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共に逝きたい
あまりにも静かで、綺麗な夜だった。蒼白い月光の中に時折風の音だけが漂う。ここの夜は比較的静かだが、普段とは比にならない静けさ。―この静寂は、戦場での虚しい朝に似ている。10年以上経ったが、忘れることなど無かった。静けさも、誰かを愛することも、肌を裂いた感触も、“仲間”の悲鳴も。そして、誰かを失うことも、全部。


数え切れないほどの仲間を失った。そいつらの赤い飛沫と悲鳴を幾度となく目に、耳にしながら。そして泣くことさえも許されずに拠点へと足を向け朝を迎える。それの繰り返し。日を追うごとに仲間が消え、反比例するように“消えないもの”に強く依存した。今も昔も変わらない。
自ら依存したくせに、終いには腕を伸ばし抱きしめることを躊躇う。腕を月光にかざしてみる。もし、この腕で抱きしめていたら、何かが変わったのだろうか。

「銀時」

名を呼び、今でも愛しく思えたことに安堵を覚える。同時に、ぶった斬ると宣言されて嬉しく思った己がいたことを思い出した。『好きだ』『愛してる』と囁いておきながら、苦しませるような約束をして。ひどく重たい悲しみを背負わせた挙句、触れることを躊躇って、拒絶した。それだけ悲しませたのだから、俺は斬られて当然だろう。


そんな俺が出来るのは重すぎる苦しみから解放してやることくらいだ。あいつのことだから、『この世界には大切なものが出来過ぎた』と言うだろう。だったら『大切なもの』諸とも世界を破壊してしまえばいい。この重くて苦しくて、辛い世界を。―もう愛したものに哀を背負わせることは御免だ。見ていられない。だから。


「俺はよォ」


銀時に二度と哀を押し付けることなく、過去から解放し、共に逝きたいのだ。腰に伸ばせなかった腕を、首に伸ばすなんてきっと馬鹿にされるだろう。そんなの、構わない。そうすることで銀時に押し付けた哀が消えるのなら。どこでだって言ってやる。囁いてやる。『間違っている』と決められてもいい。ただ、それしか見えないから。

「すぐにでもテメェと逝けたら、どんなに楽なんだろうなァ」

自嘲気味に言ってみたが、全てを冷ますような月光が水面に揺れただけで、答えなんて無かった。ただ、その揺らぎが銀時のため息であるような気がした。



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高杉のことを好きだから共に生きたいと言う銀時と、銀時のことを好きだから共に逝きたいと言う高杉の話が書きたかっただけです。
台詞少ないので見にくかったらすみません。
銀誕の方も更新出来ましたので、本日をもって一度休止させて頂きます。


  

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