!!




『…………僕を追うより、』

『五番隊副隊長さんを』

『お大事に。』


涙の後を追いかける。


あの台詞はきっと、奴は複数の意味を込めて言ったんだと思う。
雛森が狙われていると言う忠告。俺へのからかい。
そして―――……自分は大事に出来なかったから。少しだけ、恨みを込めて。
奴は、この時きっと俺が憎かったと思う。

雛森を大事に出来る俺を。
………―――松本が傍にいる俺を。
自分は、できなかったから。
逃げてしまったから。
奴は、手放したんだ。
手放さずにはいられなかったんだ。
松本は綺麗すぎるから。
外見だけじゃなくて心も。
自分の汚い何かを、さらけ出してしまいそうで。
そしてそれを癒して、浄化されてしまいそうで。


『お大事に。』


何て、悲しい台詞。
あいつは、本当は…………泣きたかったんじゃないだろうか。

松本も、泣けない奴だ。
どんな時も笑ってる。苦しい時も悲しい時も。
市丸も同じなんじゃないだろうか。
いかにも偽物の笑顔を張り付けて何もかもを諦めて。


あぁ本当にそっくりな幼馴染み同士だな。


どんな思いで松本に刀を向けたのだろう。
どんな思いで松本から刀を引いたのだろう。
どんな思いで松本に捕まえられたのだろう。
どんな思いで松本に『ごめんな』と謝ったのだろう―――……。




あぁ、奴は気づいてなかったけど、間違いなく――――……。










松本を、愛していた。







奴は絶対に認めないだろう。
何があっても絶対に否定するだろう。
だけど確かに市丸にとって松本は家族で、恋い焦がれる相手だった。
俺は、確信がある。
だからこそ、市丸が今まで生きて来た中で、松本と過ごした時間、1分1秒が、市丸にとって涙が出るくらい幸せな時間だったんだろう。
それは2人で暮らした時も、護挺十三隊に所属してからも。泣きたいくらい幸せで―――愛しい時間で。



「……………俺が、嫉妬するくらいにな。」




でも。と日番谷は唇だけで微笑む。



「残念だったな、市丸。」



あいつには、もう俺しかいない。お前があいつからまた逃げたから。松本は『置いていった。』と言っているが、違う。
お前はあいつから逃げてるんだ。何時だって。



「バカだなぁ、市丸。」



もしかしたら、手に入れられたかもしれないのに。
だけどもうそれはありえない。
あいつには俺しかいない。
もう、市丸の入るスキ何てねぇんだ。
絆はそう簡単に壊せねぇ。
俺はあいつから逃げないし、もう置いていかない。そして裏切らない。



ガララララ………
「ただいま隊長!大変です!雨降ってきちゃいました!」
「おう、帰ったか。………本当だ。気がつかなかったな。」
「…………雨、か。………まるで、涙のようですね。」
「…………そうだな。…………松本。出立の準備はできたか。」
「はい。」
「………………揺らぎはねぇか。」
「……………私を、誰だと思ってるんです?」




「十番隊隊長、日番谷冬獅郎の部下、松本乱菊ですよ?」




ほら、な。
日番谷は笑みを浮かべる。
それは、喜びではなく、侮蔑でもない、確信の笑み。

涙の後を追いかける。
それは銀へと続く道。
涙の足跡が続く道。

涙の後を追いかける。
悲しみを拾い、哀しみを断ち斬るために。



涙はもう流させない。




―FIN―

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あきゅろす。
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