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Don't go back 5
目が覚めると、今度は隣に奴が寝ていた。
自分を犯した野郎の隣になんて寝てられない。そう思って立ち上がろうとすると、今まで感じたことのない場所が痛みを訴えた。
しかも、腰も鈍痛を叫んでいる。
「この...くそ野郎」
ベッドから動けないことが腹立たしくて、シャープールに向かって拳を振り上げた。
しかし、それは叶わない。
しっかりと目を開いたシャープールが俺の拳を止めたからだ。
「朝から過激だな」
「離せ」
「嫌だね」
そう言ってさらに、反対側の腕も捕まれてしまった。
「悪いけど、これをつけてもらう」
どこから取り出したのか、気づけば俺の両手首には手枷が嵌まっていた。
「何のつもりだ!」
「ここは、いつも私が休みたいときに使う館だ」
「それがどうした!」
「だからここには、兵士も部下もいない。お前だけだ。それなのに何の制約もつけないことは、許されない」
「俺は手枷をはめたままここで生活すればいいのか?」
シャープールは俺の問いに頷いて笑みを返す。
「察しがいいな。その通りだ。食事は毎回運ばせる。その手枷と館から出られないこと以外は、お前に自由を許す。だから」
「だから!お前の慰み者になれというのか!! 」
この上ない屈辱だった。昨晩の行為だって、今、手が自由なら奴を殺して自分の命も絶ってしまいたいほどの屈辱だった。しかし、それ以上だ。
仮にも帝国の皇帝であった俺に、男を慰めるだけの存在になれと言うのだ。
そんなこと、そんなこと、許されるはずがない。
「そうだ、お前は私の慰み者になるのだ」
「そんなこと許さない!!今すぐ俺を殺せ!こんな屈辱は無いぞ」
そのままシャープールを罵り続けていると、不意に奴の表情が消えた。そして、俺の髪を掴んで後ろに引き、自分の視線と絡むように仕向ける。
「あぎっっぃ」
髪を容赦なくひっぱられる痛みで声が漏れた。
「立場をそろそろ理解しろ。お前は捕虜だ。お前が反抗的な態度をとりつづけるなら、他の捕虜は全員殺す」
喉の奥でひゅっと空気が音をたてたのがわかった。
次々と一緒に捕虜にされた部下たちの顔が浮かぶ。
「...すみせんでした...捕虜としての立場を理解していませんでした」
悔しくて睨み付けてしまうとする顔を誤魔化すように頭を下げた。
しかし、見なくてもわかる。奴は勝ち誇った笑みで俺を嘲っているのだ。
「わかればいいさ、じゃあな」
奴は部屋の出口に足を進める。しかし、ふと思い出したように、くるりと振り返った。
「体は綺麗にしておいた。感謝しろ」
最後の一言がなければ、素直に感謝できたのに、やっぱり奴の性格は歪みきっている。
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